「ON THE SPOT」報告
ミュージシャンがある条件(客の良さ、イヴェントの空気感、ミュージシャンのコンディションなどなど)がそろって、「のった」瞬間には人の心を動かし空間すらも変える力を持ちうるものである。そのことを証明するような、1年に1度あるかないかの演奏が聴けた素晴らしい「ON THE SPOT」だった。QUINTET WORLDWIDEも、NWQも、NATIVEも、すべてがユッカ・エスコラというひとりのトランペッターに触発され、その緊張感のなかで生まれる繊細なプレイとポゼッションしたダイナミックでドラマチックな「ポケット」に入ったままの充足感に満ちた空間がオープニングからフィナーレまで連続して持続し、それこそタイトル通りの「オン・ザ・スポット」を体験させてくれた。トリをしめたNATIVEのアンコール曲にユッカとニクラスが突然セッションという形で参入したのは、このままではなんだか定例のようにイヴェントが終わってしまいおもしろくないと感じたので、カウンターの前でひとりでジントニックを飲んでいたユッカに急遽「セッションしてくれませんか」とお願いすると、「いいよ」と気軽に応じてくれたのでエンディングに相応しいあのドラマが生まれたというわけである。それにしても50坪ほどのnu thingsの空間のなかでミュージシャンもDJもお客さんも、延べ100人ほどの人が同じ素晴らしい音楽体験を共有できたのは奇跡のようなものだ。あの場に居合わせた人たちは幸せだったね。ひとまずなにごともなくイヴェントが成功に終わりホットしている。可能ならいつかボクもオーディエンス側に立って音楽を楽しみたいものだ。店を去るときにユッカとニクラスはボクの耳元で「お前の店は最高だよ。こんな知的でモダンな空気感のある店は世界中どこを探してもないよ。お客さんもミュージシャンも最高だった。ありがとう今夜は忘れられない日になった。また近いうちに会おうな」と言ってくれた。イヴェントが終わって部屋に帰り、ダイニングのソファで横になって煙草を吸っていたら急にまたあのメランコリックな孤独感が襲ってきた。イヴェントをオーガナイズし、それが終わったあとはいつもこの感情がどこからともなくやってきてボクを襲う。それも想像以上にいい結果をだしたときに限ってね・・・。不思議だな。jaz room nu thingsでできることは、ひょっとするとこのイヴェントですべてやりきってしまったのかも知れないな。
今回の辰巳哲也のQUINTET WORLDWIDEは、Jeff Curryのベースをセットしたことがあの素晴らしいグルーヴが生まれた大きな要因だろう。彼のベースに引っ張られ能村亮平のドラムスもいつものジャズ寄りのグルーヴではなくクラブ系ジャズに対応する強度を持っていたし、菱山翔太のキーボードもファンキーな乗りをみせそれらがつくるグルーヴに引っ張られるようにユッカも辰巳も最初から飛ばしていて全編ダイナミックな演奏が聴けた。
NWQは、既に演奏前からnu thingsの空間に発生していた緊張感を伴った熱くなっていた空気を読み、ニクラスもフリージャズ・スタイルのクールなプレイに終始せずユッカのファンキー・スピリチュアルに引っ張られながらバックを支える島秀之のベース、仁科武志のドラムスがそれに同調するかのように熱いグルーヴを持続させていてニクラス・ウィンターには珍しくエキサイティングな演奏を聴かせてくれた。
5月の頭からポール・マーフィー、6月のUFOとの共演までの1ヶ月の間、東京での大きなクラブイヴェント・ツアーが続いていたNATIVEのその締めとも言える今回の「On The Spot」だったが、その疲れもみせずNATIVEの演奏はいままでで最高の出来映えだったのじゃないだろうか。乗りに乗っているNATIVEの勢いすら感じ、個人的には大きくなったなあと嬉しくさせてくれた彼らのステージでもあった。
(「ON THE SPOT」の映像を近いうちに配信します。)
以前には見られなかった今回のイヴェントで印象的だったのは、会場にユッカ・エスコラの若い女性ファンの顔が多く見られたことだろう。ファイヴ・コーナーズ・クインテットもユッカというフロントマンがいればこそ、あれほどのFINN JAZZブームを巻き起こしているのだと思う。ミュージシャンはやはりその音楽以上にルックスを伴ってこそ大きな動きをとれるのだと、いまさらながら思い知らされた。女性にnu jazzが認知されないうちは、なにをしても無駄な苦労で終わってしまうのだろうな。きっと・・・。
Comment (1)
私はユッカエスコラのファンで、1974とkuloを生で聴けたことが嬉しかったです。一つ夢が叶いました。
いやぁ。カッコイイとは思っていましたがあれほどとは!!
しかも近所でコミュニケーションがとれて私ラッキーでした。
英語はさっぱりわかりませんでしたけどね。ワハハ。
一つ後悔はユッカに感謝の言葉と挨拶を言わずに退店したことです。
次はちゃんと言いたいのでまたユッカに来て貰ってくださいね!
それとアギさんには「ユッカのCDにサインが欲しい」と頼んだら気軽に引き受けてくれてとっても嬉しかったです。
最後に、あの空間に居合わせることができて私は幸福です。
このイベント創りに関わった全ての人達に感謝しています。
投稿者: tami | 2007年06月04日 22:34
日時: 2007年06月04日 22:34