ARCHIVE1
TALKIN LOUD RECORDS
今月末に行う「GREEDY BUGS IN THE ARCHIVE VOL.1」の準備のため、久しぶりにレコード倉庫に行き未整理だったレコード群のなかからTALKIN LOUDとMO' WAXだけを引っ張りだしてきた。過去に聴いていたレコードを再び聴いたりするのはこうした機会がないことには滅多にないし、いままでは過去を振り返らなくて済むほど次から次に新しいコンセプトを持った音楽が表出していたからだが。だけど2、3年前からは買いたいと思う新譜レコードがまるでなく先端での音楽はnu jazz以外はすっかり停滞してしまい気がつくと行きつけの輸入レコードショップも何軒か廃業してしまったほどだ。きっと新しい音楽などもう表れることはここしばらくはないだろう。今後アーカイヴの動きや全音楽史的データベース構築というプロジェクトがおそらくこの時代に最も相応しく、音楽に関わってきた人間の残された唯一のとるべき態度だと思っている。このレコード・データベース構築がお金になる事業だと、まだ企業サイドの人間は気づいていないのが不思議だ・・?。でもまあ、それにはデータの基礎になる大量のレコードを所有してなきゃ話にならないんだけど。どこかにデータベース構築を手伝ってくれる有能なプログラマーいないかな。いたらぜひ御連絡いただきたい。
「GREEDY BUGS IN THE ARCHIVE VOL.1」は5月29日と30日の2日間かけて第一回目はTALKIN LOUDレーベルだけをチョイスし、ボクひとりで両日合わせて計8時間アーカイヴします。TALKIN LOUDというのは多くの人間がアシッドジャズだと誤解しているけれど、やはり核はアブストラクト・ヒップホップやドラムンベースで、それにソウルやガラージュやディープ・ハウスなどを横断し90年代後半のクラブシーンや時代を切り拓いてきた重要なレーベルだ。このイヴェントではボクの持っている100枚を超えるTALKIN LOUDのレコードをアーカイヴするが、ここでは重要な作品を数枚紹介しておきます。
COURTNEY PINE
1.COURTNEY PINE/MODERN DAY JAZZ STORIES(TALKIN LOUD 529-028-1)
ソプラノからテナー、ベース・クラリネット、フルートまで操るアフロ・ブリティッシュのジャズメンCourtney Pine。96年発表のダブルアルバム「Modern Day Jazz Stories」での音楽はDJ POGOをターンテーブルスとして起用していることからも判明できるが主にカットアップ、サンプリングによるジャジーなアブストラクト・ヒップ・ホップとスピリチュアル・ジャズ。レコーディングにはトランペットにEDDIE HENDERSON、ヴォーカルにCASSANDRA WILSON、ピアノ/オルガンにGERI ALLEN、ベースにCHARNETTE MOFFETT、ドラムスにRONNIE BURRAGEなどそうそうたるメンバーがクレジットされている。サイドBの1曲目「Creation Stepper」はダウンな2ステップからハードバップ風に転調しCortney Pineの凄まじいスピリチュアルなソプラノ・サックスが繰り広げられていて圧巻。このアルバムがターニング・ポイントとなりクラブジャズは現在のnu jazzへ変遷していく道を歩みだしたといっても過言ではない。サイドDにはドラムンベースが隆盛を極めていた当時の時代が蘇る名曲「I've Known River」が4HEROなどによってリミックスされていて懐かしい。もうあれから10年もの歳月が経ったんだ。ボクらは少しでも前に進めたのだろうか。
2.COURTNEY PINE/UNDERGROUND(TALKIN LOUD 537 745-1)
97年リリースの2枚組。ここではスピリチュアル・ジャズからダウンテンポのアブストラクト、ヴォーカルもののR&Bまでを展開していて、時間の経過によって色あせることの無い現在でも充分DJイングに使える数少ない名盤の1枚。TALKIN LOUDからは96年4HEROやFLYTRONIXのリミックス12インチ「Dont' Explain」(TXL9/573 049-1)、98年4HERO、ATTICA BLUESなどによるリミックス3枚組「Another Story/Remix From Modern Day Jazz Stories And Underground」(536 928-1)などの作品をリリースしている。
GILLES PETERSON / RAINER TRUBY/JOE DAVIS
3.TALKIN JAZZ VOL.3(053 585-1)
ジャイルスとレイナーによる97年発表のコンパイル・ダブル・アルバム。THE CLARKE-BOLAND BIG BAND、MARK MURPHY、ELLA FITZGERALDなど15曲が収録されている。YAADのJazz Meets Indiaで始まるこのアルバムはアーシーでエスニックな匂いが強くすべての選曲が素晴らしいとは言えないが、全体的にはフロアジャズ系の音楽が収録されていて当時としては目新しかった作品。
4.BRAZILICA VOL.2(535 027-1)
西洋人にとっては我々が感じる以上にラテンやブラジリアン、アジアンテイストのサウンドスケープにあるエキゾチシズムはある種の桃源郷/ユートピアのように映るのだろう。アーシーなこうした異国趣味ともいえる世界にある暖かいヒューマニズムがボクはどうも苦手でどこかにクールでスタイリッシュな態度がないと彼らのようには受け取れない。97年を境にこうしたラテン、ブラジリアンもクラブジャズの一側面としてクラバーが認識しだし当時としては目新しかった作品。信じてる人には申し訳ないがニッポンではジャイルスと言えば誰もが尻尾を振るが、個人的にボクは最近ジャイルスのコンパイルしたレコードでのコンセプトや感性をあまり信じていない。
21ST CENTURY SOUL
5.21ST CENTURY SOUL(534 742-1)
97年リリースの2枚組アルバム。Dサイド、ラストの71年作のTHE CLARKE-BOLAND BIG BANDの「SAKARA」とAサイド1曲目81年作のROBERTINHOSILVA「FALANGE DOS TAMBORES」の間に90年代にトーキン・ラウドからリリースされた9曲が挿入された過去の集大成といった作品。URSULAをフィーチャーした4HEROの「Loveless」というドラムンベースは忘れられないほどの名曲だった。このアルバムを契機にトーキン・ラウド人気は一気に下降線を描き始め、ヘビーでノイジーなRONI SIZEやKRUSTのブロークン・ドラムン・ベースで自滅していき消滅してしまう。ジャケットデザインにも明らかだが21ST CENTURY SOULと言えどももはや近未来的記号論に過ぎない。
6.21ST CENTURY SOUL LIMITED DJ SET(534 840-1)
4HERO、JEFFREY DARNELL、UFO、DJ KRUST、CLEVELAND WATKISSの12インチシングル5枚がヴィニールケースに入れられDJセットとしてリリースされたもの。すべてのヴィニールが片面しかカッティングされていなく贅沢な作りだった。97年当時の流行りを反映したジャジー・ヒップホップとジャジー・ドラムン・ベースが収録されている。97-98年が最もTALKIN LOUDに勢いがあり輝いていた一瞬の時期だったのかも知れない。
NUYORICAN SOUL
7.NUYORICAN SOUL/YOU CAN DO IT [BABY] Featuring George Benson(4sr12-3091)
96年にリリースされたギターとリード・ヴォーカルにジョージ・ベンソンをフィーチャーしたニューヨリカン・ソウルの12インチシングル。ここではパーカッション・グルーヴの上をベンソンのギターとスキャットが絶妙に絡み合いモダンなラテン・グルーヴを構築していてとてもイキでスタイリッシュな作品に出来上がっている。
8.NUYORICAN SOUL/A Project by Master At Work(578 795-1)
ニューヨーク生まれのプエルトリコ人KENNY'DOPE'GONZALESとLOUIS VEGAの自身のプロデュースによる96年に発表された12インチシングル6枚入りボックスケース。NUYORICAN SOULはジャズ/ヒップホップ/ラテン/サルサをブレンドし、それを現代的感覚でよみがえらせた革新的なプロジェクトと言われているが、好きな人にはたまらないだろうが正直に告白するとボクはこのあたりが最も苦手な(嫌いとは言ってないよ)音楽かも知れない。センスいい音楽も収録されているが、おそらくハウスというよりディスコ・ミュージックとして聴こえてくるからだろう。例え嫌いなレコードについて評論するときにもそのレコードを聴かずに先入観だけで絶対に文章を書いたりはしないが、このレコードも高かったけれど奮発して買ったのはこうしたレコードをかける機会もあるだろうと思ったのとTALKIN LOUDの一資料として買った意味が大きい。
4HERO
9.4HERO/TWO PAGES(568 879-1)
4ヒーローのピークは98年に発表された4枚組アルバム「Two Pages」だろう。世紀末に表出した革新的なドラムンベース/アブストラクト・ヒップホップの有終の美を飾るに相応しいほど繊細なジャズグルーヴ、メランコリックなサウンドスケープが描かれていて彼らの最高作でもありドラムンベースでのベストアルバムだ。その翌年にリリースされた「Reinterpretation」これの続編だったが、このアルバムを越えることはできなかった。こうしたドラムンベースは最終的にはウェスト・ロンドンのブロークン・ビーツに繋がるが、当時はクリス・ボーデンやシネマチック・オーケストラの音楽と共振していた。
10.4HERO/CREATING PATTERNS(586 057-1)
ロウ・エモーショナルでストリングスを駆使したアブストラクト・ヒップホップ「Conception」から始まる01年制作の3枚組アルバム「Creating patterns」はこれもクリス・ボーデンやシネマチック・オーケストラの世界に通じるイギリス独特のメランコリックなサウンドスケープが描かれている。50年代のビート族を想起する詩とジャズの融合の、乾いたサンプリング・スネアが醸すグルーヴの上をUrsula Ruckerのスポークン・ワードが走る。地味なアルバムではあるが4ヒーローが最も感情移入して制作した作品じゃないだろうか。ドラムンベースも4ヒーローとともに消滅しこのアルバム以降彼らは6年間作品を発表していないが、つい最近「Play with the Changes」が発表された。ボクはこのレコードを買わなかったけれど、そこには新しいヴィジョンが聴こえるのだろうか。
キミが当時のクラブミュージックを未体験なら5月29-30日の2日間行う「GREEDY BUGS IN THE ARCHIVE」にお越し下さい。90年代のクラブジャズだがきっと新しい発見があるでしょう。
Comment (3)
4 heroはDEGOじゃなくマーク・マックだと思う
投稿者: swingar | 2007年05月18日 22:08
日時: 2007年05月18日 22:08
Creative Patternsの最後に収録されていたLes Fleurを聴いて、4heroとしてやりたいことは全部やったのではないかという直感がありました。
投稿者: 辰巳哲也 | 2007年05月19日 22:29
日時: 2007年05月19日 22:29
今夜29日火曜日はTALKIN' LOUDレーベル特集の一日目のGREEDY BAGS..です。pm7.30からですので、お時間ありましたら、お仕事帰りにでも気楽にお茶やビールでも飲みついでに聴きにきてください。90年代の最高に盛り上がっていた時代のクラブジャズを体験しにどうぞ。
投稿者: AGI Yuzuru | 2007年05月29日 04:36
日時: 2007年05月29日 04:36