ARCHIVE 2
「MO WAX」
MO WAXは90年代初期にUKのJames Lavelleによって設立されたレーベル。初期の作品はすべてといっていいほどのものを所有しているが、そのなかでも個人的にはMassive Attackの3Dがジャケットデザインを手掛けている96年にリリースされた「VA/HEADZ2-PartA」と「VA/HEADZ2-PartB」が最も気に入っているかも。あれから10年という歳月が経っているけれど、アブストラクト・ヒップホップやジャジー・ヒップホップをDJイングするならいまでも充分使えるほどの遜色のないグルーヴが収録されている。このレーベルの終末の98年のUNKLE、99年のQUANNUM、BLACKALICIOUS、DICINE STYLES、2000年のNIGOなどのサイバーなヒップホップ寄りのグルーヴにちょっと飽きがきて、それ以後のこのレーベルでの音楽を聴いていないが、いま振り返れば当時すでに21世紀のストリートカルチャーを予言していて、このスタイル/グルーヴを越えるヒップホップなどいまも表出していない。それほどアブストラクトでアバンギャルドな先駆的運動を展開していた。
HEADZ2
●VARIOUS/HEADZ2 PART A(MO WAX MW016LP)
DJ KRUSH、NIGHTMARES ON WAX、AIR、STEREO MC、UNKLE、DJ FOOD、URBAN TRIBE、TORTOISE、INNERVISIONSなどの35曲がOBJECT D'ARTといわんばかりのハードボックスケースに入れられた4枚組LPに収録されている。96年発売。現在のMADLIBやYESTERDAY NEW QUINTETやSTONE THROWなどの音楽に繋がるジャジー/アブストラクトなヒップホップの原点/鋳型がすべてここにみられる。当時はトリップホップからアブストラクト、あるいはドラムンベースの流れを受けてこうした音楽は表出してきたのだが、このダウンな暗さが堪らなく素敵だった。当時ボクはこうした動きからニューヨークのファットジャズ・レーベルのようなジャジーなヒップホップへと変遷していき、現在のnu jazzやHard Bopまでたどり着いたというわけである。
●VARIOUS/HEADZ2 PART B(MO WAX MW062LP)
part bもまた4枚組ハードケースに入れられ96年発売。THE PRUNES、LUKE VIBERT、MONEY MARK、ATTICA BLUES、PARMSKIN PRODUCTIONS、PESHAY、AS ONE、BLACK DOG PRODUCTIONSなど当時のUKを核に表出してきた新興ユニットの動きを34曲収録。part aと比較するとより"ジャズ的なる"アブストラクトが収録されているように思え、個人的にはこのpart bのほうが好みだ。
●HEADZ2 SAMPLER(MW052)
96年発売。トラックAにはZIMBABWE LEGITの「Shadow's Legitimate Mix(1991)」が、トラックBにはDJ KRUSHの「Kemuri('94 Part 2)」が収録されている。
●HEADZ2 SAMPLER(MW054)
96年発売。トラックAにはURBAN TRIBEの「Covert Action」がCarl Craigミックスで、トラックBにはLOの「Fi Sensiblities-Cabin Fever」が収録されている。
EXCURSIONS
●THE PRUNES/The Plot(MWEX 001)
●IO/Claire(MWEX 002)
Excursionsシリーズとして96年に10枚発売されていたもので、初期は緑色の限定盤ボックスケースに入れられ発表されていた。この2枚の他にDJ SOLO & AURA「Take Heed」、MIDNIGHT FUNK ASSOC.「Fire Scratch」、DJ SHADOW「Chief Xcel」、STASIS「History of Future EP」、SOLP「Pressure」、TWIN BUD「Harry's Law」などが発表されていた。どれもが暗くダウンなアブストラクト・ヒップホップ、トリップホップといえる作品である。
DJ SHADOW
●DJ SHADOW/ENDTRODUCING.....(MW059)
●DJ SHADOW/Midnight in Perfect World+The number Song(FFRR/MO WAX162-531 084-1)
96年発表のこの2枚組アルバムのサイドCに収録されている「ORGAN DONOR」は、彼を代表する名曲といわれているが、久しぶりに今聴いてもポストロックとしての破壊的美しさを持っていて感動させられる。ブレイクネタを多用し、サンプリングを駆使したDJシャドウ(ジョシュ・デイヴィス)のこのアルバムで聴かれる音楽こそ90年代DJテクニックの見本であり、DJカルチャーのピークを証明するものだ。ジャケット写真に使われているレコードショップでアナログレコードを買い漁るヴィニール・ジャンキーの姿こそ、DJカルチャーを象徴したものである。そういえばクラブカルチャーの衰退と比例して、こうしたヴィニール・ジャンキーもいなくなったな。このアルバムは永遠不滅の名盤である。EP「Midnight...」は97年にUSA/ffrrからシングルカットされたもの(MO WAXからはMW057で収録されているヴァージョンは違うが同名のEPが96年に発売されている)。このジャケット写真での棚にギッシリと詰め込まれた7インチシングルを見て、心躍らなかったらDJなんてやめな!
●DJ SHADOW/STEM(MW058)
サンフランシスコ特有のサウンドスケープ=美しいメランコリックなアブストラクト・ヒップホップだ。96年に発表された7インチシングル。
●DJ SHADOW/HIGH NOON(MW063)
スラッシュメタルとパンキッシュなグルーヴさえ持つハイ・ヌーンという曲を聴くと、これこそがロックの現在形の音楽だと納得するだろう。いまやロックはダサい8ビートになどないのだ。リアルなロックはDJシャドウのアブストラクト・ヒップホップにある。サイドBの2曲目でExtended Overhaulされた「ORGAN DONOR」が聴ける。
DJ KRUSH
●DJ KRUSH/Meiso(MW039LP)
残念だがDJ KRUSHの『Strictly Turntablized』は聴いていない。そのアルバムに続いて発表されたDj Krush 96年の3枚目。Dj Shadowとの共作"Duality"をはじめ、C.L. Smooth、Black Thought、Big Shug、Guruらが参加していて、アブストラクトなサウンドに突き抜けるラップ、サンプルが交錯する。現在のアブストラクト・ヒップホップへと続く道を最初に切り拓いたのはボクはDJ KRUSHだと思う。ラップ的なヒップホップはどうも性に合わないタイプなのだが、このアルバムを最初に聴いた時には、未知のクールなヒップホップ・グルーヴに驚いたものだ。
●DJ KRUSH/HOLONIC THE SELF MEGAMIX(MW088LP)
グーグルしたらこのオリジナル・アルバムを知っている人がまるでいないのには驚いた。当時モ・ワックスの音楽をリアルタイムに聴いていたクラバーが数少なかったことが、こうしたことでも判明する。キミがヒップホップDJなら、このMO WAXから聴き直したほうがいいんじゃない。レコードショップで最初このアルバムのジャケット写真でのトイレの入り口のタイル壁にスプレーによってエアロゾールされたFUTURA2000によるカラフルなグラフィティを見たときには、衝撃的な感動を受けたのをおぼえている。
MIKE MILLES
●A VISUAL SAMPLER/Posters By MIKE MILLES(MWA001)
90年代からアメリカのグラフィックシーンの一翼をになってきたマイク・ミルズのポスター、スティッカー、ポストカードなどが収められたヴィジュアル・サンプラー。スケボーを原点としソニック・ユース、チボ・マット、ビースティ・ボーイズ等のアルバムジャケット、X-Girlのビジュアルワーク、ロゴ、他にもミュージシャンのジャケットを多く手掛けている彼は、自らもバンド、映画製作など幅広く活動しているアーティスト。「Gas Book 11 - Mike Mills」という書物や「Let's be human beings」というDVDヴィデオ作品集なども発表されている。彼もまたその作品に一貫して流れているのは、50-60年代のモッズ精神である。マイク・ミルズの作品をこうした形で発表するMO WAXレーベルもまた"生き方/生活様式"としてのモッズ精神であるのは当然のことである。
FUTURA
MO WAX レーベルを語るには、その音楽の先駆性も勿論だが、ジャケットにみられるFutura、3D(Massive Attackからの)、およびReq1などによるアートワークの秀でた芸術性だろう。特にFUTURA2000は、1955年ニューヨーク生まれのGROOVES WORLD WIDE CONNECTIONの一人で、 60年代後半の第一期サブウエイ・ グラフティ・ シーンやキース・ヘリング、バスキアなどの活動に影響を受けてアートワークを始めた人物で、 1979年にはアーティストネーム「FUTURA 2000」(現在はFUTURA)の名でアメリカ、ヨーロッパ等世界各地で個展を開催し、グラフィティ界から「SPRAY CAN WIZARD」(スプレー缶の魔術師)と呼ばれ、アートシーンではトップクラスの地位を築いている。また、FUTURA自ら、THE CLUSHをバックバンドに従えてのレコード制作や、ミュージシャンのレコードジャケットのアートワークを担当したり、そのグラフィティはTHE NORTH FACEでのジャケット、テント、スリーピングバッグや、他には自転車などのプロダクト・デザインにも使われるなど様々な分野で活動を行っている。MO WAXの音楽にも言えることだが、彼のグラフィティはストリート・アートのスプレーやマジックなどを使い、壁や地下鉄車両などに描かれた絵・文字などによるダギング、落書きのようなもので、エアロゾールともいうが、それはヒップホップ四大要素の一つでありラップ(MC)、DJ、ブレイクダンス、グラフィティによって構成される。まあダギングと呼ばれる街のあちこちに見られるスプレーペンキで描かれた落書きの一種を、レコードジャケットに使いアート(この言葉はボクにとっては死語で、使うのも恥ずかしい)に高めたFUTURAの功績は大きい。いまでは彼を現代のカンデンスキーと呼んでいる。
http://www.futura2000.com/
http://www.unkle.com/
http://www.futuralaboratories.com/
http://www.unkle77.com/
MO WAX レーベルはこれで終われないので、この続きのATTICA BLUES、INNERZONE ORCHESTRA、LIQUID LIQUID、MONEY MARK、後期のUNKLEなどは近いうちに。