« Work at a different speed | Main | Do nothing for as long as possible »

Change instrument roles

SOUL JAZZ RECORDS LONDON
CHRIS BOWDEN

●CHRIS BOWDEN/DAUGHTERS(SOUL JAZZ SJR 030)
●CHRIS BOWDEN/IN ORBIT(SJR 033)
●CHRIS BOWDEN/TIME CAPSULE(SJRLP 32)
Chris Bowden(Alto Sax/Keyboards) Catherine Browning+Brian Wright(Violin) Everton Nelson(Violin+Flute) Sophie Sirota(Viola) Gay-Yee Westerhoff(Cello) Stephen Hussey+Amanda Drummond+Maudyah Tucker(Violin)
Frances Reardon(Clarinet) Stuart Eminson(Bass Clarinet+Clarinet) Matthew O'Regan(Fender Rhodes+Piano) Andy Hamill(Double Bass) Tom Gordon(Drums) Bosco D'Oliveira+Richard Adjuli(Percussion) Ben Clark(Tabla) Alison Crookindale+Elaine Higgins+Carol Marnoch+Angela Caesar(Voice)
Engineered By Luke Gordon Produced by Stuart Baker and Chris Bowden
イギリスのジャズにはそれほどの興味を湧かないのはなぜだろう。70年代のヴァージンレーベルでのカンタベリー系のHATFIELD AND THE NORTHの「THE ROTTER'S CLUB」、「NATIONAL HEALTH」、CARAVANの「IN THE LAND OF GREY AND PINK」などの音楽がボクにとってはイギリスのジャズの原点といえるだろう。この周辺のアルバムの原盤が少なくとも500枚はボクのレコード倉庫に眠っているので、近いうちに引っ張りだしてきてこのBLOGや「レコードアーカイヴ、データベース構築」の時に再解釈し紹介しようと思っているが、現在のイギリスのジャズといえば、唯一CHRIS BOWDENしか興味がない。彼の音楽は言うまでもなくそのカンタベリー系の血を引き継いだnu jazzであるのだが、1996年にSOUL JAZZ RECORDSからリリースされた12インチシングル「MOTHER AND DAUGHTER NOW」は、4本のヴァイオリン、2本のクラリネット、フルート、ヴィオラ、チェロ、フェンダーローズ、ピアノ、女性ヴォイスという編成の、帯のようになってうねるストリングスにシンプルなダウン・ヒップホップ・ビートのダブルベース、ドラムスがミニマルに織り込まれていて、そのうえをクリス・ボーデンのアルトサックスがソウルフルに縫ってゆき壮大なスケープを描いているもので衝撃を受けた。続いて発表された続編12インチシングル「IN ORBIT」はそれにエレクトリック・サウンドを駆使したスペーシーなサウンドで、当時のアブストラクト・ヒップホップの台頭、運動と共振した実験的なグルーヴを構築していた。ダブルアルバム「TIME CAPSULE」は、このタイトル名のように地球そのものをタイムカプセルに詰め込んだように時が延々と流れアーシーでスペーシー、そして存在の根源へと誘うノスタルジアな世界が描かれている。

●CHRIS BOWDEN with 4-HERO/HERO+LULLABY(SATELLITE STL 002)
1997年に4ヒーローと発表した「ヒーロー/ララバイ」は90年代のクラブジャズのベスト作品だとボクは思う。当時TALKIN' LOUDで勢力的に活動を始めた4ヒーローとクリス・ボーデンの才能がぶつかり生み出されたこの12インチシングルこそ、90年代のクラブカルチャーの生んだ最高作だ。ヴィニール・ジャケットに入れられた紙袋のモノクロのうなだれ苦悩する彫像写真、思えばクラブカルチャーはもうこの時からすでに下降線を描き始め、創造できるものすべてを吐き出してしまっていて終焉していたのだろう。

●CHRIS BOWDEN/BEAUTIFUL NASTY(NINJA TUNE ZEN1298)
●CHRIS BOWDEN/CROCKERS AND KILLERS(NINJA TUNE ZEN12136)
アブストラクト・ヒップホップはクラブミュージックのジャズへの回答だったんだ。それは新しい2ステップ・グルーヴのドラムンベースが誕生したからこそ生まれたグルーヴなのだ。現在に続く"ジャズ的なるもの"という記号の流れもまた、90年代前期のドラムンベース、90年代中期のアブストラクト、ジャジー・ヒップホップから派生したもので当時のMO WAXやNINJA TUNEでのBIG DADA、このZENなどの作品と比較すると、最近のヒップホップやアブストラクト、音響系といわれるものなど糞みたいなダサいものだ。2001年にリリースされた12インチシングル「BEAUTIFUL NASTY」は女性ヴォイス、スキャットがシネジャズのような世界を醸している生ドラムスによるジャジー・ヒップホップだ。そうして生まれたグルーヴのなかをボーデンのアルトサックスが即興的に泳ぐ。こんなこともまだニッポンのクラブミュージシャン、ジャズミュージシャンは誰も始めていない。A2の4ヒーロー・リミックスはダウンなヒップホップ・グルーヴから曲の途中で高速のドラムンベース・グルーヴへ急転調した仕上げをみせている。久しぶりにサイドB「ORIGINAL SINS」の生ドラムンベース・グルーヴを聴いていると、ドラムンベースとハードバップはひょっとすると相性が合うかもね。今度試しにMIXDJイングしてみようか。

●CHRIS BOWDEN/SLIGHTLY ASKEW(NINJA TUNE ZEN67)
02年発表のダブルアルバム「SLIGHTLY ASKEW」でのクリス・ボーデンは"うねり"とコスモス+カオスだ。タイトル通りの一癖あるスピリチュアル・ジャズだ。トランペット2管、サックス、トロンボーン、フルート、クラリネット、そしてボーデンのアルトサックスの7管編成のテーマ・ユニゾンとそれぞれが掛け合のなかで発生するうねり、その混沌を重厚なドラムス、ダブルベースのダウンな2ステップ・グルーヴがバランスをとっているサイドAの「ONLY ANGST」は圧巻。この02年のアルバムを最後にクリス・ボーデンは早々とクラブシーンに見切りをつけてしまった。消費することの繰り返し、レコードショップの棚からそのレコードが消えたら最後2度とそのレコードに巡り会えないクラブシーンはその構造上始まりからなにも残らないのだ。このアルバムのサイドBの「CROCKERS AND KILLERS」がシングルカットされて発売されているが、ニコラ・コンテの甘さが苦手なひとはここでのアブストラクトで甘渋い大人のジャズをどうぞ。

●CHRIS BOWDEN+NEIL BULLOCK+BEN MARKLAND
THE TOMORROW BAND/3 TO GET READY(REHAB REH003)
しばらく音沙汰のなかったボーデンの動向だが、つい最近イギリスのREHABレコードから、イギリスの若手ジャズミュージシャンであるベースのBEN MARKLAND、ドラムスのNEIL BULLOCKとともに組んだ新たなトリオ「THE TOMORROW BAND」のCDがリリースされた。ここではジャズのスタンダード・レパートリーが6曲とボーデンの曲「BEAUTYFUL NASTY」1曲が収録されている。すべてがストレート・アヘッドで即興的アドリブが売りの"どジャズ"だが、ボーデンがこうしたスタンダードなジャズに再び転向している事実がとても興味深い。

●THE BEST OF BLACK JAZZ RECORDS(UNIVERSAL SOUND USLP2)
●MESSAGE FRO0M THE TRIBE(US LP5)
●UNIVERSAL SOUNDS OF AMERICA(SOUL JAZZ SJR LP27)

●STEVE REID ENSEMBLE/SPIRIT WALK(SJR LP122)
●NEW THING!(SJR LP110)
SOUL JAZZレコード傘下のUNIVERSAL SOUNDでは96年「THE BEST OF BLACK JAZZ RECORDS 1971-76」、96年「MESSAGE FROM THE TRIBE/AN ANTHOLOGY OF TRIBE RECORDS 1972-77」の2枚のコンパイル・ダブルアルバムを発表していたり、またSOUL JAZZからの95年「UNIVERSAL SOUNDS OF AMERIKA」などの作品は、ボクにその後70年代のBLACK JAZZ RECORDSや、TRIBE RECORDS、STRATA-EAST RECORDSなどのディープでスピリチュアルな音楽を聴く契機を与えてくれた。(サン・ラはロックの時代にかなり多くの作品を体験しているが)。SOUL JAZZからは最近ではSTEVE REID ENSEMBLEの2枚組「SPIRIT WALK」、SUN RAやALIS COLTRANEなどの曲がコンパイルされた3枚組「NEW THING!」など多くの作品が発売されている。スピリチュアル・ジャズもこれからのクラブジャズが避けて通れない大きなキーワードのひとつだろう。よりコズミックでスピリチュアルで黒っぽいジャズが好きなクラバーはこの周辺も押さえておかないと嘘だろう。ファンクやソウルも80年代的ディスコに遡るのではなく、もうそろそろここまで来ていいんじゃないの。

ところで話は変わるが、いままで病気にかかったことないほど健康なのだが、それでも毎年春先になると身体の調子を崩してしまう。今年は暖かい日が続いていたので何事もないと安心していたのだが、ゴールデン・ウィーク前あたりから急に調子を崩して風邪で寝込んでしまった。一昨日にはnu thingsのCINEJAZ'でDJイングしなければならないのと、自分がオーガナイズしたイヴェントだから人任せに出来ないので無理して起きたが、今年の風邪はヒドかった。ウィルスっていつの間にか人知れず突然変異を繰り返し、かなり強力になっているのを身体で体験したよ。音楽もウィルスのように時代にあわせて突然変異を繰り返しながら常に力を持ち、60-70年代のように人々の意識を変革し社会に風穴あけ人生を変えるほどのパワーを持っていたのにね。考えれば音楽は目に見えないウィルスのように、なんにでも寄生しどこにでも潜入できるものなんだけれどな。ウィルスのようにナニモノにも属さないで、ナニモノにも属して生きる。いま思えば若気のいたりというか、無謀でバカな覚悟を決めてこの歳までよく生きてきたものだとつくづく呆れてしまう。この時代に、群れから離れたこんな一匹狼的生き方はとてもダサくて居心地が悪く、正直言うと自分の無邪気さに呆れ少しは恥じを感じる歳になっているのかも。バックボーンに大企業の資本や組織でもついているなら、もっとデカイこともやれるのにね。でもだからといって、今更この生き方を変えようなんて微塵も思っていないよ。なによりも自由でいられるありがたさは代え難い。それにもう生きても10年だからな。人生なんてあっという間だ。このあいだの誕生日と、風邪で寝込んでいたとき一日中ひとりでそんな他愛無いこと熱にうなされながら考えていた。

Trackback

http://www.nu-things.com/mtcgi/mt-tb.cgi/14

Comment (3)

Cho:

Tubby Hayesなどをはじめ60年代のUKジャズは
現在のnu jazzに明らかに影響を与えていると思うのですが、
どぅでしょう?

AGI Yuzuru:

フォンタナからリリースされていたイギリスのサックス/ヴァイブ奏者のタビー・ヘイズ・クゥインテットの「ダウン・イン・ザ・ヴィレッジ」や「レイト・スポット・アット・スコット」などがユニバーサルクラシックとして2年前だったかな、発売されていたけれど、輸入レコードショップの"ジャイルスが云々"というセールス・コピーをみて買う気が失せて同時リリースされていたそれ以外のレコードを買ったのでボクは聴いていない。もしChoさんがこのあたりの情報に詳しいならBLOG読んでるひとやボクにも教えてください。

Cho:

ご返答ありがとうございました。

ボクも詳しくはないのでアレなのですが、
曲単位でいくとNicola Conteの「Other Directions」は
Tubby Hayesの「Down In The Village」をモチーフにしてるし、
Gerardo Frisinaの「Bluesanova」のリズムは
Paul Gonsalvesの「Boom-Jackie-Boom-Chick」から
インスパイアされてるように聴こえてきます。
その辺りをふまえ、UKのジャズにもnu jazzに影響を
与えているものがあるのではなぃかと質問させていただきました。

それではこれからも独自の切り口でのレビューなど
楽しみにしています。
ちなみに余談ですが、remix誌の連載の時から
レビュー読ませてもらってます。
あの時と一貫した流れで読めるので楽しいです。
それでは失礼します。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

About

2007年05月06日 23:36に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「Work at a different speed」です。

次の投稿は「Do nothing for as long as possible」です。

→Main Page
→Archive Page

Powered by
Movable Type 3.35