nu jazz以後の「ジャズ的なるもの」を模索するために購入した再発レコード
サン・ラがハードバップをやっていたって信じられるか
SUN RA
サン・ラの代表曲「Space Is The Place」に描かれている世界、緑色の血液が流れる宇宙から来た太陽神ラーとか、様々な啓示を含めてサン・ラの活動はその特異性だけで語られてきたが、1953年にシカゴで結成された「サン・ラ・アーケストラ」が、1961年にニューヨークから1970年にフィラデルフィアに移る頃にジョン・ギルモア、マーシャル・アレン、パット・パトリックの「アーケストラ三羽烏」をメンバーに配していた頃の「Visits Planet Earth」、「We Travel The Space Ways」などの数枚のアルバムを聴いて、ボクのなかで彼らの音楽に対する今まで抱いていたイメージが大きく刷新されてしまった。当時は再発された初期サン・ラの作品など、入手することも不可能だったし、現在のように彼らの情報をキャッチしようにも出来なかった。だから集団即興演奏やフリーイズム、打楽器的なピアノ演奏、オルガン、ムーグ・シンセサイザーを駆使した演奏など、サン・ラといえば誰もが70年代以後のそうした神秘主義的な既成概念でとらえがちだったが(間違ってはいないのだが)、この初期の作品にはハードバップやビバップなど純粋な音楽としてのジャズの構造をきっちりとふまえながら当時サン・ラなりに先鋭化していて、nu jazz、ハードバップ以後に繋がる音楽を探しているボクにとっては、新しい文脈の流れに組するとても新鮮で衝撃的なものだった。サン・ラの60年代周辺のバップイズムを持っていた頃の音楽をもっと詳しく調べ再解釈しなおそうと考えている。
SUN RA and His Myth Science Arkestra/We Travel The Space Ways(SATURN LP#409)
SUN RA and His Solar Arkestra/Visits Planet Earth(SATURN LPNo.9956-11A)
ロックの時代にもサン・ラの、サイケデリックやコズミック、ムーグ・シンセサイザーというコンセプトに惹かれ「REFLECTIONS IN BLUE」「SQ QUADRAPHONIC」「STRANG CELESTIAL ROAD」など、かなりの枚数のアルバムを聴いたが(また倉庫に行かなければならない)、クラブジャズからジャズをイニシエーションし、現在のジャズ的なる意識で再び再解釈し直すと、それらの作品もまた違ったヴィジョンが視えてくるのかも分からないが、この2枚のアルバムはそうした新しい概念作用によってではなく、60年代に発売されたものなのに、アルバムに収録された音楽そのものが、とてつもなく新しい。
Pathways To Unknown World SUN-RA El Saturn and Chicago's Afro-Future Underground 1954-68
The Wisdom of SUN-RA San-Ra's Polemical broadsheets and Streetcorner Leaflets
最近購入した聴いておきたかった輸入中古盤
CANDIDO/Conga Soul(ROULETTE R52078)
キャンディドといえば70年作ブルーノートの「BEAUTIFUL」でのアフロ・ジャズだが、nu jazzからハードバップへと視点を変換して以後、ボクのレコードの選び方、聴き方に変化があらわれていてラテンやブラジリ、アフロ、カリプソまでも興味の対象が広がっている。というよりハードバップからさてどこに行こうか、中古盤の良いモノをあれこれ聴きあさっているというのが正直なとこだろう。それにしても中古盤には、ボクの知らない素晴らしい作品がまだ数多く眠っていて、ひとつのジャンルに囚われてレコードを聴くのももったいない話だ。「ジャズ的なるもの」という記号ひとつで、この新しい発見の旅は果てしなく広がっていく。
http://www.youtube.com/watch?v=dgZk0h2w8t4
MONGO SANTAMARIA/Explosion(RIVERSIDE RS3008)
キューバ出身のコンガ奏者で本名ラモン・サンタマリア(Ramon Santamaria)は、ラテンジャズ、ブーガルーなどラテン音楽やラテン・テイストのブラックミュージックを中心に音楽活動を展開していた。そのなかでも「アフロブルー」が代表作だが、58年作の「Afro Roots」など数えられないほどのアルバムを発表している。このアルバムはラテンを核にしたマンボ、ブガルー、バップ、カリプソまでも横断し、カラフルなカクテルを飲むような、レコードを聴き始めた若い頃の音楽を聴く愉しさを取り戻してくれる。
http://www.youtube.com/watch?v=Gs73_-4wPQI
DIZZY GILLESPIE/Jambo Caribe(LIMELIGHT LM82007)
65年作のディジー・ガレスピー(1917年10月21日 - 1993年1月6日)の陽気なカリビアン・ジャズ。ガレスピー自身もお茶目なヴォーカルを披露していてバップ風の曲もある。資料によると、アフリカ系アメリカ人のジャズミュージシャン、トランペット奏者、バンドリーダー、コンポーザーとしての彼はモダン・ジャズの原型となるビバップを築いた功労者の一人として讃えられ、アフロ・キューバン、ラテン・ジャズを推進させたアーティストとしても知られる。ベルが上に突き出たトランペットを、頬をいっぱいにふくらませ、高らかなトーンで豪快かつテクニカルに演奏するスタイルは人気を博した。だみ声でのスキャットを得意とする個性的なジャズ歌手でもあったという。
http://www.youtube.com/watch?v=cRvUyMpoQgA&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=Lcj5kuk37jA
ART BLAKEY AND THE JAZZ MESSENGERS/The Witch Doctor(BLUE NOTE BST 84258)
ブルーノートのアナログレコードをこの2、3年かけてやっと90%くらいは蒐集した。そのなかでもこのレコードになかなか巡り会わなく入手困難だった1枚。Wayne Shorter (ts) Lee Morgan (tp) Bobby Timmons (p) Jymmie Merritt (b) Art Blakey (ds)によって1961.3.14に録音されたもので、このアルバムは61年の2-5月にまとめてブルーノートに録音され「The Freedom Rider」など4作品発表された1枚。61年のメッセンジャーズの最も完成度の高い名盤だとボクは思っている。長い間発売されずに埋もれさせたままにしていた当時のジャズ関係者の耳をも疑ってしまう。それほど素晴らしい緊張感溢れたショーター、モーガンの先鋭的スピード感あるハードバップ・プレイが収録されている。
THE DANISH JAZZBALLET SOCIETY'-ENSEMBLE/The Jazz Dancer(FONA F501)
ダニッシュ・ジャズバレー・ソサエティ・アンサンブルはデンマークのグループで、このシリーズは「JAZZ DANCER "REVISITED"」など全部で三作作られている。 コンダクター、BJARNE ROSTVOLDとPer Carsten、Uffe Karskov、Jesper Thilo、Flemming Madsen、Ray Pitts、AllanBostschinskyなど管楽器によって構成されたユニットで、ジャズバレーのための音楽11曲が収録されている。北欧のnu jazzのルーツのようなジャズだとも言えるが、60年代の北欧プロダクトデザインと共振したポップジャズ的な要素もある。
Comment (5)
阿木さんへ
私も最近偶然sun raの(共作ですが)you never told me that you careという初期に作曲されたバラードを聴いて(演奏していたのはsun raではないですが)、非常に驚きました。私の場合はバップ的というよりは、デューク.エリントンとの親和性だったのですが。思えばSun Raは確かフレッチャー.ヘンダーソンのピアニスト/アレンジャーからキャリアをスタートさせており、そういう音楽があっても何の不思議も無いのですが。彼がいつからああいう方向に行ってしまったのかは分からないのですが、宇宙というモチーフを出してからはエレクトリックキーボードや電子音を多様したのは鋭いし、P-FunkのSF的コンセプトの源流はここにあるのかもとさえ考えてしまいました。
投稿者: 辰巳哲也 | 2007年11月12日 10:04
日時: 2007年11月12日 10:04
SUN RAには、奇抜なイメージばかり抱いていましたが、
阿木さんのコメントを読んで、聴いてみたいなと思いました。
>というよりハードバップからさてどこに行こうか
阿木さんはビパップは聴かれないのですか?
ハードバップとは切り離すことの出来ない音楽ですし(細かくカテゴライズしてるのは日本人だけと言う話を聞いた事があるような気がします)、
パーカーやパウエルが後世に与えた影響は計り知れません。
今まであまりビバップのことが話題に上がることがなかったように思うので(たしかにクラブ向けではないと思いますが)気になりました。
投稿者: jazz | 2007年11月13日 20:51
日時: 2007年11月13日 20:51
ビバップもパーカー、レッド・ガーランドなどかなりの枚数のレコードを聴いているのだけれど、どこかにクラシックでのロマン主義的な匂いがして、もうひとつ直覚的に気持ちよくなれない。コード進行に添った即興演奏がうりの、でも誰がやっても同じようなアドリブには、聴き進むうちに退屈になってしまう。ビバップはやはり40年代のもの、という気がするけれど・・・。
投稿者: 阿木 譲 | 2007年11月13日 22:15
日時: 2007年11月13日 22:15
阿木さん、コメントありがとうございます。
退屈に聴こえてしまうのであれば、仕方ないですね・・・。
しかし、
>でも誰がやっても同じようなアドリブ
には賛同しかねます。
チャーリーパーカーやバドパウエルはやはり格が違いますよ。
投稿者: jazz | 2007年11月13日 23:37
日時: 2007年11月13日 23:37
ビバップがどれも同じに聴こえるとすれば、それは演奏される曲の構造が同じようなものだからという部分もあると思います。ビバップ期の曲というと、スタンダードもあるにはあるけど、ブルースとリズムチェンジ(I Got Rhythmの進行と同じもの)が矢鱈と多いですから。パーカーやパウエルはビバップのイノヴェイターとしての凄さは確かにあると思います。でも、「ビバップ期に発見された和声へのアプローチの仕方」は共通しているので、同じようなソロになりやすい可能性はあると思います。例えばそうしたものが我々ミュージシャンのクリシェともいえる「パーカー.フレイズ」だったりするわけで。そういえば、去年Birth of the Coolの譜面を再現するというのをやりましたが、曲の半分くらいはリズムチェンジをベースにしたもので、サウンドそのものは面白かったけど、ソロではワンパターンな感覚を覚えました。
投稿者: 辰巳哲也 | 2007年11月14日 07:13
日時: 2007年11月14日 07:13