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2007年06月 Archive

2007年06月04日

The inconsistency principle

「ON THE SPOT」報告

ミュージシャンがある条件(客の良さ、イヴェントの空気感、ミュージシャンのコンディションなどなど)がそろって、「のった」瞬間には人の心を動かし空間すらも変える力を持ちうるものである。そのことを証明するような、1年に1度あるかないかの演奏が聴けた素晴らしい「ON THE SPOT」だった。QUINTET WORLDWIDEも、NWQも、NATIVEも、すべてがユッカ・エスコラというひとりのトランペッターに触発され、その緊張感のなかで生まれる繊細なプレイとポゼッションしたダイナミックでドラマチックな「ポケット」に入ったままの充足感に満ちた空間がオープニングからフィナーレまで連続して持続し、それこそタイトル通りの「オン・ザ・スポット」を体験させてくれた。トリをしめたNATIVEのアンコール曲にユッカとニクラスが突然セッションという形で参入したのは、このままではなんだか定例のようにイヴェントが終わってしまいおもしろくないと感じたので、カウンターの前でひとりでジントニックを飲んでいたユッカに急遽「セッションしてくれませんか」とお願いすると、「いいよ」と気軽に応じてくれたのでエンディングに相応しいあのドラマが生まれたというわけである。それにしても50坪ほどのnu thingsの空間のなかでミュージシャンもDJもお客さんも、延べ100人ほどの人が同じ素晴らしい音楽体験を共有できたのは奇跡のようなものだ。あの場に居合わせた人たちは幸せだったね。ひとまずなにごともなくイヴェントが成功に終わりホットしている。可能ならいつかボクもオーディエンス側に立って音楽を楽しみたいものだ。店を去るときにユッカとニクラスはボクの耳元で「お前の店は最高だよ。こんな知的でモダンな空気感のある店は世界中どこを探してもないよ。お客さんもミュージシャンも最高だった。ありがとう今夜は忘れられない日になった。また近いうちに会おうな」と言ってくれた。イヴェントが終わって部屋に帰り、ダイニングのソファで横になって煙草を吸っていたら急にまたあのメランコリックな孤独感が襲ってきた。イヴェントをオーガナイズし、それが終わったあとはいつもこの感情がどこからともなくやってきてボクを襲う。それも想像以上にいい結果をだしたときに限ってね・・・。不思議だな。jaz room nu thingsでできることは、ひょっとするとこのイヴェントですべてやりきってしまったのかも知れないな。

今回の辰巳哲也のQUINTET WORLDWIDEは、Jeff Curryのベースをセットしたことがあの素晴らしいグルーヴが生まれた大きな要因だろう。彼のベースに引っ張られ能村亮平のドラムスもいつものジャズ寄りのグルーヴではなくクラブ系ジャズに対応する強度を持っていたし、菱山翔太のキーボードもファンキーな乗りをみせそれらがつくるグルーヴに引っ張られるようにユッカも辰巳も最初から飛ばしていて全編ダイナミックな演奏が聴けた。

NWQは、既に演奏前からnu thingsの空間に発生していた緊張感を伴った熱くなっていた空気を読み、ニクラスもフリージャズ・スタイルのクールなプレイに終始せずユッカのファンキー・スピリチュアルに引っ張られながらバックを支える島秀之のベース、仁科武志のドラムスがそれに同調するかのように熱いグルーヴを持続させていてニクラス・ウィンターには珍しくエキサイティングな演奏を聴かせてくれた。

5月の頭からポール・マーフィー、6月のUFOとの共演までの1ヶ月の間、東京での大きなクラブイヴェント・ツアーが続いていたNATIVEのその締めとも言える今回の「On The Spot」だったが、その疲れもみせずNATIVEの演奏はいままでで最高の出来映えだったのじゃないだろうか。乗りに乗っているNATIVEの勢いすら感じ、個人的には大きくなったなあと嬉しくさせてくれた彼らのステージでもあった。
(「ON THE SPOT」の映像を近いうちに配信します。)

以前には見られなかった今回のイヴェントで印象的だったのは、会場にユッカ・エスコラの若い女性ファンの顔が多く見られたことだろう。ファイヴ・コーナーズ・クインテットもユッカというフロントマンがいればこそ、あれほどのFINN JAZZブームを巻き起こしているのだと思う。ミュージシャンはやはりその音楽以上にルックスを伴ってこそ大きな動きをとれるのだと、いまさらながら思い知らされた。女性にnu jazzが認知されないうちは、なにをしても無駄な苦労で終わってしまうのだろうな。きっと・・・。

2007年06月10日

Give the game away

JAZZ LIFE

ボクはいま御堂筋と長堀通が交差するところから近い部屋、市内のド真ん中に住んでいる。この界隈は銀杏並木とブランドショップ、残された昭和初期の建造物が立ち並ぶ市内では唯一都市開発整備の整ったモダンなところで、こうした生活臭のない都市の風景からはジャズが聴こえてくる。ロックやテクノは都市でも人口が超過密度的に増大しスラム/カオス化していくジャンク・メガロポリスに似合うだろうが、モダンな都市にはやはりジャズがふさわしい。とくに陽も落ちかけの夕暮れの、ショーウィンドウから漏れる明かりやイルミネーションや、買い物で行き交う人々の装いは華やいでいて粋だ。ジャズの正体は実はこんなところにあるものだろう。

先日、ちょっと高かったけれど25000yen以上もする洋書WILLAM CLAXTONの写真集「JAZZ LIFE」を買った。ここには「JAZZ SEEN」でみられたウェストコースト・ジャズのモダンな世界は少なく、ジャズミュージシャンたちの虚飾を剥ぎ取ったかのようなリアルなドキュメンタリー・タッチのジャズに生きた人々の生活のワンショットの数々が記録されている。
『1959年秋、32歳の写真家ウィリアム・クラクストンにドイツから1本の電話が入った。音楽プロデューサー兼ジャズ評論家で、「Jazz Pope」と呼ばれたヨアヒム・ベーレントからだった。38歳のベーレントは、「アメリカのジャズの本を出版するんだ。ジャズとはどんな人たちによって生み出されているのか、どこで発生するのか。ミュージシャンたちにも会って、アメリカにとって偉大な'芸術'であるジャズのすべてを記録するプロジェクトだ。ぜひ撮影をお願いしたい。僕は君がジャズを本当に理解し愛していると感じるし、君の写真には魂があると思う。」即答でイエスと答えたクラクストン。2人は早速翌年の初めから取材旅行を開始した。クラクストンが運転するシボレーのインパラで、ニューヨークを出発点に、ボストン、シカゴ、ラス・ベガス、ハリウッド、ジョージア、シカゴ、セントルイス・・・。ジャズを追いかけた旅は、およそ4ヶ月続いた。路上での即興ライブ、後に多くのプロを輩出したブラスバンドのパレード、教会に流れる音楽など、無名の演奏家や市井の人々から、才能を開花させ後世に名を残したチャーリー・パーカー、エラ・フィッツジェラルド、カウント・ベイシー、ビリー・ホリデイ、マイルス・デイビスなど数々のスーパースターたちとのフォト・セッションやライブハウスでの演奏、バックステージでの素顔を記録した。本書は、1961年にドイツのBurda出版より発行された「Jazzlife」を再編集し、多数の未発表作品及びクラクストンの手記を加えたものである。』(芸術広場/Artspotから抜粋)
写真集を見ていると、この時代のジャズと現在のジャズには大きな溝があることに気づくが、ジャズの発生、本質を考える上でとても参考になる書物だ。ニッポンのジャズには様々な誤解がいまでもまかり通っている。それは、いまでもニューヨークに確固たるジャズシーンがあると思いこんでいること、ジャズクラブ・ブルーノートがあのブルーノート・レコードに関係して経営されていると信じている人が多いということ、バークリー卒業のジャズミュージシャンといえば誰もがジャズのスキルを習得していると思い込んでいること、ジャズミュージシャンならみんなが50-60年代に発売されたブルーノートのレコードの全てを聴いていると思っていることなどなど、ジャズという音楽を知れば知るほど、ボクのなかにあったジャズに対するイメージやジャズミュージシャンへの信頼が崩れてきて、その欺瞞や嘘が分かるようになった。特に大阪は「どこがジャズやねん関西」と言いたいほどジャズシーンなどないし、有能なミュージシャンは多くが東京に移り住んでしまっているし、ジャズクラブは客の入りも悪くガラガラというのが現状だ(こうしたのはミュージシャンの責任が大だと気づいていないミュージシャンのなんと多いことか)。「JAZZ LIFE」にみられるジャズが最高にいい時代はもう戻らないだろう。でも、考えればニッポンでのジャズがピークだった華やかな時代なんてなかったよな。
NATIVEのリーダーでもあるソプラノ・サックス奏者の中村智由氏が次のようにブログで書いておられる。
「クラブジャズの定義の中で、時に伝統的なジャズの要素からかけはなれてしまう場合がある。クラブでの音楽は、やっぱり躍らせるという部分が最重要なポイントで、その部分でクラウドを満足させるには、リズムがたってないと厳しい。日本の多くのクラブジャズバンドのリズム楽器の音質感は、ジャズというよりは、ロック、ファンクに近いと思う。それは、聴き手が望んでいることなので、バンドの指向が、そうなっても仕方がない。海外では、ファイブコーナーズにしても、ニコラ・コンテにしても伝統的なジャズの質感を保ちつつ、既成概念にとらわれない新しいアプローチで、新世代に向けた音楽を発信している。この違いは、とても大きい。日本では、新しい音楽を作っているのは、大半、ジャズミュージシャンではない。ジャズミュージシャンが、今後、間口を広げて、多くの人に音楽を聴いてもらいたいと思うなら、新しい発想、考えの下に音楽に取り組んでいく必要があると思う。僕は、nativeで、やっぱりジャズにこだわっていきたい。それは、スイングとか、8ビートとか、リズムの形式の問題ではない。」と。
先日の「ON THE SPOT」には普段nu jazzだ、クラブジャズだと言っているクラウドたちの顔がなかった。大半以上がジャズ好きの、ECQやユッカ・エスコラ、NATIVE好きの音楽ファンたちだった。それはイコール、クラブ系ジャズを取り巻くすべての嘘っぽさを証明するにたりるだろう。ボクはあのイヴェント「ON THE SPOT」で、新しいコンセプションを希求する次世代の若いジャズファン(クラウドではない)が確実に増えてきていることを確信した。クラブ系ジャズのクラウドよ、そして、古い伝統的どジャズよ、さらば!だ。ジャズのベクトルはクラブジャズに向かい、クラブジャズのベクトルはジャズに向かう。しかしジャズミュージシャンは感性の問題、クラブジャズ・ミュージシャンは音楽スキルの問題があって、それを越えるにはいまでも大きな障害が横たわっている。

今週買った新譜
RICKY-TICK RECORDS

THE FIVE CORNERS QUINTET featuring Mark Murphy/remixed by Jori hulkkonen/DJ Mitsu the Beats/Thomas Kallio(RICKY-TICK RT014)
90年代でのリミックス盤といえば、オリジナルを超える素晴らしい作品が多く発売されていた。しかしこのEPにみられるように昨今では、クラブ用御用達のようにDJにターンテーブルに乗っけてもらい、クラブでかけて下さいよというために作られる場合が多い。ここでの4つ打ちのディスコ・ハウスのようなリミックスなどもはや作る必要などないんだ。時代を読み違えているよ。これならばFCQ以外のジャズミュージシャンによるリワーク、リアレンジされたBefore We Say goodbyeやTrading Eightsを聴いてみたいものなのだ。クラブカルチャーの終焉も近い。こんなEPなど買う必要なし。

TIMO LASSY/The Call/Sweet Spot(RT015)
もうすぐ発売されるティモのアルバムで数曲吹いてるからチェックしてくれよとユッカ・エスコラは言ってたな。1st「The Soul & Jazz of Timo Lassy」がこのepを追って発売されるが、ユッカは全体的にはスピリチュアルなジャズだと言ってた。サイドA「The Call」ではラテンテイストのモダンな味付けがされたTimo、Mikko、Jukkaの3管によるハードバップといってもいいだろう。それほどダイナミックで躍動感あるグルーヴを持つジャズを展開している。サイドB「Sweet Spot」はボッサ・グルーヴで的を得た演奏が聴ける。丸刈りにしてすっかり垢抜けたティモ・ラッシーがユッカに続いてこのニッポンでブレークするのは当然だろう。
http://www.myspace.com/timolassy
http://www.timolassy.com/

LTC(LUSSI/TUCCI/CIANCAGLINI)/Easy Does It+Menino Das Laranjas(RT016)
LTCはPietro Lussu(Piano)、Pietro Ciancaglini(Bass)、Lorenzo Tucci(Drums)からなるピアノトリオなのだが、ここにリッキー・チック・レーベルの本質/未来へのヴィジョンがみえている。こうした本格派ジャズをもはやクラブ系のDJたちが聴きそのDJリストに入っていて当然なのだが、残念だがそうはいかない。nu jazzやル・・・ジャズと謳っておきながら4つ打ちのドンドン・ハウス・ミュージックをかけている有名なDJ SやDJ Kなど、こいつらみんな偽者だよ。LTCのジャズにもラテンやサンバ風の味付けがされているが、このクールさが理解できるかな。これは次世代ジャズ・ファンのためのEPだな。
http://www.jazzitalia.net/recensioni/hikmet_eng.asp
http://www.ricky-tick.com/

STUDIO VOICE 日本のグラフィック・デザイン再考! グラフィック・デザイン・オーソリティーズ 50'S-80'S


いま発売されているスタジオ・ヴォイス「日本のグラフィック・デザイン再考」に、70年代後半から80年代中期にかけてボクがエディトリアルした「ロックマガジン」での、ブックデザインを"ばるぼら"氏が高く評価して取り上げてくださっている。(80年に工作舎から戸田ツトム、松田行正氏のエディトリアルによって刊行されたボクの単行本「rock-end」も写真入りで取り上げてくださっている)。この特集を読んでいると、あの頃、暗室に入ってひとりで写真などを紙焼きしたり、打ち上がってきた写植をカッターナイフで切りながらレイアウト用紙にペーパーボンドで貼付け1ページ1ページレイアウトしながら雑誌作りしていたことを思い出す。デザインに関することなどなにひとつ学んだこともなく、罫線すらきれいに引けなくて、すべてが手探りで、いまのようにMACでもあれば、もっとカッコいい雑誌が作れただろうにと、ただ当時の先端音楽から触発されたイメージや感性と、使命感のような衝動だけで作業していた。でもこうしていまボクのブックデザインを高く評価してくださったことは嬉しい限りである。近いうちに新しい雑誌のエディトリアル・ワークも始めようかなと考えていた矢先のことで、ありがとう。

2007年06月19日

Listen in total darkness,or in a very large room,very quietly

ARCHIVE 2
「MO WAX」

MO WAXは90年代初期にUKのJames Lavelleによって設立されたレーベル。初期の作品はすべてといっていいほどのものを所有しているが、そのなかでも個人的にはMassive Attackの3Dがジャケットデザインを手掛けている96年にリリースされた「VA/HEADZ2-PartA」と「VA/HEADZ2-PartB」が最も気に入っているかも。あれから10年という歳月が経っているけれど、アブストラクト・ヒップホップやジャジー・ヒップホップをDJイングするならいまでも充分使えるほどの遜色のないグルーヴが収録されている。このレーベルの終末の98年のUNKLE、99年のQUANNUM、BLACKALICIOUS、DICINE STYLES、2000年のNIGOなどのサイバーなヒップホップ寄りのグルーヴにちょっと飽きがきて、それ以後のこのレーベルでの音楽を聴いていないが、いま振り返れば当時すでに21世紀のストリートカルチャーを予言していて、このスタイル/グルーヴを越えるヒップホップなどいまも表出していない。それほどアブストラクトでアバンギャルドな先駆的運動を展開していた。

HEADZ2
●VARIOUS/HEADZ2 PART A
(MO WAX MW016LP)
DJ KRUSH、NIGHTMARES ON WAX、AIR、STEREO MC、UNKLE、DJ FOOD、URBAN TRIBE、TORTOISE、INNERVISIONSなどの35曲がOBJECT D'ARTといわんばかりのハードボックスケースに入れられた4枚組LPに収録されている。96年発売。現在のMADLIBやYESTERDAY NEW QUINTETやSTONE THROWなどの音楽に繋がるジャジー/アブストラクトなヒップホップの原点/鋳型がすべてここにみられる。当時はトリップホップからアブストラクト、あるいはドラムンベースの流れを受けてこうした音楽は表出してきたのだが、このダウンな暗さが堪らなく素敵だった。当時ボクはこうした動きからニューヨークのファットジャズ・レーベルのようなジャジーなヒップホップへと変遷していき、現在のnu jazzやHard Bopまでたどり着いたというわけである。

●VARIOUS/HEADZ2 PART B(MO WAX MW062LP)
part bもまた4枚組ハードケースに入れられ96年発売。THE PRUNES、LUKE VIBERT、MONEY MARK、ATTICA BLUES、PARMSKIN PRODUCTIONS、PESHAY、AS ONE、BLACK DOG PRODUCTIONSなど当時のUKを核に表出してきた新興ユニットの動きを34曲収録。part aと比較するとより"ジャズ的なる"アブストラクトが収録されているように思え、個人的にはこのpart bのほうが好みだ。

●HEADZ2 SAMPLER(MW052)
96年発売。トラックAにはZIMBABWE LEGITの「Shadow's Legitimate Mix(1991)」が、トラックBにはDJ KRUSHの「Kemuri('94 Part 2)」が収録されている。
●HEADZ2 SAMPLER(MW054)
96年発売。トラックAにはURBAN TRIBEの「Covert Action」がCarl Craigミックスで、トラックBにはLOの「Fi Sensiblities-Cabin Fever」が収録されている。

EXCURSIONS
●THE PRUNES
/The Plot(MWEX 001)
●IO/Claire(MWEX 002)
Excursionsシリーズとして96年に10枚発売されていたもので、初期は緑色の限定盤ボックスケースに入れられ発表されていた。この2枚の他にDJ SOLO & AURA「Take Heed」、MIDNIGHT FUNK ASSOC.「Fire Scratch」、DJ SHADOW「Chief Xcel」、STASIS「History of Future EP」、SOLP「Pressure」、TWIN BUD「Harry's Law」などが発表されていた。どれもが暗くダウンなアブストラクト・ヒップホップ、トリップホップといえる作品である。

DJ SHADOW
●DJ SHADOW/ENDTRODUCING.....
(MW059)
●DJ SHADOW/Midnight in Perfect World+The number Song(FFRR/MO WAX162-531 084-1)
96年発表のこの2枚組アルバムのサイドCに収録されている「ORGAN DONOR」は、彼を代表する名曲といわれているが、久しぶりに今聴いてもポストロックとしての破壊的美しさを持っていて感動させられる。ブレイクネタを多用し、サンプリングを駆使したDJシャドウ(ジョシュ・デイヴィス)のこのアルバムで聴かれる音楽こそ90年代DJテクニックの見本であり、DJカルチャーのピークを証明するものだ。ジャケット写真に使われているレコードショップでアナログレコードを買い漁るヴィニール・ジャンキーの姿こそ、DJカルチャーを象徴したものである。そういえばクラブカルチャーの衰退と比例して、こうしたヴィニール・ジャンキーもいなくなったな。このアルバムは永遠不滅の名盤である。EP「Midnight...」は97年にUSA/ffrrからシングルカットされたもの(MO WAXからはMW057で収録されているヴァージョンは違うが同名のEPが96年に発売されている)。このジャケット写真での棚にギッシリと詰め込まれた7インチシングルを見て、心躍らなかったらDJなんてやめな!

●DJ SHADOW/STEM(MW058)
サンフランシスコ特有のサウンドスケープ=美しいメランコリックなアブストラクト・ヒップホップだ。96年に発表された7インチシングル。
●DJ SHADOW/HIGH NOON(MW063)
スラッシュメタルとパンキッシュなグルーヴさえ持つハイ・ヌーンという曲を聴くと、これこそがロックの現在形の音楽だと納得するだろう。いまやロックはダサい8ビートになどないのだ。リアルなロックはDJシャドウのアブストラクト・ヒップホップにある。サイドBの2曲目でExtended Overhaulされた「ORGAN DONOR」が聴ける。

DJ KRUSH
●DJ KRUSH/Meiso
(MW039LP)
残念だがDJ KRUSHの『Strictly Turntablized』は聴いていない。そのアルバムに続いて発表されたDj Krush 96年の3枚目。Dj Shadowとの共作"Duality"をはじめ、C.L. Smooth、Black Thought、Big Shug、Guruらが参加していて、アブストラクトなサウンドに突き抜けるラップ、サンプルが交錯する。現在のアブストラクト・ヒップホップへと続く道を最初に切り拓いたのはボクはDJ KRUSHだと思う。ラップ的なヒップホップはどうも性に合わないタイプなのだが、このアルバムを最初に聴いた時には、未知のクールなヒップホップ・グルーヴに驚いたものだ。 
●DJ KRUSH/HOLONIC THE SELF MEGAMIX(MW088LP)
グーグルしたらこのオリジナル・アルバムを知っている人がまるでいないのには驚いた。当時モ・ワックスの音楽をリアルタイムに聴いていたクラバーが数少なかったことが、こうしたことでも判明する。キミがヒップホップDJなら、このMO WAXから聴き直したほうがいいんじゃない。レコードショップで最初このアルバムのジャケット写真でのトイレの入り口のタイル壁にスプレーによってエアロゾールされたFUTURA2000によるカラフルなグラフィティを見たときには、衝撃的な感動を受けたのをおぼえている。

MIKE MILLES
●A VISUAL SAMPLER/Posters By MIKE MILLES
(MWA001)
90年代からアメリカのグラフィックシーンの一翼をになってきたマイク・ミルズのポスター、スティッカー、ポストカードなどが収められたヴィジュアル・サンプラー。スケボーを原点としソニック・ユース、チボ・マット、ビースティ・ボーイズ等のアルバムジャケット、X-Girlのビジュアルワーク、ロゴ、他にもミュージシャンのジャケットを多く手掛けている彼は、自らもバンド、映画製作など幅広く活動しているアーティスト。「Gas Book 11 - Mike Mills」という書物や「Let's be human beings」というDVDヴィデオ作品集なども発表されている。彼もまたその作品に一貫して流れているのは、50-60年代のモッズ精神である。マイク・ミルズの作品をこうした形で発表するMO WAXレーベルもまた"生き方/生活様式"としてのモッズ精神であるのは当然のことである。

FUTURA
MO WAX レーベルを語るには、その音楽の先駆性も勿論だが、ジャケットにみられるFutura、3D(Massive Attackからの)、およびReq1などによるアートワークの秀でた芸術性だろう。特にFUTURA2000は、1955年ニューヨーク生まれのGROOVES WORLD WIDE CONNECTIONの一人で、 60年代後半の第一期サブウエイ・ グラフティ・ シーンやキース・ヘリング、バスキアなどの活動に影響を受けてアートワークを始めた人物で、 1979年にはアーティストネーム「FUTURA 2000」(現在はFUTURA)の名でアメリカ、ヨーロッパ等世界各地で個展を開催し、グラフィティ界から「SPRAY CAN WIZARD」(スプレー缶の魔術師)と呼ばれ、アートシーンではトップクラスの地位を築いている。また、FUTURA自ら、THE CLUSHをバックバンドに従えてのレコード制作や、ミュージシャンのレコードジャケットのアートワークを担当したり、そのグラフィティはTHE NORTH FACEでのジャケット、テント、スリーピングバッグや、他には自転車などのプロダクト・デザインにも使われるなど様々な分野で活動を行っている。MO WAXの音楽にも言えることだが、彼のグラフィティはストリート・アートのスプレーやマジックなどを使い、壁や地下鉄車両などに描かれた絵・文字などによるダギング、落書きのようなもので、エアロゾールともいうが、それはヒップホップ四大要素の一つでありラップ(MC)、DJ、ブレイクダンス、グラフィティによって構成される。まあダギングと呼ばれる街のあちこちに見られるスプレーペンキで描かれた落書きの一種を、レコードジャケットに使いアート(この言葉はボクにとっては死語で、使うのも恥ずかしい)に高めたFUTURAの功績は大きい。いまでは彼を現代のカンデンスキーと呼んでいる。
http://www.futura2000.com/
http://www.unkle.com/
http://www.futuralaboratories.com/
http://www.unkle77.com/

MO WAX レーベルはこれで終われないので、この続きのATTICA BLUES、INNERZONE ORCHESTRA、LIQUID LIQUID、MONEY MARK、後期のUNKLEなどは近いうちに。

2007年06月24日

Listen in total darkness,or in a very large room,very quietly-2

6/19に続く「MO WAX」レーベルARCHIVE

ARCHIVE 3
MO WAX-2

LIQUID LIQUID
81年に NYの「99」レーベルから3枚のシングルをリリースしていた LQUID LIQUIDの作品をコンピレッドして97年にWO MAXから再リリースされたアルバムと12インチシングル2枚。80年代初頭といえばニューヨークではトーキングヘッズ、「ZE」でのジェームス・チャンス+コントーションズ、LIZZY MERCIERなど、ロンドンでは「Y」レーベルでのPIGBAG、リップリグ・パニック、マンチェスターでは「ファクトリー」でのア・サーテン・レシオなどなど、当時のNEW WAVEの波を受けてファンキー・パンクとでも形容したい新たなダンス・ミュージックが数多く表出していた。80年代後半ー90年代にかけてのクラブカルチャーの始まりは実はこうしたNEW WAVEの表出と共に始まっていたのだ。「CAVARN」リミックス盤ではすでにスクラッチが使われている。NEW WAVEの本来の意味は、こうしたパンキッシュで実験的なダンスミュージックのことを指して言ったのだ。決してテクノポップやポップミュージックのことではない。
RIQUID RIQUIDのメンバーはSCOTT HARTLEY(Drums、Percussion、Talking Drum)、ICHARD MCGUIRE(Bass、Percussion、Piano、Alarm Bell、Guitar、Melodica)、SALVATORE PRINCIPATO(Voals、Percussion)、DENNIS YOUNG(Marimba、Roto Toms、Percussion)の4人から成り、このパーソネルをみてもマリンバのサウンドを基調にした多律動なパーカッション、リズム主体の音楽を展開していることが解るだろう。以前You TubeではLiquid Liquid の Cavern という曲がノーマン・マクラーレンと並ぶ実験アニメーションの始祖の一人オスカー・フィッシンガー(Oscar Fischinger)の1927年作品「酔っぱらい幻想(Spiritual Constructions)」が使われ流されていた(jaz' room nu thingsではすっかりおなじみの映像だが)。ほんとの音楽センスのいいオーディエンスとはRIQUID RIQUIDのような音楽を人知れず聴いている人のことを言うのだろう。

●LIQUID LIQUID/LIQUID LIQUID(MO WAX MW078LP)
●LIQUID LIQUID/CAVERN(The Cut Chemist Rocks A Rave In A Missile Silo Remix)+SCRAPER(Psychonauts Remix)(MW091)
●LIQUID LIQUID/Bell Head(Harvey's Liquid Head Re-Edit)(MW096)

MONEY MARK
MO WAXからリリースされた5枚の作品を聴いていると、FCQのドラマーでもあるテッポ・マキネンの「TEDDY ROK7」の音楽に直結していることをなぜか嬉しく思う。こうした音楽を聴いていた人間が時間の経過のなかで、いまや同じジャズの土壌で共通の志向や感性を持っていることの確認できることが嬉しいのだ。さて、マニー・マークは日系のハワイアンの父に持つデトロイト生まれで6歳に西海岸に移り住む。本名をマーク・ラモス・Nishitaという。以下は「push production」のアーティスト・ページには明解なマニー・マークのプロフィールが掲載されてあったので無断で抜粋/引用させてもらった。
『ビースティ・ボーイズの第4のメンバーとして知られたマニー・マーク。95年にMo'Waxから傑作デビュー・アルバム"Mark's Keyboard Repair"をリリース。「孤高の天才キーボーディスト」の登場に、世界中が騒然、瞬く間にメディアや音楽ファンの注目を一身に集める存在となる。続いて発表された"Push the Button"(98年)では、マークのボーカルをフィーチュアしたメロディアスな楽曲の数々と、ファースト・アルバムをはるかに凌ぐプロデュース・ワークの巧妙さで、キーボーディストとしての認知を大きく塗り替え、一躍「オルタナティヴ界最高のサウンド・プロデューサー/メロディー・メイカー」として確固としたポジションを確立することになる。騒然とする周囲を嘲笑うかのように、続いてリリースしたのが"C
hange Is Coming"(2001年)で、そのタイトルが示すとおり、これまでとは趣を異にする全編インストで構成されたアルバムであった。"Change Is Coming"のリリース後、自宅スタジオで次なるステップへ向けて黙々とレコーディングを続けてきたマークは、その間、映画やテレビのサウンド・トラックへの楽曲を数多く手がけることになる。もはや、マニー・マークは、本国アメリカではトップ・クラスのサウンド・プロデューサーとして知られる存在にまでなっているのだ。ジョニー・デップ&ペネロペ・クルス主演の「Blow」のサントラをマークが手がけたのは、大きな話題になった。それ以外にも、HBO(ケーブル・チャンネル)の「Family Bonds」というテレビ・シリーズのサントラを手がけており(米9月に放送)、「Along Came Polly」というベン・スティラーとジェニファー・アニストン主演の映画にも曲を提供し、さらには劇中のバンドのギタリストとしてゲスト出演もしている。そして、なんと現在制作中のレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのザックのソロ・プロジェクトには、キーボーディストとして全面参加。自身の作品以外にも、大きな話題となるコラボレーションが続々と登場している。』
http://www.moneymark.com/
初期のお宅的な風貌からいまではすっかり成功したミュージシャンならではの個性的な顔立ちに変貌している。

●MONEY MARK/MARK7S KEYBOARD REPAIR(MW034LP)
●MONEY MARK/THIRD VERSION E.P.(MW043MLP)
●MONEY MARK/MAYBE I'M DEAD(MW089)
●MONEY MARK/PUSH THE BUTTON(MW090)
ここでは省略しているが「Hand in Your Head」(MW066)というEPも98年にリリースされている。

SUKIA
96年発売の2枚組「コンタクト・エスペシャル・コン・エル・テーサー・サクソ」を聴いていると、チープなリズム・ボックスとサイケでスペイシーなムーグ・シンセとオルガンの音色がモンドとしての冗談っぽさを加味させていて、ここまで音楽で諧謔されると真剣に音楽を聴いていることのバカらしさすら感じる。ノイズやスカムの果てにきみが狂いたいなら、これしか残されていないんだよな。でもモンドには「粋」と「クールなエキゾチシズム」がなけりゃ、単なるバカ音楽だよ。

SUKIA/CONTACTO ESPACIAL CON EL TERCER SEXO(MW073)
SUKIA/GARY SUPER MACHO(MW081)

ATTICA BLUES
72年にIMPULSEからリリースされたArchie Shepのアルバム「Attica Blues」からとったというAttica Blues(アッティカ・ブルース)。ドラムンベースやトリップホップ/アブストラクト・ヒップホップを核にしたエジプト生まれの女性ヴォーカリストRobaを中心に据えた男女3人組ユニット。もしキミが当時、70-80年代のブリティッシュ・ロックのアイデンティティに固執して必死に情報を探していたなら、必然的に90年代はこのアッティカ・ブルースの音楽を聴いていただろう。だけど"失われた10年"というスッポリ抜け落ちた時代背景のなかで誰も情報を掌握していなかった。情報というのはサバイバルするための最も重いツールだからね。リアルタイムに掌握してこそ生かしも殺しもできるんだ。このMO WAXだってそうだ。クラブ・ミュージックという前にポストロックとしての意味合いが大きい。こうしたアッティカ・ブルースの流れは、いまではシネマチック・オーケストラなどに繋がっているんだ。

●ATTICA BLUES/ATTICA BLUES(MW080LP)
●ATTICA BLUES/3REE( A Means To Be)(MO WAX MW079)
97年リリース作品。ShowbizやAntipop ConsortiumやA2ではAs OneことKirk Degiorgioによるリミックス盤。
アッティッカ・ブルースのダウンでメランコリックな「ブループリント」や「テンダー」を久しぶりに聴いて、90年代中期のあの暗い世相を思い出した。そして未だ病んでるキミのことも。(人生なんて神が与えてくれたひと時の暇つぶしなんだ。楽しいことしなきゃ)。彼らは他にも4枚のEPを発表している。
ATTICA BLUES/BLUEPRINT(MW038)
ATTICA BLUES/BLUEPRINT REMIX(MW038R)
ATTICA BLUES/TENDER(MW067)
ATTICA BLUES/TENDER REMIX(MW067R)

ANDREA PARKER
磨り硝子のような半透明の紙に包まれた2枚組LP、ANDREA PARKER「KISS MY ARP」は1999年作。アンダーグラウンドのビョークというほど癖のあるヴォーカルではなくリリシズム溢れたポストロックとしてのインダストリアル・テイストあるアブストラクト/音響系サウンド。MO WAXからリリースされたもの以外の作品は聴いたことないが、最近では07年にも「Here's One I Made Earlier」などの作品を発表している。プロデューサー、サウンドメイキングなどすべてひとりで行う才女でもある。

●ANDREA PARKER/MELODIOUS THUNK(MW040)
●ANDREA PARKER/THE ROCKING CHAIR(MW045X)
●ANDREA PARKER/KISS MY ARP(MWR099LPX)
●ANDREA PARKER/THE UNKNOWN(MWR098)

LUKE VIBERT
90年代を通じてWagon ChristをはじめAmen AndrewsやPlug、Kerrier Districtなど主にドラムンベース/アブストラクトの作品を数多くリリースしていたLuke Vibert本人名義による1stアルバム。『Big Soup』のリリースは97年。ビートの魔術師と言われ、ここでのブレイク・ビーツ曲の数々は現在の彼の音楽に繋がるサイバー・エレクトロニカな世界が描かれているといえよう。彼の作品で最も印象的だったのは、95年にライジング・ハイ・レーベルから「Plug1-Visible Crater Funk」や「Plug2-Rebuilt Kev」「Plug3-Versatile Crib Funk」などの作品をピークに「DRUM'N 'BASS FOR PAPA」などをリリースしていた頃だろう。最近の作品はまるで聴いていないが、当時サンプリングを駆使し60ー70年代のムードミュージック、イージーリスニング、ジャズなどの素材をジューサーにかけるごとくエディトリアルし独自のドラムンベース・スタイルを構築した彼の存在はダントツに輝いていた。

●LUKE VIBERT/A POLISHED SOLID(MW035)
●LUKE VIBERT/DO UNTO OTHERS(MW071)
●LUKE VIBERT/BIG SOUP(MW027LP)

INNERZONE ORCHESTRA
MO WAXからのリリースではないが、Carl Craigの99年の作品10インチ4枚組の「PROGRAMMED」は大きなターニングポイントだった。それは現在のジャズのフィールドに向かう最大の契機を与えてくれた重要な作品だった。その後、カール・クレイグはHancockの「Future 2 Future」にも参加していたが、96年のMO WAXでの2枚の作品「BUGIN THE BASSBIN」を聴いたことによって、「ジャズ的なるもの」の試行が始まったといっていいだろう。ロック的な過去の音楽へのしがらみや未練をすっぱりすべて捨て去り淘汰できたのもこのINNERZONE ORCHESTRAの2枚のEPがあったからだった。記憶は不確かだが10インチでMO WAXから発表されたこのシリーズものも持っていたように思うが、レコード資料室で見つけられなかったので今回はパス。

●INNERZONE ORCHESTRA/BUGIN THE BASSBIN(MW049)
●INNERZONE ORCHESTRA/BUGIN THE BASSBIN-REMIX(MW049X)

UNKLE/QUANNUM

●UNKLE/BERRY MEDITATION(MW096)
●UNKLE/RACCIT IN YOUR HEADLIGHT(MW103)
●UNKLE/PSYENCE FICTION(MW085)
●QUANNUM/SPECTRUM(MWR110LP)
MO WAXからは他にもBLACKALICIOUSの「A2G EP」(MWR109)、「NIA」(MWR112LPX)、NIGO「APE SOUNDS」(MWR129LP)、DIVINE STYLES「WORDPOWER2:DIRCTRIX」(MWRLP122)、DJ MAGIC MIKE「THE JOURNEY ERA OF BASS PART 1」(MWR121LP1)などなどや、LA FUNK MOB「Casse Les Frontieres,For Les Tetes En L'air」(MW023)、PESHAY「Miles From Home」(MW092)、URBAN TRIBE「Eastward」(MW065)、AS ONE「Planetary Folklore」(MW083)、DR.OCTAGON「Dr. Octagon」(MW046LP)などもあるけれど、ここで全て掲載したいけれどこれくらいにしておく。詳しくはボクの出版した「INFRA vol.1/future talk about days of iberian blue」にすべて掲載してあるので、古本屋で探してチェックするか、近いうちに平日、jaz' room nu thingsでListening roomの日を設けるので興味ある人はレコードでも聴きにきてください。

10-7年も前の古いレコードを再び聴き、こうしてアーカイヴするのは、ボクにとっては"今更・・"といった感じで、それほど愉快なことではない。あの頃先端だった音楽も10年もすればいつの間にか大衆に下りていきメジャーな音楽になっているというのが大概の筋書きなのだが、MO WAXはどうなんだろう。いまではハードコアのような音楽をやってるUNKLEぐらいだろうか。振り返れば90年代中期というのは大震災、オームや神戸少年A事件などなど、ほんとに暗い世相だった。現在30代後半から40代の音楽ファンが当時この周辺の音楽を聴いていたら、きっといまの音楽シーンも変わっていただろう。ネットでGoogleしてもMO WAXの資料や情報が少ししか検索にひっかかってこなく、見事にすっぽりと90年代の音楽情報だけが抜け落ちている。少しは音楽ファンのためになるなら、90年代の音楽情報をこうした形で書き留めておいてもいいけれど、あまり反響がないようなら、これでやめようと思っているが・・・。ところで最近のクラブシーンは大きな変換期にきている。ナイトプレジャーという言葉があるが、朝までクラブで遊ぶことがとても居心地の悪いカッコ良くない時代になっていて、若者たちの勢いの無さをみていてもクラブカルチャーの時代も愈々終わったなと感じることが多い。(朝早くから夜の残業まで一日中会社に拘束されているんだから、そりゃクラブ遊びなんて不可能だよな。ご苦労なことだ)。おそらくこれからは、クラブよりもOLやリーマンが集うディスコの時代が再び訪れるのだろう(笑)。なんと言ってもこのニッポンはどこを見渡してもサラリーマン、サラリーマンのサラリーマン天国だからね。

TIMO LASSY/THE SOUL & JAZZ OF TIMO LASSY(RICKY-TICK/COCB-53656)

さて、アナログはまだ発売されていないので、CDでニッポンのみ先行発売されたTIMO LASSYの「THE SOUL & JAZZ OF」を買った。この太くてソウルフルなジャズは、クラブジャズと本来のジャズの間にある高い境界を超える初めての作品と言えるかも知れない。FINN JAZZも愈々面白くなってきたね。今日はこれでも聴いて寝ることにするよ。

2007年06月29日

Make a sudden,destructive,unpredictable action;incorporate

BLUE NOTE-1

「イントロダクション」
「都市は熱いシャワーのようなジャズそのものであった」

50-60年代のブルーノートの中古アナログ盤には手に入れにくいものが何種類かある。それはニッポンでドメスティックに発売されなかった輸入盤でしか出回らなかったものや、反対に海外ではお蔵入りになってニッポンだけで限定発売されたもの、ほかにはソウルジャズ、フリージャズなどである。当時のジャズファンはスタンダードなジャズは聴くが、ちょっとファンクやソウル、フリー色が鼻につくとジャズじゃないとして聴かなかった。当時のジャズファンがジャズの本質を見抜いていたのかどうか疑わしいが、60-70年代の時代背景を反映した"ジャズから文学へ、文学からジャズへ"といったような、文学的な文脈での言語耳で聴いていたのに違いない。それは現在のジャズミュージシャンのスタンダード・ジャズしかやれない感性とよく似ている。作家の中上健次は81年発行の「音楽の手帖/ジャズ」のなかで当時のジャズについて「シャワーとしてジャズを浴びながら、その時自分のものの考え方が壊れていくというのがとてもうれしかった。ど田舎から出てきた人間にとって、シャワーとしてジャズを浴びることは自分がものすごく自由になっていくという感じと、ぶっ壊れていく感じが入り混じっているんだな。」と語っている。残念なことに現在、ジャズにはそうした破壊的な要素は微塵もない。しかし当時の「都市は熱いシャワーのようなジャズそのものであった」という言葉にはなぜかそそられる。都市→熱いシャワーのようなジャズ→というのを再現することは音楽で可能だ。このコピーは今後のクラブ系ジャズが変遷していく過程で生まれる新しいジャズの文脈のなかでも充分活用できるだろうし、我々が現在のクラブ系ジャズを含めてのすべての「ジャズ的なるもの」の音楽に最も欠落している言葉かも知れないね。さて、まずは「イントロダクション」として、これまでに買った入手困難だったレコードを12枚紹介します。今後は定期的にまずブルーノートのレコードをボクなりにコンパイルしていき、そのことでジャズの新しい概念作用が生まれ一歩でも前進できたらと考えています。

1.BOBBY HUTCHERSON/STICK-UP!(BLUE NOTE BST84244)
以前に紹介した1966年の作品『Happenings』は、1967年のダウンビート誌読者投票でベストアルバムに選ばれた作品でHutchersonの代表作と言われている。まずあの極彩色ピンクのジャケット写真がモダンでカッコ良かった。その『Happenings』と同じ1966年の録音だが全く異なるメンバーで録音された作品が本作『Stick-Up!』。Bobby Hutcherson(vib)、Joe Henderson(ts)、McCoy Tyner(p)、Herbie Lewis(b)、Billy Higgins(ds)によるアルバム。HutchersonのヴァイヴとHendersonのテナーの絡みによるラテン・テイストのファンキーでスタイリッシュな演奏が聴ける「Una Muy Bonita」などクラブジャズ好きの人間の感性にも充分耐えうる音楽を展開している。ヴァイブという楽器はなによりもこの時代を象徴するもので、スリリングな軽いしゃれた音色はたまらない。この秋までにはjaz' room nu thingsで、ヴァイブをフィーチャーしたジャズユニットだけのイヴェントをオーガナイズしようと考えている。BOBBY HUTCHERSONは他にも「Oblique」、「Patterns」、「Dialogue」「Live at Montreux」などの数枚の作品をブルーノートからリリースしている。

2.LARRY YOUNG/into somethin'(BST 84187)
ハモンドによるモーダルなジャズにアプローチし、オルガンのコルトレーンと言われたラリー・ヤングのプレイにジミー・スミスのようなコテコテさはない。Newarkで40年に生まれNew Yorkで78年に38歳で死去したというから、この時代のジャズミュージシャンはほんとに若い才能が一瞬に燃え尽きるように短命だった。このアルバムは64年発表で、Sam Rivers(tenor sax)、Grant Green(guitar)、Elvin Jones(drums)がレコーディング・メンバー。Francis Wolffの写真、Reid Milesのデザインによるフューチャリスティックなジャケットは、ブルーノートを象徴するモダンなもので、それだけでボクの心をくすぐる。サイドA2曲目「Plaza De Toros」でのラテン・チューンはもはやクラブジャズの定番といった感のあるグルーヴ。

3.JACKIE McLEAN/DEMON'S DANCE(BST 84345)
A面1曲目の「Demon's Dance」、3曲目のWoody Shawの曲「Boo Ann's Grind」、B面3曲目「Message From Trane」などは当時モードと言われていた曲らしいのだが、そうかな? ボクはハードバップだと思うけどな。そしてクラブジャズ定番のボサノバ・グルーヴB面1曲目「Sweet Love of Mine」など、このアルバムはボクがDJイングしている"Hard Swing Bop"での現在の基調となるグルーヴ。ちょっとオーソドックスな流れからはみ出そうとするマクリーンのフリーフォームなアルト・サックスが緊張感を生み、DJイングしていても愉しい。67年リリースのこのアルバムでのパーソネルはWoody Shaw(Trumpet & Flugelhorn)、LaMont Johnson(Piano)、Scott Holt(Bass)、JackDeJohnette(Drums)。

4.ART BLAKEY & THE JAZZ MESSENGERS/INDESTRUCTIBLE!(BST 84193)
アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの64年録音のブルーノートでの最後の作品。リー・モーガンのトランペット、カーチス・フラーのトロンボーン、ウェイン・ショーターのテナー・サックス3管による超カッコいいハードバップが凝縮され収録されている。それこそタイトル通りの「不滅!」という言葉に相応しい名盤。クラブジャズの先端はまだFINN JAZZやnu jazzの領域で右往左往していて、こうしたハードバップにまでは到達してはいないが、いつかスキルと感性を併せ持った20代前半の若い次世代ジャズミュージシャンが現れ、こうしたハードバップ・ジャズを繰り広げてくれるだろうと期待しているのだが。このアルバムも"HARD SWING BOP"になくてはならない大事なレコードの1枚。他のパーソネルはCedar Walton(Piano)、Reginald Workman(Bass)。

5.LEE MORGAN/THE SIXTH SENCE(BST 84335)
67年の作品。ブルーノートのなかでも最も人気の高いのがリー・モーガンだという。このアルバムも買った頃に比べるとオークションではずいぶん高く売られるようになったなあと思う。ブルーノートの作品はこの7年ほどかけて95%くらいは買い集めたけど、このあたりの音楽に興味あるなら、いまのうちに買っておくのが賢明かも。ジャズというと"おっさん"の音楽と思い込んでいるだろうが、当時ブルーノートのジャズミュージシャンは既に10代でリーダー・アルバムをリリースしていている神童と呼ばれるアーティストも少なくなく(このリー・モーガンもそのひとりだが)ジャズは本来若者のための音楽だったのだ。パーソネルはJackie McLean(Alto Sax)、Frank Mitchell(Tenor Sax)、Ceder Walton(Piano)、Victor Sproles(Bass)、Billy Higgins(Drums)。ハードバップが好きならこのリー・モーガンから始められるといいだろう。

6.GRACHAN MONCUR III/EVOLUTION(BST 84153)
63年発表の「Evolution」は、ピアノ・レスという珍しい編成だが、それを埋めるものとしてボビー・ハッチャーソンのヴァイブが音空間の広がりとコードを押さえる役割も担っている。リー・モーガン、(Trumpet)、ジャッキー・マクリーン(Alto Sax)、トニー・ウィリアムス(Drums)、ボブ・クレンショー(Bass)というパーソネルによる録音でグラシャン・モンカー三世のブルーノート・デビュー作。内容も63年の録音ということでもフリーを少し意識した新主流派という硬派なもの。リー・モーガンがこのアルバムでの演奏をベストプレイに挙げているのも興味深い。モンカーの先進的な音楽はこれだけに留まらなく、翌年の「Some Other Stuff」では、Wayne Shorter(Ts)、Herbie hancock(P)、Cecil McBee(B)、Tony Williams(Ds)によるダイナミックなフリー・ジャズ空間を構築し続けていた。サイドBの「The Coaster」は変形したハードバップ+ラテン的な曲だがこの曲や「Monk In Wonderland」などの変形ハードバップ曲は"Hard Swing Bop"では単調になりがちなグルーヴに変化をつける時に使っている。

7.DONALD BYRD/"MUSTANG!"(BST 84238)
66年の作品。いまHard Bopに焦点をあて情報を下ろしていくために敢えてこのドナルド・バードのアルバム「Mustang!」でも、A2の「Fly Little Bird Fly」、B3「I'm So Excited by You」のようなスピード感ある曲を選んでいるが、これが終わればソウルジャズやファンキーなジャズを素材にして、この時代にあった新しいコンセプションも構築しようと考えている。このアルバムのパーソネルはSonny Red(Alto Sax)、Hank mobley(tenor Sax)、McCoy Tyner(Piano)、Walter booker(Bass)、Freddie Waits(Drums)。ドナルド・バードにしては60年代モダン、モード的なジャズを展開しているアルバム。

8.STANLEY TURRENTINE/HUSTLIN'(BST 84162)
ソウルジャズのキングといってもいいほどのファンキーでブルージなテナー・サックス奏者スタンリー・タレンティンの音楽はジャズのルーツであるブルースとブルーブに対する情熱からきていると言われている。60-70年までの間にブルーノートに20枚をこえる作品を残しているし、このレーベルの大看板ミュージシャンでもあった。このアルバムは元妻であったシャーリー・スコットのオルガンをフィーチャーしたソウルジャズで彼の音楽スタイルの多くはオルガンとのコンビネーションから生まれたものが多い。CTIからも「Salt Song」などの作品も発表している。Shieley Scott(Organ)、Kenny Burrell(Guiter)、Bob Cranshaw(Bass)、Otis Finch(Drums)。

9.BIG JOHN PATTON/OH BABY!(BLP 4192)
ブガルーの「Fat Judy」から始まるJohn Pattonのこのアルバムを聴いていると、ハモンドB-3の黄金時代と90年代初頭のAcid jazzをつないだ人だというのがよく解る。彼のオルガンはブルージではあるのだが明るくポップで跳んでいるのだ。彼の名前がBig Bad Johnというポップソングの題名からきているのも、なんとなく頷ける。 Johnは1935年7月12日にカンザスシティーで生まれ、母親は彼にピアノを始めさせ演奏の基礎などを独学によって習得させた。そのことによって幸いにも独自のオルガン・スタイルを生み出したと言えよう。 前にも触れたがコテコテの音楽はどうも苦手なボクが珍しくオルガンではこのJohn Pattonが最も好きで、それはどこかに突き抜けたクールな軽やかさがあるからだろう。パーソネルはBlue Mitchell(trumpet)、Harold Vick(Tenor Sax)、Grant Green(Guitar)、Ben Dixon(Drums)。

10.LOU DONALDSON/THE NATURAL SOUL(BST 84108)
ブルー・ノートを代表する人気アルト・サックス奏者ルー・ドナルドソンの'62年の作品。パーソネルはTommy Turrentine(Trumpet)、Grant Green(Guitar)、John Patton(Organ)、Ben Dixon(Drums)。オルガン奏者John Pattonはこのアルバムが初レコーディング作品。A1の"Funky Mama"は有名な曲だが、ハードバップ黎明期から活躍しているだけあって、他の曲にはあちらこちらにハードバップ・テイストのグルーヴが聴こえる。ドナルドソンは最終的にはファンキー&ソウルフルな傾向が強まりソウル・ジャズの人気アーティストとしてのイメージが強いが、個人的には57年の「Lou Take Off」での渋いハードバップが気に入っている。ソウル・ジャズ時代には1967年のアルバム『アリゲーター・ブーガルー』が大ヒットした。彼もまた初期のクラブジャズ系のリスナーに大いに支持されたジャズ・サックス奏者だ。

11.BENNIE GREEN/SOUL STIRRIN'(BST 81599)
ジャズ・トロンボーン奏者、ベニー・グリーンのこのアルバムでのソウル、マンボ、ブルースなどでカラフルに彩られスウィングする世界は、ブルーノートでのマイベスト10に入るほどのFavorite Album。なんと言ってもA1の「Soul Stirrin'」やA2の「We Wanna Cook」でのバプス・ゴンザレスのスキャット/マーチ風のヴォーカルが妙なエキゾチシズムを醸し出していて気持ちいい。他のブルーノートからの作品「Back On The Scene」「Walkin' and Talkin'」も気負いのないトロンボーンで癒し系ジャズでそれなりだが、この58年録音の「Soul Stirrin'」だけはロマンティックなジャズで特別推薦。パーソネルは'Jug"and Billy Root(Tenor Saxes)、Sonny Clark(Piano)、Ike Isaacs(Bass)、Elvin Jones(Drums)。

12.IKE QUEBEC/BOSSA NOVA SOUL SAMBA(BST 84114)
アイク・ケベックは、1917年8月17日、ニュージャージー州ニューアーク生まれで、ミュージシャン以外にもスカウトマンの顔も持っていてバド・パウエルもセロニアス・モンクも彼が発掘したアーティストだという。ドラッグに手を出し一時はこの世界から消えたが50年代末に復活して、ブルーノートに「Heavy Soul」、「It Might As Well Be Spring」、「Blue and Sentimental」「With A Song In My Heart」などの作品を残している。このアルバムは1962年の録音、その2ヶ月後の63年肺ガンのためなくなった彼の最後の作品。ここではローリンド・アルメイダやケニー・バレルのオリジナル、そしてドボルザークの『家路/Going Home』などを取り上げている。イージーリスニング、ムードミュージックとしてのジャズで、60年代のフルーツパーラーや喫茶店などでよく流れていた。再びこういうのもラウンジ、カフェ・ミュージックとしてありかも。

DJ TAIZO+FABULOUS VIBRATIONS

今週火曜日の「HIT THE SPOT」での、DJ TAIZOとファビュラス・ヴァイブレーションズの生演奏を久しぶりに聴きにnu thingsに顔をだした。茨城のクラブなどからもお声がかかるようになった彼らの成長ぶりを見たかったからだが、当日の演奏はシャープなフレーズのたたみこみ、スピード、テンションなどすべてが一回り大きくなったノンストップの熱い高速グルーヴを1時間近くも持続させ突っ走っていた。彼らのホームページを見ると『2005年結成。その1年後から大阪本町Nu Thingsにおいて毎月第4火曜日に行われているHit The Spot ! でライブショウを行う。「Fabulous Vibrations」、その一言から始まる演奏は正にpure funk。ライブは観るものであるのと同時に踊って楽しんでもらうものだ、をコンセプトにノンストップでファンククラシックの数々を演奏。強力なインパクトを誇るその独自の活動はファンクという音楽を踊れる音楽として日本に、特に関西に根付かせる起爆剤になる予感をはらんでいる』と紹介されているが、それこそ彼らの音楽は関西のクラブシーンの起爆剤としてのすべての条件が揃い始めていて、これで火がつかないわけがない。それほど凄まじいテンションのピュア・ファンクだった。ステージが終わってからバックステージを覗いたが、メンバーすべての身体からオーラのような輝きすら出ていた。ブレークも近いな! それにDJ TAIZOがDJイングしているブースの後ろには、よくぞここまでコレクションしたなと驚くほどの数の50年代ファンク・クラシック45回転7インチシングルがセッティングされている。いい加減な素人DJが多い現在のクラブシーンで、DJ TAIZOほど"FUNK"にリアルに真面目に向かい合っているDJはいない。一度でもいい是非勢いづいてきた彼らのDJ+LIVEを体験して欲しい。金曜の今夜、FUNKというブラック・ミュージックの持つ根源的スタイルの衝撃的ドラマ「ROCK ON THE SUMMER 'O7」が始まる。

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