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2008年04月 Archive

2008年04月01日

CASCADES 50

obscure no.7
PENGUIN CAFE ORCHESTRA
SIMON JEFFES
BRIAN ENO
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧 50

PERFORMED BY MEMBERS OF THE PENGUIN CAFE ORCHESTRA/MUSIC FROM THE PENGUIN CAFE(OBSCURE no.7)
ペンギンカフェ・オーケストラ、イコール、サイモン・ジェフスは'49年イギリスのサセックス生まれで、13歳の時にギターを弾き始め、高校卒業後、ジュリアン・ビザンチンの下で2年間クラシックギターや音楽理論を学び、その後チズウィックのポリーテクニック音楽部に進んだもののアカデミックな世界が体質に合わず途中退学し、オメガ・プレイヤーズというギルバート・ビベリアンズ・クラシカル・ギター・アンサンブルを結成。このユニットは古典音楽と現代音楽を融合したオリジナル曲をレパートリーとしていた。このころから並行してペンギン・カフェ・オーケストラを結成しているが、そのペンギン・カフェ・オーケストラというバンド名は、'72年、南フランスに滞在していたサイモンが腐った魚を食べてしまい、その時の悪夢に出てきた”ペンギン・カフェ”と言う名前に由来しているらしいが、そうした夢のお告げのような暗示によって音楽への道を歩むことを決心したというから可笑しい。
’76年リリースのオブスキュア7枚目のこのアルバムは、サイドワンの"From The Colonies"から"Pigtail"の7曲は、'74年にZOPFと言うグループ名でレコーディングされた曲で、「ペンギン・カフェ・カルテット」として録音した'76年までの作品とをまとめたものがコンパイルされている。その後、様々なダンスホールやコンサートでの演奏活動や、映画音楽のレコーディングなども行い、1981年7月には2ndアルバム「Penguin Cafe Orchestra」をリリースしている。80年代初頭は坂本龍一とのコラボレーションが多く、"THE Snake and THE Lotus"という曲も残されている。'84年、3rdアルバム「BROADCASTING FROM HOME」リリース。'87年、SIGNS OF LIFEをリリース、これに前後して同年3月にはロンドン・コンベント・ガーデンでのロイヤル・バレエの公演「トリプル・ビル」のハイライトとして「Still Life At Penguin Cafe」が上演される。この作品はこれまでのサイモンの過去の作品8曲を新たにアレンジしたバレエのための音楽として作られたもので、何種類かの擬人動物たちが登場するというユニークなバレエだった。(この"Still Life At Penguin Cafe"のヴィデオは'90年にリリースされている) '87年、ロンドンのROYAL FESTIVAL HALLでコンサートを行い、翌年にこの模様を収録したライブアルバム「WHEN IN ROME...」をリリース。ペンギン・カフェ・オーケストラの音楽がボクのすぐ側にあったのも、やはりこのライヴ録音での'88年の「when in rome...」(EG/EGED 56)までだった。
恐らく彼らの音楽が円熟した最盛期はこの時期だったのだろうと思う。5人編成のクインテットから始めた彼らはこの頃には文字通りオーケストラといえる9人編成で、サウンドの厚みも比較にならない。現在のオシャレなカフェで少人数のお客さんの前で演奏するアコースティックな抜けた軽い音楽のことを、"カフェ・ミュージック"と形容されるが、この言葉の由来はペンギン・カフェ・オーケストラにある。90年代に入ってからの彼らの動向についてボクはまったくなにも知らない。'93年12月最後の作品となる「Union Cafe」をリリースし、そのなかの曲"Cage Dead"が'92年に死亡したJohn Cageに捧げられた曲だということも、サイモン・ジェフスが48才という若さで'97年12月11日に脳腫瘍のためこの世を去ったことも。彼の音楽を当時モーガン・フィッシャーが"ルイス・キャロルやエリック・サティに見られる穏やかな無秩序、それがパームコートの壁紙を思わせる音楽と結合したもの"と語っていたが、ペンギン・カフェ・オーケストラの音楽には一貫して、歪んだ真珠、バロックにみられる折衷主義と、オプティミズムでありながらセンチメンタルな、アンビバレンツな感情が流れている。ようするにサイモン・ジェフスはヒューマニスティックなんだ。彼らの音楽をジャンル分けするなら環境音楽ではなく、ポストモダンな室内楽、植物的な20世紀末のコンテンポラリー・バロックともいえるものではないだろうか。

The Penguin Cafe Orchestra-Air A Danser
http://www.youtube.com/watch?v=4Uimr5SWBHk
“Penguin Cafe Orchestra” video results 1 - 20 of about 103
http://www.youtube.com/results?search_query=Penguin+Cafe+Orchestra&search_type=
http://www.penguincafe.com/

MUSIC FROM THE PENGUIN CAFE
Side1:Penguin Cafe Single
Zopf:a.From the colonies b.In a Sydney hotel c.Surface tension d.Milk
e.Coronation f.Giles Farnaby's dream g.pigtail
Side2:The sound of someone you love who's going away and it doesn't matter Hugebaby Chartered flight
composed by Simon Jeffes
produced by Simon jeffes and Steve Nye
recorded on location between 1974-1976
PENGUIN CAFE QUINTET(the 4 musicians in green clothes)
Helen Leibmann-cello Gavin Wright-violin Steve Nye-electric piano,engineer
Simon Jeffes-electric guitar
ZOPF
Simon Jeffes-guitar,bass,ukelele,quatro,spinet,electric piano,mouth percussion,vocals,cello(sydney motel),cheng,ring modulator
Helen Leibmann-cello Gavin Wright-violin,viola Neil Rennie-ukelele8on Giles Farnaby's Dream) Emily Young-vocals Steve Nye-mixing
Brian Eno-executive production
OBSCURE 1976

WHEN IN ROME...
side one:1.Air A Dancer 2.Yodel 1 3.From The Colonies 4.Southern Jukebox Music 5.Numbers 1
side two:6.Beanfields 7.Paul's Dance 8.Oscar Tango 9.Music For A Found Harmonium 10.Isle Of View8Music For Helicopter Pilots) 11.Prelude And Yodel 12.Giles Farnaby's Dream
Steve Nye:piano,electric piano,harmonium,cuatro
Helen Liebmann:cello Geoffrey Rochardson:viola,bass,ukelele,mandolin,cuatro Bob Loveday:violin Ian Maidman:percussion,bass,cuatro Julio Segovia:percussion Paul Street:cuatro,ukelele,guitars Neil Rennie:ukelele,cuatro Simon Jeffes:guitar,ukelele,bass,cuatro,electric guitar
produced by Simon Jeffes
music composed by Simon Jeffes
EG 1985

2008年04月02日

CASCADES 51

obscure no.8
JOHN WHITE
GAVIN BRYARS
BRIAN ENO
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧 51

JOHN WHITE+GAVIN BRYARS/MACHINE MUSIC(OBSCURE OBS 8)
ドイツの芸術家村ダルムシュタットでの現代音楽夏期講習会でピエール・ブーレーズ、カールハインツ・シュトックハウゼンたちが互いに論戦を戦わせながらセリエリズム、電子音楽、アンガージュマンといった前衛的音楽思考を遂行していた第二次世界大戦後や、イタリアのルイジ・ノーノがレジスタンス運動に参加しながら視聴覚+コンセプチュアルな体験としての音楽劇などの実験的試みを展開していた50年代の、そのような遺産、実験音楽をいま聴く行為になにか意味をみつけられうるものだろうかと、いつも思う。
いつだったかデレク・ベイリーの"Derek Bailey In Japan"というヴィデオをYouTubeでみたことがあるが、ニッポンのノイズ・ミュージシャンが彼のギターに合わせてヒステリックなヴォイスと打楽器のノイズを無作為に発て、彼のギタープレイすらも壊している様は、それは違うだろうと腹立たしく思った。ニッポンでの音楽理論もテクニックも学んでいないロックミュージシャンあがりのノイズ・ミュージックや、エセ・フリー、インプロヴィゼーションなんて即刻やめろよ! さて、イギリスの実験音楽はそのダルムシュタットや、ニューヨークや、パリからも遠く、70年代にヴァージン・レコードやブライアン・イーノのオブスキュアでこうした音楽を展開するまでは、誰もがイギリスにも実験音楽の潮流が存在していたのかと思ったほどだ。イーノの影響でボク自身も75年を契機にいつの間にかイタリアのCRAMPSでの"nova musicha"シリーズでCornelius Cardew「Four Principles On Ireland and Other Pieces(1974)」(5206 106)や、John Cage 「Cheap Imitation」(CRSLP6117)、DIVersoシリーズでのDerek Bailey「improvisation」(CRSLP6202)、Steve Lacy「straws」(CRSLP6206)などの作品をわざわざ取り寄せるまでになっていた(この周辺も要望と機会があればいづれ紹介します)。
このアルバムのジョン・ホワイト「MACHINE MUSIC」は、彼の開発した無作為における反復の構造、"マシーンのプロセス"でのシステム・ミュージックという概念から発展したものだが、このアルバムのサイド1の4曲目に収録されているジョン・ホワイトの'68年の曲「Drinking and Hooting Machine」は、数人のプレイヤーがテーブルの上に置いた飲みもののボトルを無作為に飲み、ボトルのトーンを変更しながら、瓶の先端の口を吹いて音を発てるというものだが、まあよく言えばすべてを数値に置き換えた音楽遊びのようなものだ。「Autumn countdown machine」はメトロノームのリズムが発てるリズムを、6つのダブルベースなどのバスメロディーがそのリズム(同時性)を無視したものを、打楽器奏者が調整していくというもの。こうしたものもポストモダニズムとしてまかり通っていたゆるい時代が70年代なのだ。このアルバムにバスーンやピアノで参加しているChristopher Hobbsは、Ian Mitchellと「Edge of the World」というジャズテイストのアルバムを2000年暮れに発表している。すべては"ジャズ的なるもの"に向かっているのだ。
サイド2全面に収録されているギャヴィン・ブライヤーズのデレク・ベイリーのために書かれた曲"The Squirrel And The Ricketty-Racketty Bridge"は、'71年の「Solo Guitar Vol.1」にも収録されているものだが、"ひとりのギタリストが同時にふたつのギターを演奏するための作品。しかもそのギターは2本ともギタリスト自身の背中に水平に付けられているので、ギタリストはキーボードプレイヤーが一本の指で二つの音を弾くときのハンマー奏法を持ちいることになる"と説明されていて、ここではDerek Baileyと、Fred Frith、Gavin Bryars、Brian Enoの3人が加わり同時に8台のギターを演奏している。ギャヴィン・ブライヤーズはもともとは、Derek BaileyやTony Oxleyなどとフリー・インプロヴィゼーション・バンドを組んだりしていたフリーのミュージシャンで、ジャズ畑のアーティストといってもいいだろうし、ジャズ・ギタリスト、Bill Frisellやジャズベーシスト、Charlie Hadenなどに曲も提供している。この曲は無調ではあるのだが、ギターのピッキングやハンマー奏法によって発生するルーズに反復するリズムは心地よく、フリーであってもそこにリズムやグルーヴの感じられない作品は退屈でダサい。しかしその速度がちょっと時代遅れで遅く感じたので、試しにレコードのピッチを45回転で速めてかけてみると、これがジャジー・ヒップホップやアブストラクト・ジャズのDJイングに可能な曲に変容した。ちなみにサイド1を45回転でかけると90年代クラブシーンで流行したトランステクノだ(なにか文句でも?)。
このアルバムの音楽とは直接的に関係ないが、'97年にデレク・ベイリーがDJ/クラブカルチャーに侵入し、フリーやインプロヴィゼーションをクラブジャズに繋いだ記念すべき、ニュー・コンセプション・オブ・ジャズともいうべき、ジャズの新たな文脈を感じる貴重な映像を紹介しておこう。
TRAnsMuTAtioNs-Bill Laswell, Derek Bailey, Jack DeJohnette
http://www.youtube.com/watch?v=Rxrw1EOqGDY

MACHINE MUSIC
side one:John White
Autumn Countdown Machine
John White-tuba,metronome,percussion Christopher Hobbs-bassoon,percussion Sandra Hill-double bass Gavin Bryars-double bass,metronome
Son Of Gothic Chord
Christopher Hobbs-piano John White-piano
Jew's Harp Machine
John White-jew's harp Christopher Hobbs-jew's harp Gavin Bryars-jew's harp Michael Nyman-jew's harp
Drinking And Hooting Machine
Christopher Hobbs-bottle Susan Dorey-bottle Gavin Bryars-bottle John White-bottle Brian Eno-bottle
side two:Gavin Bryars
The Squirrel And The Ricketty Racketty Bridge
Derek Bailey-steel stringed acoustic guitars Fred Frith-double-headed electric guitars Brian Eno-electric guitars
recorded at Basing Street Studios 1976
engineered by Rhett Davies
produced by Brian Eno
OBSCURE 1978

2008年04月03日

CASCADES 52

obscure no.9
TOM PHILLIPS
GAVIN BRYARS
FRED ORTON
BRIAN ENO
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧 52

IRMA AN OPERA BY TOM PHILLIPS
MUSIC BY GAVIN BRYARS LIBRETTO BY FRED ORTON
(OBSCURE OBS 9)
オブスキュア9作目の“IRMA”は、W・H・マロックによるヴィクトリア時代の小説に基づくオペラである。作曲はトム・フィリップス、ギャヴィン・ブライアーズ、台本はフレツド・オートンによるもの。指揮はブライアーズで、サイド1ではGrenville役のハワード・スケムプトン、サイド2ではIrma役のルーシー・スケーピングの声がフィーチュアーされている。このオペラは最初、'70年にボルドー・フェスティヴァルのコンサートのためにプロデュースされ、'72年にニューカースル大学でCeolfrith Arts Associationによって上演された。
その後、'73年ヨーク大学、'83年ロンドンのICAで上演されるまでは古い演劇イルマの新しい解釈に多くの問題を引き起こし、それを解決するためにRichard Ortonの指導のもとに2つのヴァージョンを制作していた。トム・フィリップスは「THE HEART OF A HUMUMENT」というアーティストブックも発表していて、このオペラの下敷きになっている1892年に出版されたW.H.Mallockによる著書「A Human Document」のテキスト上に、オリジナルテキストの一部分を残したペイントを施したシリーズをまとめたもの。テキストとペイントからなるアートワークが楽しめる。ヴィクトリア朝時代といえば、1858年に建てられたヴィクトリア朝時代の建築である赤と金を基調にした優雅な4層の、ロンドンの劇場街のまっただ中にコヴェント・ガーデン王立歌劇場 (Royal Opera Covent Garden)というオペラ・ハウスがあるが、確かクラフトワークのステージをそこで観た覚えがある。マロックの「A Human Document」が出版されたヴィクトリア朝は、ヴィクトリア女王がイギリスを統治していた1837年から1901年の期間を指し、この時代はイギリス史において産業革命による経済の発展が成熟に達し、イギリス帝国の絶頂期であるといわれている。1863年には、ロンドン地下鉄も開通したが、産業革命の成功により世界の工場と言われたイギリスも、1890年代以降は、ちょうど日本のバブル経済が崩壊していったかのように"ヴィクトリアニズム"が急速に衰退してその時代は終焉を迎えた。1870年代-1901年までのヴィクトリア後期には、アメリカ合衆国やドイツなどの資本主義が発展し工業力も向上し、ヨーロッパの意思決定の中心的存在であったイギリスの地位が揺らぎ始めた。ヴィクトリア時代の風俗といえば"フラッパーズ"と呼ばれる女性達を生み出す、解放的、享楽的な時代で、フェミニズムや、いまニッポンでオタクの間で大流行りのメイド、ルイス・キャロルなどを思い浮かぶが、"当時の英国国民は物質的には恵まれた状況に達していたが、心はなぜか満たされることなく、行き着くところまできてしまったような不安を感じていた"時代でもあったという。オブスキュアで発表されたIRMAが気にそぐわなかったのか、トム・フィリップスは新しいヴァージョンで'88年に、AMSとLol Coxhill(voice, soprano saxophone)、Elise Lorraine(voice)、Phil Minton(voice)、Ian Mitchell(clarinets)、Birte Pederson(voice)、Tom Phillips(voice)、Eddie Prévost(percussion)、Keith Rowe(guitar, radio, tapes, cello)、John Tilbury(piano, radio)のソリストたちによって、新たに作り直して発表している。
イルマのスコアはマロックの小説からの断片で成っていて、これがまた変わったスコアで、サウンド・ボキャブラリーの断片、連帯する指示、パフォーマンスの提案、メロディーの寄せ集めの、小説の断片でできた散文指示のある大きなシートの台本で、オペラ全体のなかの最小限必要な要素だけで出来上がっている。このレコードでの音楽を聴く限りオペラといっても古典的なものではなく、大衆音楽、芸能の要素が取り入れられたもので、社会主義リアリズム的傾向をもったものではないだろうか。シュトックハウゼンの作ったオペラのように、作品全体を上演するのではなく常に部分上演といった形で演奏される未完の作品を提示するものに似たものだろう。
詳しくは「IRMA:An Opera Performance History」参照
http://tomphillips.co.uk/essaysan/irpo/index.html
TOM PHILLIPS WEB
http://tomphillips.co.uk/index.html

IRMA/An Opera by Tom Phillips
music by Gavin Bryars libretto by Fred Orton
conducted by Gavin Bryars
Side1:Introduction/ Overture and Aria(“I tell you that's Irma herself”)/ First Interlude
Howard Skempton:Grenville
Tom Phillips:chorus voice Angela Bryars:chorus voice Rory Allam:clarinet and bass clarinet Dave Smith:tenor horn,vibes John White:tuba,marimba Jo Julian:vibraphone,marimba Michael Nyman:piano,marimba,glockenspiel
Side2:Aria(“Irma you will be mine ”)/Second Interlude/Chorus(“Love is help mate”)/
Postlude
Lucy Skeaping:Irma
Roddy Skeaping:sopranino violin Stuart Deeks:descant violin Gavin Wright:treble violin Adam Skeaping:alto violin Mark Caudle:tenor violin Tim Kraemer:baritone violin Roy Babbington:bass violin Rodney Slatford:contrabass violin
Produced by Brian Eno
OBSCURE 1978

※付加
Alicia en el País de las Maravillas (1903)
http://www.youtube.com/watch?v=6ihHWXef1RM
ヴィクトリア朝時代/世紀末英国風俗の紹介。黄金の夜明け団と自転車とブルーマー
http://www7.ocn.ne.jp/~elfindog/newgirl.htm

2008年04月04日

CASCADES 53

obscure no.10
HAROLD BUDD
MARION BROWN
BRIAN ENO
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧 53

THE PAVILION OF DREAMS/HAROLD BUDD(OBSCURE OBS 10)
オブスキュアの最後を飾る10枚目の作品「The Pavilion of Dream」は、ハロルド・バッドが'72年に始めた広範囲な一連の作品で、サイド1の1曲目"ビスミラーイ・ラーマニ・ラーヒム"は、'74年にマリオン・ブラウンのために作曲したもの。マリオン・ブラウンといえば、'70年にECMから「AFTERNOON OF A GEORGIA FAUN」や、'75年作の「Vista」などをリリースしているフランスやドイツの前衛ジャズにも関わっていたアルト奏者で、ナイーブでアンビエントな乾いた叙情性をもった音楽家だと位置づけられているが、この曲も、マリオン・ブラウンの荘厳な佇まいを感じさせるアルト・サックスと、ハロルド・バッドの静謐なエレクトリック・ピアノのたおやかでチル・エアーな揺らぎで始まる。
アルバム・コンセプトは、戒告"神の名において、慈悲の、寛大な"というイスラム教の教典コーランが使われていて、'73-'74年に作曲された2つの歌、旋律は賛美歌で"ファラオ・サンダースによるヴァージョン"から「主の館へはいらん」、ジョン・コルトレーンの"アフター・ザ・レイン"を使用した「バタフライ・サンデー」の2曲目に続くこのあたりは、スピリチュアル・ジャズからインスパイアされたハロルド・バッドのジャズやビバップへの憧憬が感じられ、当時は単に”アンビエント"という記号でしか語られなかったが、30年ぶりに聴き直すと、これこそ正に"ジャズ的なるもの"だったのだと再認識させられた。彼は、ジャズ以外にも、ジョン・ケージの「ピアノとオーケストラの為のコンサート」などの曲に影響を与えたアメリカの作曲家で、世界初の図形楽譜の発案者であり、晩年は演奏時間の長い静謐な作品を発表していたモートン・フェルドマン(Morton Feldman)や、人生における安息や絶望を表現し不思議な詩情と崇高さを感じさせると言われている大画面をいくつかの矩形に区切り、ニューベーシックと呼ばれる独特のスタイルの抽象画を描いていた頃の作品、抽象表現主義の作家マーク・ロスコ(Mark Rothko/Markus Rotkovich)などの影響を最も大きく受けている。ラディカル・シンプリシティ「極度な単純性」というのがハロルド・バッドの音楽全体を流れる態度なのだが、アンビエント・ミュージックという言葉はまさに彼の音楽のためにあるものかも知れない。サイド2は、'72年作曲の「バラの天使のマドリガル」、「ロゼッタのノイズ」、「クリスタル・ガーデン」から、ジョン・バーガムスの為に作曲したローマ神話にでてくるジュピターの妻、結婚の女神「ジューノウ」へと続く。
ハロルド・バッド(Harold Budd)は'36年生れのカリフォルニアのロサンゼルス出身の作曲家/ピアニストで、幼少期をモハーベ砂漠で育てられ、幼時に電話線を吹き抜ける風によって引き起こされる激しいトーン、音響に衝撃をうけたという。作曲家としてのキャリアは'62年に始まり、次の数年間、地方のアヴァンギャルド・コミュニティですばらしい評価を得た彼は、'66年に南カリフォルニア大学の作曲コースを卒業している。大学卒業後、その作品はますますミニマルに傾倒してゆき、当時の代表的な作品は、"Coeur d'Orr"と"Oak of the Golden Dream"で、 "Oak of the Golden Dream"はバリ島のスレンドロ音階を用いたものだという。 "Lirio"と題した長い形式のソロ曲を作った後に, 彼はミニマリズムと前衛音楽に自らの限界を感じ、'70年には一時的に作曲を中止し、カリフォルニア芸術協会の教職に就いた。2年後、教職に就いたまま作曲家として再デビューし、'72年から'75年の間、後にオブスキュアで発表することになる"The Pavilion of Dreams"というタイトルの一連の4つの曲を作曲している。ブライアン・イーノのプロデュースによるオブスキュアのためのレコーディングに着手したのが、'76年に協会の教職を辞職した直後だった。その後、ブライアン・イーノとの合作である'80年「The Plateaux of Mirror」、'82年「The Pearl」、(カリフォルニア芸術協会からの仲間で、イーノとのコラボレーションにも参加しているジーン・ボーウェンと'81年にCantil Recordsを設立し3枚のアルバムを制作している)。'86年「Lovely Thunder」などの作品を立て続けに発表している。ボクは最近の作品を聴いていないが、そこではミニマリスト的アプローチへの回帰が見られるという。70-80年代当時の彼の多くの作品に共通するのは、ピアノのペダルを踏んだまま演奏を続けているかのような長い残響で、エフェクタを用いたその残響こそが、聴く者に揺らぎのなかで夢をみているかのような静謐で美しいイメージを拡張し、誘発しているのではないだろうか。当時ハロルド・バッドは自身のチル・エアーな音楽について、"私は一種の徹底した単純化(Radical Simplisity)によって、きれいなものを創りだすという考え方に興味を持っている。結局私の音楽は極度に静かで、古い時代のヴァーチュオージティという視点に立てば、ほとんどなにも起こらない。しかし、そうだからこそ思うのだが、多くの精神的ヴァーチュオージティを導きだすんだ”と語っている。

Harold Budd + Brian Eno "The Plateaux of Mirror" (1980)
http://www.youtube.com/watch?v=lLQPzjPW7LM
Brian Eno H.Budd The Plateaux of Mirror The Chill Air
http://www.youtube.com/watch?v=AVlnbMNFLN4
HAROLD BUDD youtube
http://www.youtube.com/results?search_query=HAROLD+BUDD&search_type=

暗いイメージだけど個人的にはベストの映像
Brian Eno and Harold Budd
http://www.youtube.com/watch?v=Oa8pqe4cfsk&feature=related


side one:1.Bismillahi 'Rrahmani 'Rrahim
Marion Brown8alto saxophone) Harold Budd(electric piano) Maggie Thomas(harp) Richard Bernas(celeste) Gavin Bryars(glockenspie) Jo Julian(marimba) Michael Nyman(marimba) John White(marimba) Howard Rees(marimba)
2.Two Sons "Let Us Go into The House Of The Load" "Butterfly Sunday"
Lynda Richardson(mezzo soprano) Maggie Thomas(harp)
side two:1.Madrigals Of The Rose Angel "Rosetti Noise" "The Crystal Garden"
Maggie Thomas(harp) Richard Bernas(electric piano) Gavin Bryars(celeste) Nigel Shipway(percussion)
chorus(conducted by Harold Budd):Lynda Richardson,Margaret Cable,Lesley Reid,Ursula Connors,Alison Macgregor,Muriel Dickinson
2.Juno
Harold Budd(piano,voice) Gavin Bryars(glockenspiel,voice) Jo Julian(vibes,voice) Michael Nyman(marimba,voice) John White(percussion,voice) Howard Rees(vibraphone) Brian Eno(voices)
recorded at Basing Street Studios November 1976.engineered by Rhett Davies.
produced by Brian Eno
OBSCURE 1978

Harold Budd
http://en.wikipedia.org/wiki/Harold_Budd
MARK ROTHKO
http://www.nga.gov/feature/rothko/rothkosplash.html

※追記 70年代中期のブリティッシュ・ロックといえば、'76年のセックス・ピストルズによってもたらされたパンク・ムーヴメントが旋風のように過ぎ去り'78年の初頭にはすでにその影さえもみられなかった頃で、ブライアン・イーノのオブスキュア・レーベルはそうした最中にリリースされていたのだから驚きだ。オブスキュアは78年のこのハロルド・バッドのアルバムでピリオドをうち、そのコンセプトを引き継いだ'78年のブライアン・イーノの"Music For Airports"でAMBIENTシリーズが始まり、'82年の"On Land"の間に4枚の作品をリリースするのだが、当時の実質上のロックシーンのリアリティはやはりイーノの音楽にあったのだと思う。しかし今考えれば自然発生したニューヨーク・パンクをイギリスにと目論んだマルコム・マクラレーンがメディアを操り、その罠にはめられた集団ヒステリックともいえるあの時代のイギリスは、よほどの不満やストレスを抱えた労働階級の若者たちの鬱積した感情が高ぶっていたとしか思えない。当時PILの頃のジョニー・ロットンにもインタヴューしてるけど、いまや40歳代後半になった彼や、当時ロックマガジンに出入りしていたあれほどいたロックファンは、いまどうしてるのだろう。みんなサラリーマンかな? 実はニッポンのこの40代世代の抱えている病こそが自覚症状を表し始めているのが現代の世相でもあるんだけど・・・。それでも、ロンドンのキングスロードのパンクスの鶏冠のように逆立てた髪型や、ヴィヴィアン・ウェストウッドの店"セックス"や"セディショナリー"で見たゴッド・セーブ・ザ・クーンの破れたTシャツ(実はボクも着ていたのだが)や、スパイダーマンボンデージジャケットなどのファッションは楽しく懐かしい思い出だ。

2008年04月05日

CASCADES 54

「ブライアン・イーノ・ソロ」
シュルレアリズムからアンディ・ウオーホル、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのニューヨークへのオマージュ、
クルト・シュヴィッタースの音声詩ににみられるダダイスト、
ジャーマン・エクスペリメンタルへの憧憬、
ピーター・シュミッツとの精神的フレンドシップ
BRIAN ENO
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧 54

'73年から'77年の4年間にブライアン・イーノのソロ活動での電子音楽を活用したアヴァン・ポップの作品「Here Come The Warm Jets」、「Taking Tiger Mountain (By Strategy)」、「Another Green World」、「Before and after Science」の4枚のうちセカンドまでは、なによりも彼のニューヨークへの思いとアンディ・ウォーホルやヴェルベット・アンダーグラウンドへのリスペクト、オマージュじゃないかと思っている。当時、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol, 1928年8月6日 - 1987年2月22日)はアメリカのポップアートのカリスマ的存在で、銀髪のカツラをつけた彼は、'61年に身近にあったキャンベル・スープの缶やドル紙幣をモチーフにした作品を描き"ポップアート"という美術での新しいジャンルを確立し、コカ・コーラに象徴されるアメリカ文化とアメリカなるものの概念をテーマにした多くの作品を量産している。'64年にニューヨークにファクトリーと呼ばれるスタジオを構え、そこはミック・ジャガー(ローリング・ストーンズ)、ルー・リード(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)、トルーマン・カポーティ(作家)、イーディー・セジウィック(モデル)などのアーティストの集まる場となり、'67年にあのシルクスクリーンによるバナナを描いたジャケットで有名な「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・ニコ・アンド」 のアルバム・プロデュースとジャケット・デザインを手掛けている。そのアンディー・ウォーホルのオマージュは、彼の作品を思わせる「Taking Tiger Mountain By Strategy」の、ピーター・シュミッツの"1500 Unique Lithographs"という作品から採用されたジャケット・デザインに如実に表われているし、まるでウォーホルが言ったかのようなイーノの発言"あることを繰り返すことは、それを変えることになる"にも表われている。イーノのファースト、セカンドでの音楽は、その言葉を実行しているかのように、単純なリズムが延々と反復する手法を使っていてヴェルヴェット・アンダーグラウンドのようでもある。当時イーノは音よりも、むしろ絵画や美術から音楽を発想するとも語っていた。

ANOTHER GREEN WORLD/BRIAN ENO(ISLAND ILPS 9351)
'75年11月に発表されたサード・ソロ・アルバム。過去のイーノの作品にみられる音楽表現での基本的シフトを打ち破ったこのアルバムは、彼の作品のなかでも最高傑作だと評価する人が多く、事実上のファースト・アルバムと言えるものだろう。個人的にもボクが音楽評論家としてライナーノーツを書いた最初の作品でもあり、思い入れも深い。なによりもこの作品によってイーノはオブスキュア、アンビエントという未来に続く創造へのヴィジョンを手に入れる契機になったものだ。この作品は、デヴィッド・ボウイとの'77-'79年の'Berlin Trilogy' と呼ばれている一連の"Low" 、"Heroes" 、"Lodger"のコラボレーション作品にまで影響を与えている。ロバート・フリップが自ら形容した"Wimshurst guitar"の、ノコギリで穴を開けるかのようなマシーン・ジェネレーターの、まるで新しい弦楽器が奏でるかのような渋い音色と、アルバムジ
ャケットに使われた、オブスキュアno.9でも紹介したトム・フィリップスの"After Raphael"の絵が、このアルバム全体を支配するポップでいて静謐なイメージを決定づけている。

side one:1.Sky Saw 2.Over Fire Island 3.St. Elmo's Fire 4.In Dark Trees 5.The Big Ship 6.I'll Come Running 7.Another Green World
side two:8.Sombre Reptiles 9.Little Fishes 10.Golden Hours 11.Becalmed 12.Zawinul/Lava 13.Everything Merges With The Night 14.Spirits Drifting
Phil Collins(drums) Percy Jones(fretless bass) Paul Rudelph(anchor bass,snare drums...) Red Malvin(rhodes piano) John Cale(viola section) Brian Eno(snake guitar,digital guitar,synth,organ,tape...) Robert Fripp(wimshurst guitar) Brian Turrington(bass,pianos)
cover is a detail from "after raphael" by Tom Phillips
all vompositions written by Brian Eno
produced by Brian Eno and Rhett Davies
recorded at Island Studios,during July and August 1975
ISLAND 1975

BEFORE AND AFTER SCIENCE/BRIAN ENO(POLYDOR DELUXE 2302 071)
'97年発表の4枚目のソロ・アルバム。このアルバムでサイド1の3曲目に収録されている「Kert's Rejoinder」では、クルト・シュヴィッタースの"US Sonata"から引用されたヴォイスが効果的に使われていることに、誰もあまり触れていないが、イーノの歌声のバックから彼の音声詩が微かに聴こえてくる。クルトはダダの運動に参加した作家の一人で、他のグループからは孤立してハノーヴァーで活動し独自のコラージュによる作品すらも芸術たらしめんとしたアーティストで、反芸術的な姿勢を持つ他のダダイストたちとは異質な存在だった。彼は1887年ドイツのハノーヴァーの生まれで、初期の絵画は表現主義やキュビスムに影響されたものだったが,1918年以降,"メルツ"での紙屑,木片,布切れなどの廃品を貼合わせたコラージュ、絵画から建築、彫刻,音声詩、雑誌での作品は、第二次大戦後のアッサンブラージュやオブジェを先駆けたものと言われている。そのなかでもメルツ詩と言われる一連の音声詩、朗読パフォーマンスでの、イーノの使っている「Ur Sonata(原ソナタ)」は、"ボヘボヘビーブー、ブビブビッテ、ボヘボヘビーブー"というような赤ちゃん(ダーダー)言語の無意味な言葉の羅列をソナタ形式にあてはめたダダイズムの祖ともいえる作品で、古典的ソナタ形式の、Raoul Hausmannの視覚音声詩"Rfmsbwe"のパロディであるとも言われ、言葉の持つリズムを強調したものである。追記しておくと、2004年にマイケル・ナイマンが「Man and Boy DADA」というタイトルで、クルト・シュヴィッタースを素材にした架空の、マイケル・ヘイスティングス作の2幕仕立ての物語に音楽をつけたオペラのCDをリリースしている(ボクの編集していたロックマガジンも彼の音声詩のフィルム・シートを付録につけたことがある)。

この「BEFORE AND AFTER SCIENCE」のアルバムのサブ・タイトルは"14PICTURES"となっているが、これはアルバムの10曲に付録でインクルードされた「見たものしか描けない画家」と自称していたピーター・シュミッツの4枚の水彩画の絵を足して一つの作品としたイーノの意図である。

side one:1.No One Receiving 2.Backwater 3.Kurt's Rejoinder 4.Energy Fools The Magician 5.King's Lead Hat
side two:1..Here He Comes 2.Julie With... 3.By This River 4.Through Hollow Lands(For Harold Budd) 5.Spider And I
Paul Rudolph(bass,rhythm guitar) Phill Collins(drums) Percy Jones(fretless bass,analogue delay bass) Rhatt Davis(agong-dong,stick) Brian Eno(voices,synthesizer,guitar,synthsized percussion,piano,CS80) Jaki Liebezeit(drums) Dave Mattacks(drums) Shirley Willams(brush timbales,time) Kurt Schwitters(voice"from The Ur Sonata) Fred Frith(modified/cascade guitar) Andy Fraser(drums) Phil Manzanera(rhythm guitar) Robert Fripp(guitar solo) Achm Roadelius(grand and electric pianos) Mobi Moebius(bass fender piano) Bill McCormick(bass) Brian Turrington(bass)
The Pictures by Peter Schmidt 4 offsets from water colours
Produced by Brian Eno and Rhett Davis
POLYDOR 1977

HERE COME THE WARM JETS/BRIAN ENO(ISLAND ILPS 9268 )
'73年の夏に突然ロキシー・ミュージックを脱退した後、アイランド・レーベルからリリースされたファースト・ソロ・アルバム。性器から射精される生暖かい精液をタイトルにしたアルバム。当時メロディー・メーカー紙などの音楽ジャーナリズムはイーノのことを"少女のようなエレクトロニクスの導師"、"宇宙時代のロック・アイドル"などと形容していた。"尻の穴に空気銃の弾をぶち込まれたウサギのような声"といわれた、彼独特の声は首輪のような"Electric Larynx"という装置をシンセサイザーを直結して作った合成音だと言われていたが、さだかではない。この頃のイーノは曲の"ラクダの眼のなかの針"や、ミシガンに住む口から火を吹く黒人を歌った"The Pow Paw negro Blowtorch"、火に包まれた恋人"Baby On Fire"などのタイトルからしてもシュルレアリスム世界が好きだったのが解る。アルバム発表後、ジョン・ケイル、ニコ、ケヴィン・アイアーズとのライヴ・アルバム「JUNE 1.1974」をリリースしている。

TAKING TIGER MOUNTAIN (BY STRATEGY) /BRIAN ENO(ISLAND ILPS 9309)
'74年のセカンド・ソロ・アルバム。サンフランシスコのチャイナタウンの街角で、小さな店のウィンドウに飾ってあった絵葉書大の写真"Taking Tiger Mt.By Strategy"は、中国の舞踏団の映画のスチール写真で、それを買ったイーノは、どこへ行くにも持ち歩いくほどに魅了され、ある夜、メスカリンを飲んで眠ったときに、夢の中でその写真の舞踏団の少女のシュールな夢の出来事に示唆されて出来上がった作品が「Taking Tiger Mountain By Strategy」で、それはサイド2の3曲目"The True Wheel"のイントロ部分の女性コーラスによって再現されている。このアルバムはロバート・フリップ、フィル・マンザネラなど以上にクラシック畑の素人集団、ポーツマス・シンフォニックを起用しているところがイーノらしい。このアルバム・タイトルに既にみられる"Strategy"という20世紀のシステムに関する相互作用上の精神的コンセプトは、ピーター・シュミットの絵画と同じように70-80年代を通してブライアン・イーノの創造の大きな支柱だったようだ。

BRIAN ENO VIDEOS
http://www.youtube.com/results?search_query=brian+eno&search_type=

EnoWeb (unofficial website)
http://www.enoweb.co.uk/
http://en.wikipedia.org/wiki/Brian_Eno

2008年04月06日

CASCADES 55

「ブライアン・イーノ・コラボレーション」
"アンビエント・ドローンの断片が集積した多層構造を持つ音楽"と
'74年ですでに仮死状態のロックミュージック
BRIAN ENO 2
ROBERT FRIPP
CLUSTER
KEVIN AYERS /JOHN CALE/NICO
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧 55

FRIPP & ENO/NO PUSSYFOOTING(HELP 16)
'73年にリリースされたフリップ・アンド・イーノ「(NO PUSSYFOOTING)」の、サイド1の21分の曲「The Heavenly Music Corporation」は、インプロヴィゼーションの自然発生的方法でオーバーダビングなしの直接テープループのシステムに録音されたもので、テリー・ライリーにみられるコンセプトをフリップのギタ−1本でフィードバック奏法により再現している。"アンビエント
・ドローンの断片が集積した多層構造を持つ音楽"と彼らは呼んでいる。サイド2の「Swastika Girls」は、スタジオにあった1セットのポルノグラフィーのカードに因んでこのタイトルが付けられ(ジャケットに写っている鏡の机のうえに並べてあるのが、そうだろう)、この曲はイーノのEMS VC52、シンセサイザーの音をテープループのシステムを使い、そのうえをフリップのギターがインプロヴァイズドするという同じテクニックを使って録音されている。いまでこそドローン・ミュージックと呼ばれるこうしたシンプルな音響に、もはや驚きは感じないが、当時はフューチャリスティックなサウンドとして未来をみたものだ。ジャケット・フォトのグラス・ルームのスケルトンな空間と、その隅に置かれた鏡で出来たメタリック・ギターには、"完全にアルミニウムで密閉された部屋ほど、自分が血と肉でできた人間であることを感じさせるものはない"と語っていたイーノの言葉を思い出す。

side one:"The Heavenly Music Corporation"
recorded at Eno's Studio 8.9.72
equipment:Gibson Les Paul The Fripp Pedalboard 2 Modifield Revox A77 Tape Recorders
side two:"Swastika Girls"
recorded at Command Studios 4/5.8.73
engineer Ray Hendricksen mixd at Air Studios 21/22.8.73
equipment:Gibson Les Paul Frizzbox/VCS3 Synthesizer with DigitalSequencer/Modified Revox A77 Tape Recorder
mastering engineer:Arun Chakraverty cover design & photography:Willie Christie
produced by Robert Fripp & Eno for E.G.Records
ISLAND 1973

EVENING STAR/FRIPP & ENO(HELP 22)
"Evening Star"はイーノが発明した"Frippertronics"と呼ばれるテープループ・システムによる簡素なギターリフのサウンドとデリケートなファズトーンの倍音がかもし出す、ダウンでミニマルなうねりが"明けの明星"というタイト
ルに相応しい静謐な世界を構築している。"Wind on Wind"の2曲は'75年に並行して取り組んでいたオブスキュアの「Discreat Music」から抜粋されたもの。サイド2の28分の"AN INDEX OF METALS"は、曲が進行するほどにサウンドの歪みが増すことを生かしたもの。前作の「NO PUSSYFOOTING」よりも、数倍も綿密に繊細に構築したアンビエント・ミュージックが聴こえてくる。カヴァーの絵はピーター・シュミッツによるもの。

side one:1.Wind on Water recorded live at The Olympia,Paris and at Olympic Studios,London. 2.Evening Star recorded at Island and Air Studios. 3.Evensong recorded at Olympic Studios. 4.Wind on Wind recorded at Eno's Studio.
side two:An Index Of Metals recorded at Eno's Studio.
Robert Fripp-guitar Brian Eno-loop and synthesizer
engineered by Denny Bridges,Phil Chapman and Rhett Davis.
produced by Eno and Fripp for E.G.Records
ISLAND 1975

FRIPP & ENO VIDEOS
http://www.youtube.com/results?search_query=FRIPP+%26+ENO&search_type=

CLUSTER & ENO/CLUSTER & ENO(SKY 010)
FRIPP & ENOの音楽や、このクラスターの音楽をいつから"drone"と呼ぶようになったのか知らないが、ドローンとは『(ミツバチの)雄バチ 《いつも巣にいて働かない》、 のらくらもの; いそうろう、 のらくら暮らす[過ごす] 、(ハチなどの)ブンブンいう音、【楽】持続低音(管)、〈…を〉ものうげに話す[言う]』という意味があるが、まあこの持続低音の意味合いで使われているのだろうが、ボクは"un・du・la・tion(波動,うねり、波動[起伏]するもの、波動,振動; 音波; 光波)のほうが相応しいと思っていて、"Undulation Music"と名付けたい。スウェーデンのあるミュージシャンが"ドローン"という言葉は、
"ノイズ"と同様に、英語では一般的にネガティヴな意味を持つ言葉で、音楽の世界以外では"ドローン"というのは退屈であるとか、変化がないことやさらには苛立たせるようなサウンドのことを言い、おしゃべりが過ぎる人のこともたまに"ドローン"と言ったりする、とてもネガティヴな言葉なんだ。英語の"ドローン"にはもうひとつ意味があって、それは働き蜂のことで、音楽で言う"ドローン"という言葉は、おそらく働き蜂の羽の持続音から来ていて、働き蜂は考えることなく機械的に仕事を継続せねばならないことからそのように形容されたんじゃないかと思う。多くのクラシックとなっているドイツの"クラウトロック"のアルバムは本質的には"ドローン"で、Klaus Schultz、Tangerine Dream、Popul Vuh II、Faust IVの最初の作品も"ドローン"と言えるでしょう"と語っている。催眠的でサイケデリックという記号が"ドローン"ミュージックの本質というのなら、いかにも西洋人ならではの虫の音を機械音や雑音と同様に右脳=音楽脳で処理する発想と言わざるを得ないが、'77年にドイツのスカイ・レーベルからリリースされたコニー・プランクがプロデュースした「CLUSTER & ENO」は、クラスターのHans-Joachim Roedeliusとブライアン・イーノのコラボレーションで、7月にコニー・プランク・スタジオで録音されている。ここでの音楽はエレクトロニクスの冷たい無機質なサウンドではなく、ロマン主義と自然主義が融合したかのような世界観が描かれていて、これこそドローン・ミュージックと呼ぶに相応しいものだろう。

side one:1.Ho Renomo 2.Schöne Hände 3.Steinsame 4.Für Luise
side two:1.Mit Simaen 2.Selange 3.Die Bunge 4.One 5.Wermut — 3:20
Dieter Moebius(keyboards) Hans-Joachim Roedelius(keyboards) Brian Eno(keyboards) Holger Czukay(bass) Okko Bekker/Asmus Tietchens(sitar, percussion)
produktion:Cluster/K.Plank
SKY 1977

CLUSTER & ENO VIDEOS
http://www.youtube.com/results?search_query=CLUSTER+%26+ENO&search_type=

JUNE 1.1974/KEVIN AYERS-JOHN CALE-ENO-NICO(ISLAND ILPS.9291)
'74年6月1日に、レインボーでケヴィン・アイアーズの「コンフェッション・オブ・ドクター・ドリーム」の発売記念とプロモーションの為に企画されたコンサートでのライブアルバム「June 1.1974」は、いまにして思えば、当時ボクが聴いてきた60-70年代のドアーズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドから始まった、シド・バレット、カンタベリ・ジャズロックのソフト・マシーン、イーノなどを変遷したすべてのリアルなロックミュージックの真のイディオムの終焉を意味する作品だったのかも知れない。誰ひとり気付かなかったが、70年代後期のパティ・スミス、テレヴィジョンなどのニューヨーク・パンク、80年代にATVなどのオルタナティヴ・ミュージックが表出する以前に、ロックはもう既に'74年に仮死状態にあり終息していたのかも知れない。

side A:1.Driving Me Backwards 2.Baby's On Fire 3.Heartbreak Hotel 4.The End
side B:5.May I? 6.Shouting In A Bucket Blues 7.Stranger In Blue Suede Shoes 8.Everybody's Sometime And Some People's All Time Blues 9.Two Goes Into Four
Kevin Ayers, John Cale, Nico, Brian Eno,Robert Wyatt,Mike Oldfield,Archie Leggatt,Ollie Halsall,Robbit,Eddie Sparrow,Doreen Chanter,Irene Chanter,Liza Strike.
Recorded at the Rainbow Theatre, 232 Seven Sisters Road, London N4, London, 1974-06-01 on the Island Mobile
Mixed at Sound Techniques, 46A Old Church Street, London SW3, 1974-06-00
Producer: Richard Williams. Engineer: John Wood
Recording Assistants: Phil Ault & Ray Doyle
ISLAND 1974

2008年04月07日

CASCADES 56

ノンイディオム? イディオマティック・インプロヴィゼーション?
頭の上をかすめて通り過ぎる風?
BEAD RECORDS
STEVE BERESFORD
DAVID TOOP/PETER CUSACK/TERRY DAY
NIGEL COOMBES
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧 56

イギリスの音楽シーンは、70年代中期から80年代初頭にかけて、'76年にウェスト・ロンドンに開店したラフ・トレード・ショップを母体としたジェフ・トラヴィス(Geoff Travis)が'78年に創立した"ラフ・トレード"(Rough Trade Records)、イアン・マクナイ(Iain McNay)が'78年に創立した"チェリーレッド・レコード"(Cherry Red Records)、後に80年代後半から90年代初頭のマッドチェスターと呼ばれる90年代レイヴ・カルチャー(ダンスミュージック/ハウス)の土台となる'78年にマーティン・ハネットがマンチェスターで設立したファクトリー・レコード(Factory Records)などのインディーズ・レコード・レーベルが次々と立ち上げられ、ポスト・パンクやオルタナティブ・ロック、ネオ・アコースティック、ポストモダン・ミュージックなど80年代初頭から中期にかけてのブリティッシュ・ロックを引率するインディー・ムーブメントの先駆けとなる動きがこの頃から始まっていた。当時イギリスの雑誌「Face」や「Wire」でレギューラー執筆し、'84年にヒップホップを取りあげた"Rap Attack"という著作も出版し、ドビュッシーからコンテンポラリー・ミュージック、アンビエント、テクノ、ドラムン・ベースまでを横断したメディア評論家/音楽家のデヴィッド・トゥープ周辺のアーティストたちにもひとつのコミュニティが形成されていて、後にYレコードに続く、"!QUARZZ"、"BEAD"、"Choo Choo Train"レーベルもそうした動きに呼応するかのように表出したフリージャズ、インプロヴァイズド・ミュージックのインディーズ・レーベルだった。このなかではやはりスティーヴ・ベレスフォードやテリー・デイ、ピーター・キュザックの存在感が際立っていた。

ALUTERATIONS/CUSACK,BERESGORD,DAY,TOOP(BEAD 9)
BREAレーベルの9作目「Alterations」は、Peter Cusack(nylon stringed guitar)、Steve Beresford (piano,
euphonium,violin,trumpet,plastic guitar,snapits,toy piano)、Terry Day(percussion,'cello alto saxphone,mandoline,home-made reeds)、David Toop(flutes,fire bucket,water,electric guitar,strings,noise)によるユニットAluterationsの、サイドAは'73年5月13日のイギリスのノリッジのPremises Arts Centreでの、サイドBは'78年6月22日Max Eastleyによるロンドン・ミュージシャンズ・コレクティヴでのライヴをソニーのカセットとマイクAKGD224で録音されたもの。限定500枚で発表されている。Alterationsは1970年代のイギリスのインプロ・グループのパイオニア的存在で、ハイブリッドなアブストラクトとポップスの中間に位置する、子供達が玩具などを手にして音楽遊戯しているかのような、ユーモアの感じられる即興演奏である。このユニットでの活動は'86年まで続き、これ以外でも「Up Your Sleeves」、「Voila Enough! (1979-81)」「I SHALL BECOME A BAT」など数枚の作品を発表している。スティーヴ・ベレスフォードはオブスキュアのno.5「Jan Steele, John Cage / VOICE AND INSTRUMENTS」でもギターでクレジットされているが、'83年にフランスのnatoレコードからリリースされた「SEPT TABLEAUX PHONIQUES/ERIK SATIE」という作品で、エリック・サティのカバーを室内楽的なピアノのアンサンブルの小品集として再構築している。当時、雑食家ベレスフォードは、デヴィッド・カニンガムのフライング・リザーズの'80年の「The Flying Lizards」、ON-U SOUNDからのNew Age Steppersの作品にも顔を出していた。テリー・デイは60年代の英国のフリー即興界の草分け的存在の一人であり、マルチ楽器奏者で数多くの企画ユニットや小グループ、ラージ・アンサンブル、ロンドン・インプロヴァイザーズ・オーケストラなどで突出した個性を発揮している。
side A:Norwich 1, Norwich2, Norwich3, Norwich4
side B:London1, London2, London3

NIGEL COOMBES,STEVE BERESFORD/WHITE STRING'S ATTACHED(BEAD 16)
Spontaneous Music EnsemblのメンバーでもあるNigel Coombesのヴァイオリンと、Steve Beresfordのピアノの組み合わせによるインプロヴァイズド・ミュージックはいま聴いてもふたりの緊張感溢れる掛け合いが素晴らしい。レコードジャケット・カヴァーには日本語で、"彼のことについては今更くどくどいうこともないと思うが、昔から日本の音楽愛好家の間では、心から彼は尊敬されている人であるというよりも、ヴァイオリニストとして、また芸術家として、高い位置に位している一つの理想像的な存在とまで考えられていることをまず言わねばなるまい。彼の音楽歴は誰も知る通り実に長い、彼の自叙伝的なWhite String's Attached"によると世界各国の都市でこれまで数多く演奏しているほか、彼の師のフーバイはもちろん、ヨアキム、フレッシュ、ニキシュ、フルトヴェングラー、バルトーク、ブゾーニ、シュナーベルなどといった近代音楽史にその名を止めるであろうような多くの有名楽人と親交を結んでいたことは誠に驚くべきだと思うし、それだけでも彼は貴重な存在だと言える。彼のレパートリーは大変広く、バロックから現代に至るまでの数多い楽曲にいわゆるネオザハリヒカイトによる彼独特の解釈と高い音楽性とを我々に示していてくれる。従ってレコードの数も大変多く、ことにレコーディングの最後であったかも知れないバッハの無伴奏ソナタ全6曲は、色々の意味で大きな問題を我々にながかけている"と書かれている。当時はオブジェクトのよう
にピアノを扱っていたベレスフォードも、'95年作のSteve Beresford His Piano and Orchestra「シグナルズ・フォー・ティー(Signals For Tea)」ではクラブジャズに通じるオシャレなジャズ/ヴォーカルの作品をリリースしているという。いまでいうイケメンのルックスからしても彼なんかもっと人気がでてもいいのにと、当時そう思っていた。

side one:White String's Attached 1.
recorded by David Toop and Max Eastley at the London Musicians Collective,42 Gloucester Avenue,London NW1,England;May 20,1979.
side two:White String's Attached 2.
recorded by David Toop at LMC,March 24,1979.
White String's Attached 3.
all reordings were made on a Sony TC158SD cassette recorder,with two A.K.G.D224 microphones.
transfer to reel by Richard Beswick.
The title is fom a double misprint found in Japanese sleeve notes to Joseph Szigeti records.
dedicated to Joseph Szigeti and Chic.
BEAD 1980

PETER CUSACK/AFTER BEING IN HOLLAND,FOR TWO YEARS(BEAD 5)
音響収集家でもあり、イギリスのエレクトロ/アコースティック/インプロヴァイズド・ミュージシャンのピーター・キューザックは、これまでEvan Parker、Jon Rose、Chris Cutler、David Toop、Max Eastleyなどとのコラボレーション活動を続けてきた。近年の作品「Baikal Ice」、「The Horse was Alive, the Cow was Dead」などでは、シベリアの広大で美しいバイカル湖に滞在しながら収録したフィールド・レコーディングの数々、冬の間に湖面を覆っていた氷が初夏になって砕け、そのかけらがぶつかりあって生じる乾いた透明感のある音を水中マイクで捕えたサウンドや、吠える番犬、鳥、桟橋のフェリー、氷が割れて落ちた人、カモメ、シベリア鉄道、列車内で歌う少女などの、切り取られた音響の聴覚スケッチと呼ばれるジャンルを確立した音響系アーティストである。このアルバムはナイロン弦のギター、エアー・マイクロフォンで収録された音響、鶏の鳴き声、鳥のさえずりなどの生音、効果音などの、とるに足らない音響をコラージュしたもので、ナンセンス極まりない。これこそダダイストの本領だろう。スカムなどと呼ばれるクズ音楽なども罷り通っている時代だから、こういうのもありだけど、音響系という音楽はやはりレコード音楽としてのフィールドで確立されるもので、レコーディング・テクニックを駆使して様々な音響の断片を切り貼りし、サウンド・コラージュ、ソニック・デザインされてこそ、ひとつの構造を持つ音響なのだ。断じてレコードの枠から出てパフォーマンスとして展開する類いの音楽ではない。こうした手法が10年以上の時を経て、90年代クラブカルチャーでのサンプリング、リミックスへと引き継がれたと言えるだろう。

side A:1.Some guitar playing.Parts 1 and 2(March 1977) 2.Some more guitar playing(June 1977)
side B:3.Maarsseveenseplassen(guitar March 1977;environment Nov 1975)
4.A Dutch landscape(may 1977) 5.About nice Duch improvisatory music(June 1976) 6.Recorded near Tienhoven(April 1976)
Peter Cusack-guitar improvisations and tapes
BEAD 1977

NESTOR FIGUERAS,DAVID TOOP,PAUL BURWELL/CHOLAGOGUES(BEAD 6)
ジャズにおける即興演奏は一定のコード理論などの規則にしたがって演奏されるが、まったく決めごとを作らずに自由に演奏する完全即興やフリー・インプロビゼーションと呼ばれる音楽は、共有され展開を決めていくための楽譜のような約束事がない偶然性こそがその音楽の目的とする以上、聴いている側にとっては苦痛に思えることが多々ある。レコードでのフリー・インプロヴァイズド・ミュージックは、部屋の空気のようなもので、音に意識を集中させなくてもいいし、嫌になればレコードを止めれば済むが、パフォーマンスとなるとそうはいかないのが辛いところだ。現在こうしたインプロヴァイズド・ミュージックをボクは"ジャズ的なるもの"とは考えていない。むしろノイズ・ミュージックとしたほうがいいだろう。この「CHOLAGOGUES」は、ジャケットに掲載されたライナーノーツによると、'77年4月1日にロンドンのAction SpaceにおけるJ・Drewシリーズの期間中にデヴィッド・トゥープがソニーTC146Aカセツトで録音したもの。またその日の夜、Garry/Todd/Nigel/CoombesのデュオでReindeer Werkでもパフォーマンスを行なっている。デヴィッド・トゥープとネスター・フィガラスは'76年に開催されたthe Festival of the Audienceの時に"EARth/ZOO"と"Action Space"でのパフォーマンスでこのアルバム以前にデュオを組んでおり、そのフェスティバルではバックを流れる騒音、車が通りすぎる音、カバーを楽器からはずす音、デヴィッド・トゥープがマイクロフォンをたおす音なども音楽の一部を占めていた。

Nestor Figueras(movement,respiratory and vocal sound,body percussion)
David Toop(c flute,alto flute,water whistles and flutes,bone whistle,bone trumpet,balloon,whirled bamboo bird whistle,piston flutes,stopped end-blown flutes,basque panpipes,new guinea initation flute,dog whistle,metal,blow)
Paul Burwell(drums,cymbals,woodblocks,gongs,kyeezee,bamboo pan-trumpet,deerbone fiddle,one-string fiddle,aeroplane elastic,water,bows,dog whistle)
BEAD 1977

IAN BRIGHTON/MARSH GAS(BEAD 3)
COLIN WOOD,BERNARD WATSON,CLIVE BELL/DOWNHILL(BEAD 8)
HARRY de WIT/APRIL '79(BEAD 11)

BEAD RECORDS: list of recordings
LPs
Bead 1 Peter Cusack/Simon Mayo Milk teeth
Bead 2 Richard Beswick/Simon Mayo/Phil Wachsmann/Tony Wren Chamberpot
Bead 3 Ian Brighton/Marcio Mattos/Radu Malfatti/Roger Smith/Phil Wachsmann/Jim Livesey/Sounds in Brass Handbell Ensemble Marshgas
Bead 4 Roy Ashbury/Larry Stabbins Fire without bricks
Bead 5 Peter Cusack After being in Holland for two years
Bead 6 Nestor Figueras/David Toop/Paul Burwell Cholagogues
Bead 7 Richard Beswick/Phil Wachsmann/Tony Wren Sparks of the desire magneto
Bead 8 Colin Wood/Bernard Watson/Clive Bell Downhill
Bead 9 Peter Cusack/Steve Beresford/Terry Day/David Toop Alterations
Bead 10 Levers (Hugh Metcalfe/Parny Wallace/Chas Manning Alone
Bead 11 Harry de Wit April '79
Bead 12 Phil Wachsmann/Harry de Wit For Harm
Bead 13 Evans/Beswick/Hutchinson Opera
Bead 14 Gunter Christmann/Maarten van Regteren Altena/Peter Cusack/Guus Janssen/Paul Lovens Groups in front of people 1
Bead 15 Evan Parker/Terry Day/Maarten van Regteren Altena/Peter Cusack/Guus Janssen/Paul Termos/Paul Lytton Groups in front of people 2
Bead 16 Nigel Coombes/Steve Beresford White string's attached
Bead 17 Alan Tomlinson Still outside
Bead 18 Phil Wachsmann/Richard Beswick Hello Brenda!
Bead 19 Mike Hames/Jim Lebaigue/Hugh Metcalfe/Phil Wachsmann The bugger all stars
Bead 20 Mark Charig/Larry Stabbins/Paul Burwell/Martin Mayes/Tony Wren Mama Lapato
Bead 21 Bugger all stars Bonzo bites back
Bead 22 Peter Cusack/Clive Bell Bird jumps into wood
Bead 23 Phil Wachsmann Writing in water
Bead 24 Chris Burn/John Butcher Fonetiks
Bead 25 Tony Oxley/Phil Wachsmann/Wolfgang Fuchs/Hugh Metcalfe the Glider & the Grinder
Bead 26 Quintet Moderne Ikkunan takana [Behind the window]
Cassettes

※付加 この原稿を書くために、30年ぶりにノンセンスなインプロヴァイズド・ミュージックに意識と耳を傾けて聴いたけれど、スティーヴ・ベレスフォードの数枚の作品を除いて、正直疲れたよ。意味もなく空間に空気のようにただ流れているだけならそれなりに機能する。だけどこんな音楽を70年代のように聴くなんてもう馬鹿げた行為だ。ある有名なフリー系ミュージシャンがデレク・ベイリーの書いた"インプロヴィゼーション"から、『イディオマティック・インプロヴィゼーションをするほとんどの人にとって、そのイディオムに照らして自分の演奏が正統的であるかどうかは最重要の問題であり、第一の関心がそこにある。ところが、ここでもっとも重要だった努力の目的が、フリー・インプロヴァイザーにはないのだ。自己同定しうるスタイル上の伝統がいっさいないのだから』という言葉を引用して、フリー・インプロヴィゼーションをイディオムを即興から消し去ろうとしたベイリーの挑戦、伝統の裏返しとしての異端とし、また、次にある評論家の文章は『すなわち、いかにして演奏しないか? 』ということに行き当たると述べ、『イディオマティックとノン・イディオマティックとの果てなき循環、闘争の歴史があった。云々・・』と続く。こういうインプロヴィゼーションの馬鹿げた理屈っぽい間違った解釈こそが、音楽を思想や言語の世界に組込み引き下げつまらなくさせているのだ。インプロヴァイズド・ミュージックに意味などない、それこそノンイディオムじゃないか。未だに過去のフリー・インプロヴァイズド・ミュージックに捕らわれているミュージシャンなら、所詮一生報われないことを覚悟して、その音楽、頭の上をかすめて通り過ぎる風、BGMに過ぎないものを慈しんだらいいのじゃないのか。CASCADES 52での"TRAnsMuTAtioNs-Bill Laswell, Derek Bailey, Jack DeJohnette”のヴィデオを観たか! 90年代にはデレク・ベイリーすらもクラブジャズの文脈に侵入し演奏しているんだ。"ジャズ的なるもの"、"イディオマティック"、"正当派"、それこそが21世紀音楽にボクが欲しているものだ。ハード・バップでの行き詰まりを打破しようとモダン・ジャズの理論の束縛からの自由を求め、ピアノを拳で叩くパーカッシブ奏法、サックスの絶叫奏法ともいうフリーキー・トーンなどの自由な即興演奏のフリー・インプロヴィゼーション、自由な束縛のない演奏形式のフリー・フォームまでが音楽になしうるフリーの限界だ。最後にきっぱり言い切っておくが、クラブジャズをイニシエーションした耳には、彼らの言うジャズとは呼べないノンイディオム・フリー・インプロヴィゼーションは、いまとなっては興味の対象にもならない。

2008年04月08日

CASCADES 57

QUARTZ RECORDS
SACRED FLUTE MUSIC FROM NEW GUINEA
RAGNER JOHNSON
DAVID TOOP/PAUL BURWELL
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧 57

'70年代後半にもなるとロック(スリッツのアルバム「CUT」、ポップ・グループの「Y」のアルバムジャケットに顕著)や音楽における民族学とでも言おうか、アニミズムやシャーマニズムなどへの傾向が多くみられた。精霊などの超自然的存在と直接接触・交流・交信、トランス状態に入って霊(超自然的存在)と交信する現象などなど「自己を超えたなにものか」や、トランスパーソナル(自己超越)という心理学などの体系も、結局は"思い込めば効果はある"という恣意的な結論で決着したが(トランステクノのDJがシャーマンだといまだにアナクロニズムしてる輩もいるが)、自然に対する畏敬の念はいまも持っているが、ボクがトロブリアンド諸島やパプア・ニューギニアやアマゾンに住む原住民なら、すべてのものの中に霊魂、もしくは霊が宿っているというアニミズムの考え方は信じるだろうが。'77年にデヴィッド・トゥープが設立したインディペンデント・レーベル"QUARTZ"からリリースされた3枚の作品は、上の「Sacred Flute Music From New Guinea」の2枚は民族学の研究資料としては貴重なものだろう。デヴィッド・トゥープとポール・バーウェルの「Wounds」は、パプア・ニューギニアのバンブー・フルートを使ったフリー・インプロヴァイズド・ミュージック。

SACRED FLUTE MUSIC FROM NEW GUINEA:MADANG/VOL.1(!QUARTZ 001)
SACRED FLUTE MUSIC FROM NEW GUINEA:MADANG/VOL.2"WINDIM MAMBU"(!QUARTZ 002)
サウス・パシフィックと呼ばれる地域は、メラネシア、ミクロネシア、ポリネシアという3つの群島から成り立っていて、特にメラネシアには多種多様な音楽スタイルがあり、パプア・ニューギニアだけを見ても高地から発生したヨーデルからバンブー・フルート、低地から発生したフルート&ドラムの音楽などがある。この2枚のアルバムでのバンブーフルートの民族音楽の、パプアニューギニアは、南太平洋にあるニューギニア島の東半分及び周辺の島々からなる国で、オーストラリアの北、ソロモン諸島の西、インドネシアの東、ミクロネシア連邦の南に位置するイギリスの占領下にあった現在は英国連邦国である。パプアニューギニアは、元々あったパプアとニューギニアが合併してできた国で、パプアはメラネシア人の縮れ毛を指すマレー語の言葉に由来し、ニューギニアはメラネシア人がアフリカのギニア人に似ているところからスペイン人の探検家が名付けたものと言われている。パプアニューギニアでは、伝統的にワントークと呼ばれる小人数の部族に分かれて生活をしていて、多くの部族は数10、数100人程度で、それぞれの部族ごとに言語、習慣、伝統が異なっている。かつては各部族同士で戦いを行うことがよくあったという。このSacred Flute Musicが収録されたマダン州は、地理的多様性に富み、ライフスタイルの違いから住民は大きく4種類、すなわち島嶼地域の住民、沿岸の住民、川沿いの住民、山地の住民に分類され、マダンの町並みは色彩豊かで南太平洋で最も美しい町と言われている。
ニューギニアの多くの地域では雄牛の叫び声を霊的な意味を持つものとして、風の音が超自然に関連したものだと考えられていて、ここでのフルートのサウンドは、儀式文脈での魂の叫びと同じで、口を通して吹く行為は魔法の呪文には不可欠な要素と言われ、それと同様にニューギニアではフルートを吹くことは人間と霊の世界を仲介するために使用され、儀式の中でフルートは霊を呼び出すために用いられ、人間が霊にアクセスしやすく関係づける能力を持っている。フルートは大人の男性によって作られ秘密に所有され、吹かれるが、女性と子供はフルートを見ることも禁じられ、フルートの叫びが霊の声であると信じている。フルートは大人の男性だけが独占し、彼らだけに超自然への特権的なアクセス権があり、ニューギニアはすべての主要な儀式の機構と演出の一部に、女性の上に男性が支配している制度化した掟がある。この2枚のアルバムでの宗教的儀式に関する神聖なフルート・ミュージックは、パプア・ニューギニアのmadangでの2つの文化的に異なった地域から収録されたもので、最初の3トラックはramu川近くの沿岸水域、manam島のborai、bo'da村で記録され、4番目のトラックは内陸の位置するramu谷で記録されたもの。
ramuの口の近くの海岸近くの村とmanam島の村の貿易、儀式的な交換や結婚などに複雑なネットワークを持っている。フルートの演奏はタブーと禁制で規制されていて、適切な儀式以外では演奏されない。男子のイニシエーションの儀式、村の相互間の祝宴、サゴ椰子の収穫、誕生、結婚、葬式と祝賀には異なったペアになったフルートが吹かれる。ときには死のタブーを振り払うためにフルートを吹くこともある。バンブーフルートは、常に対で作られ演奏される。長いフルートはペアの男性、短いフルートは女性、ユニークなスピリット・ネイムをペアになったフルートに与え、そのサウンドの違いによって他のペアになったフルートとの区別ができるようにしてある。それぞれのペアのフルートは、特定の村の種族の長の家系で所有されて作られプレイされ、世襲的に'Tenepwa'によって管理される。

Papua New Guinea
http://www.youtube.com/watch?v=gfgS41D3VQc


SACRED FLUTE MUSIC FROM NEW GUINEA:MADANG
Recorded By Ragnar Johnson/Assisted by Jessica Mayer
side A:1/2「Ravoi flutes,2 Small Garamuts:Bak Hamlet,Borai」 recorded '76/4/14.
2/2「Waudang Flutes,2 Large Garamuts,2 Small Garamuts,6 Singers:Bo 'da Village,Manam Island」 recorded '76/5/19.
side B:1/2「Jarvan Flutes,1 Do-don Shell Rattle;Awar Village」recorded '76/4/11.
2/3 「Momo Resonating Tubes:Damaindeh-Bau,Finisterre Range」 recorded '76/8/20.
QUARTZ 1977

SACRED FLUTE MUSIC FROM NEW GUINEA/WINDIM MAMBU
Recorded by Ragnar Johnsou/Assisted by Jessica Mayer
note and photographs by Ragner Johnson/Jessica Mayer
side A:1/2「Gomkail Flutes,1 Small Garamut;Bak Hamlet,Borai」recorded 14/4/76
2/2「Rumu Flutes,1 Small Garamut,Kundu;Bak Hamlet,Borai」 recorded 14/4/76
3/2「Buaraning Flutes;Bak Hamlet,Borai」recorded 12/4/76.
4/2「Tika Flutes;Bak Hamlet,Borai」recorded 18/5/76
5/2「Noindeh Flutes,2 Small Garamuts,Nubia-Sissimungum」recorded 12/4/76
6/2「Taur Conch Shells,1 Small Garamut,Kundus;Kaean Village」recorded 18/5/76.
7/2「Kaidabang Flutes,1 Small Garamut,Kundus;Kaean Village」
side B:1/2「Waudang Flutes,2 Large Garamuta,2 Small Garamuts,6 Singers;Bo'da Village,Manam Island」recorded 19/5/76
2/2「Waudang Flutes;Bo'da Village,Manam Island」recorded 19/5/76.
3/2「Waudang Flutes,2 Large Garamuts,2 Small Garamuts,Kundus,Singers;Kuluguma Village,Manam Island」recorded 20/5/76.
4/2「Gopu Flute;Bo8da Village Manam Island」recorded 21/5/76.
5/2「Mo-mo Resonating Tubes;Damaindeh-Bau,Finisterre Range」recorded 20/8/76
QUARTZ 1978

DAVID TOOP,PAUL BURWELL/WOUNDS(!QUARTZ 003)
side A:a/Stigmata b/Marks and Social Purpose c/Mud/Swiffs/Din/Stench d/Concerning the Housing Situation in London
side B:a/Cosmopolitan Order of Birds b/The Experiment of Olgas Hand c/Extasy of a Bird Karma d/We Can Have a Good Time Without Snakes e/No Electricity
all titles Toop/Burwell
David Toop(electric guitar,flutes,home-made+found stuff,water,noise,rubbish,small explosivers,cassette tapes-the parrot's long good bye,rec.London Zoo+whirled tape recorder with tape of continamo falls,rec. amazonas,16 Nov.1978 by Toop and Figuera...)
Paul Burwell(percussion,fiddle,paper,water etc....)
QUARTZ 1979

2008年04月09日

CASCADES 58

PIANO RECORDS
DAVID CUNNINGHAM
TONY SINDEN
THIS HEAT
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧 58

DEVID CUNNINGHAM/GREY SCALE(PIANO 001)
'77年にリリースされたデヴィッド・カ二ンガムのアルバム「Grey Scale」は彼が設立したインディ・レーベル"ピアノ・レーベル"からの1枚目にあたる作品。ここでのエラーシステムとは"プレイヤーは繰り返しフェーズを演奏する。ひとりのプレイヤーが誤りをおかすと、それはさらなる誤りによって変化してゆく反復の基礎となる。その結果、制御不可能なプレイヤーの速度によってサウンドが変化してゆく。パフォーマンスのために変化を取り入れようと故意に誤りを決して作ってはいけない。要するに誤りを持続させてください"というものであり、「water systemised」に見られるシステムは、"水の断片、ギターの断片はこのプロセスに類似しているもので、しかしここでのプロセスは使用される機械につきものの特性である自動である"というようなことが書かれている。簡単に言ってしまえば、人間の手によりミニマルな反復でのエラーシステムでのミス=エラーと、機械によるミニマルな反復のオートマティック・システムでのミス=エラーによる音響が展開されているということだ。デヴィッド・カニンガムは、'54年アイルランド生まれの作曲家、音楽プロデューサー、ミュージシャン、"Piano"レーベルの設立者で、またマイケル・ナイマンのピーター・グリーナウェイのための映画音楽のアルバム・プロデュースを10数作手掛けている。彼自身も映画音楽や舞踊音楽のアルバム、83年「ゴースト・ダンス」、88年「カフカ」などを発表している。'93-2003年にかけてはMichael GilesとJamie Muirとのコラボレーション「Ghost Dance」、 John Latham、David Hall、Stephen Partridge、Bruce McLeanなどのヴィジュアル・アーティストとのテレヴィジョン・シリーズ、"The Listening Room"や"Contemporary British Art"などの音響インスタレーションの活動や、ニューキャッスル大学造形芸術学科(Fine Art at the University of Newcastle)主任研究員としての顔もある。彼には'81年にロンドンの自宅でインタヴューしているが、当時、'79年に結成したフライング・リザース(The Flying Lizards)での"Money"が(オリジナルは'59年のバレット・ストロングの曲でビートルズも'63年に「ウィズ・ザ・ビートルズ」でカヴァーしている)ヒットし、ディス・ヒートや"ノイエ・ドイチェ・ヴィレ"のパレ・シャンブルクのアルバム・プロデュースも手がけていた頃で、日本からインタヴューに来たボクに彼のほうが緊張していて、知的で繊細で無欲な彼の人柄が印象的だった。

side one:1.Error System(Bagfgab) 2.Error System(C pulse solo recording) 3.Error System(C pulae group recording) 4.Error System(E based group recording) 5.Error System(EFGA)
side two:6.Ecuador 7.Water Systemised 8.Venezuela 1 9.Guitar Systemised 10.Venezuela 2 11.Bolivia
instrumentation and musicians:David Cunningham(piano,glockenspiel,sybthsiser,percussion,violin piano,bass,recorder,tape,water) Stephan Reynold(glockenspiel,piano,synthesiser) Alan Hudson(bass guitar) Derek Roberts(piano,glockenspiel) Alan Hudson and Michael Doherty(percussion)
mixed and produced by David Cunningham
cover photograph from the videotape 'Show Scale'(1975) by Steve Partridge.
PIANO 1977

TONY SINDEN/FUNCTIONAL ACTION PARTS2 & 3(PIANO 002)
Tony Sindenはピアノ・レーベルからはこの作品以外にも'80年に「magnificent cactus trees...」というアルバムをリリースしている。彼はおそらく現在ロンドンで精力的にヴィデオ、映像インスタレーションの分野で活動しているアーティストだと思うのだが、"Functional Action"は、ミックスメディア・アーティストのトニー・シンデンの'78-'79年にロンドンの"The Acme"、"Serpentine"、”Hayward"ギャラリーでの作品の断片でコンパイルされている。"このアルバムの重要な要素は、フィルムとヴィデオにあり、サウンドの"Swing Guitars"と"Drift Guitars"によってその作品は発展する。この音楽の持続時間は実際のパフォーマンス・イヴェントで決定した。アルバムでの欠点と誤りはそのイヴェントに関連していて、私のアイデアを暗示している"と自身がレコードで説明しているが、'79年のロンドンの"The Hayward Gallery"におけるフィルム・インスタレーションからの、Tony Sinden とGilbert Patrickによるギターのシンプルなリフによるミニマル・ミュージックが収録されている。
side A:Swing Guitarsside B:Drift Guitars
oerformed by Tony Sinden & Gilbert Patrick,June 1977
Functional Action Series Tony Sinden
recorded by David Cunningham without overdubbing for Piano Records,June 1977.
cover images from a film-installation by Tony Sinden at The Hayward Gallery,London 1979.
produced by David Cunningham
PIANO 1980

http://www.rewind.ac.uk/behold.html
http://www.artschaplaincy.org.uk/commissions/sinden.html

THIS HEAT

THIS HEAT//DECEIT(ROUGH TRADE/ ROUGH26)
'81年6月29日、ロンドン郊外のブリクストンのコールド・ストレイジのスタジオの屋上で、初夏のひんやりした乾いた風を頬に感じながら、シリアスな眼差しを持った彼らと半日もの長時間、張りつめた空気のなかでディスヒートのインタヴューを持ったあの日のことはいまでも忘れるわけにはいかない。なぜなら当時ボクはイギリスでのこの取材を最後にして音楽ジャーナリズムの世界から足を洗おうと考えていて、ロック・イディオムに関わるすべてのことに絶望していた時期だったからだ。カンタベリー系のクワイエット・サンのドラムスだったチャールズ・ヘイワードが、レイダー・フェイヴァリッツのギタリスト、チャールズ・ブレンと、ギャレス・ウィリアムズ(ベース)の3人で結成したディス・ヒート。彼らの音楽との出会いからかなりの時間を要したがボクのロック・イディオムへの決別を決心させた大きな出来事だった。

THIS HEAT/THIS HEAT(PIANO THIS-1)
'79年の「This Heat」と、'80年の45回転の12インチシングル「Health and Effeciency」はピアノ/ラフトレードから発表されたもの。録音された即興演奏の出来上がりを再度緻密な分析をして、その上にオーヴァーダヴィングし、更に即興を繰り返すというレコーディング・テクニックの極みを駆使した音響の構築は、「Health and Effeciency」のサイドBの「Graphic/Varispeed」という曲ではファースト・アルバム「This Heat/Live」での"24Track Loop"の音源をグラフィック・イコライザーやヴァリスピード(速度調節)を駆使し加工、拡張することで出来上がっている。個人的にはそうしたリズムレスの曲も悪くないが、チャールズ・ヘイワードとギャレス・ウィリアムスのテンションの高い重厚な肉体的グルーヴを持つ曲も捨てたものじゃなかった。'82年にギャレス・ウィリアムズ(2002年に他界している)脱退に伴って崩壊するまでの、ロックの終焉を暗示しているかのように、短命なディス・ヒートだった。'79年の「This Heat 」、80年の「Health and Effeciency」、'81年の「Deceit」がディス・ヒートが事実上残した作品だ。当時はロックマガジンの読者以外に彼らの音楽などに興味を持つロックファンも少なく、無名に等しかったのだが、現在の若いロックファンにはかなりの知名度で知れ渡っていることに驚いている。

THIS HEAT//DECEIT(ROUGH TRADE/ ROUGH26)
A:1.Sleep 2.Paper Hats 3.Triumph 4.S.P.Q.R. 5.Cenotaph
B:1.Shrink Wrap 2.Radio Prague 3.Makeshift Swahili 4.Independence 5.A New Kind Of Water
all composition This Heat
Charles Hayward (voice,drums,keyboards,guitars,bass,tapes)
Charles Bullen (voice,guitars,clarinet,drums,tapes)
Gareth Williams (voice,bass,keyboards,tapes,mask)

THIS HEAT/THIS HEAT(PIANO THIS-1)
1. Testcard 2. Horizontal Hold 3. Not Waving 4. Water 5. Twilight Furniture 6. 24 Track Loop 7. Diet of Worms 8. Music Like Escaping Gas
9. Rainforest 10. Fall of Saigon 11. Testcard
Charles Bullen(Clarinet, Guitar,Vocals,Viola,Tapes ) Charles Hayward ( Keyboards,Percussion,Vocals,Tapes ) Gareth Williams (Bass,Guitar ,Keyboards,Vocals )
mono(stereo cassette,2 and 24 track recordings,feb.1976-sept.1978
the workhouse,cold storage,camberwell,live and in performance.
Engineer:Chris Blake,Frank Bryan,Kevin Harrison,Rick Walton
Remastering:Charles Bullen,Charles Hayward,Denis Blackham
produced by This Heat with David Cunningham and Anthony Moore
PIANO 1979

THIS HEAT/HEALTH AND EFFECIENCY(PIANO THIS 1201)
A:Health and Efficiency
B:Graphic/Varispeed
engineeres:Geoffrey Zipper,Chris Blake,Chiris Gray,Peter Bullen,Jack Balchin,Phil Clarke,Laurie~Rae Chamberlain.
recorded;Cold Storage/Sorry Sound.
all compositions Bullen/Hayward/Williams
PIANO 1980

THIS HEAT/LIVE IN KREFELD(INDEPENDENT DANCEMC 8507)
sideA:Paperhats/The Fall Of Saigon/Testcard/S.P.Q.R/Make Shift Swahili
side B:Unreleased Totle/Music Like Escaping Gas/A New Kind Of Water/Twilight Furniture/Health And Efficiency
Charles Bullen (guitars,vila,voice,tapes)
Charles Hayward (percussion,voice,keyboards,tapes)
Gareth Williams (keyboards,guitars,voice,bass,tapes)
live at Krefeld,west-germ, 1980
rec.by Rudi Frings
c40 cgrom 1:1 stereo
1986 by INDEPENDANCE heilbronner weg10 2800 bremen w-germ.
'86年にドイツのIndependanceから発売されたカセットテープ。


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