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2007年04月 Archive

2007年04月05日

Trust in the you of now

イギリス、ロンドンという都市は音楽人生のすべての始まりだった。それは"LONDON IS PlACE FOR ME!"と叫びだしたいほどに。イギリスの音楽はロックではグラムロック、ロンドンのポートベロの外れに小さなオフィスを構えていた頃の初期ヴァージン・レーベルのカンタベリー系のプログレから始まり、80年代のパンク、ニューウェイヴやラフトレイド、4ADなどのオルタナ、アムビエント、ダブなどなど、そしてブリティッシュロックの終焉を意味するelレーベルまでを。
クラブミュージックでは89年の頃のアシッドハウスから、90年中期のドラムンベース、ニンジャチューン、MOWAX、TALKIN' LOUD、そして4、5年前までのウェストロンドンのブロークンビーツまでの、それこそすべてのブリティッシュ・ミュージック・ムーヴメントと言っていいほどの音楽変遷を見てきたし体験してきた。イギリスやロンドンの音楽にはそれほどに日常的親近感を持っていた。しかしここしばらくイギリスの音楽はいつの間にかボクにとって影の薄いものになってしまった。2002年の夏、20年ぶりの40日間の北欧、東欧、ヨーロッパ旅行の途中にロンドンに10日間ほど滞在したが、その変貌ぶりには声を失ってしまった。まるでアメリカなのだ。80年代のサッチャー首相の急進的な経済再編のための構造改革、90年代ブレア首相の市場化一辺倒の政策、ニューイングリッシュ、モダンイングリッシュ=クールブリタニアと呼ばれるイメージ戦略とはうらはらに、おそらくイギリス独自のシニカルな反伝統的文化は経済発展と同時に死滅してしまったのだろうと思う。思えばロックの死滅もそうした政治的変動と符号している。

ポートベロ・ロードに小さなレコードショップを構えレーベル運営もしている"HONEST JON'S"には、ロンドンに行ったときには、必ずといっていいほど立ち寄る。このエリアはおもいでのエリアでもあるし、中古レコードもマニア向けの貴重なものが多く揃っているからだ。いまはアンティックに興味はないが、以前は帰り道、このエリアの通り沿いにあるアンティック・ショップで古いヴィクトリア時代のティーカップなどを品定めしていた。ロンドンのレーベルで今でも買うのは、このオネスト・ジョンズとソウルジャズ・レーベルくらいかも。今日はそのオネスト・ジョンズからリリースされているものを紹介。

「SOLOMON ILORI AND HIS AFRO-DRUM ENSEMBLE/IGBESI AIYA "Song Of Praise To God"」(HJP35)
ナイジェリア出身のソロモン・イロリ(vocal、talkingdrum)の12インチシングル。彼は1964年にブルーノートからレコードデビューしている。このシングルはトランペットのドナルド・バードとドラムスのエルビン・ジ
ョンズのセッションによる未発表曲。多律動なアフログルーヴもまた昨今のクラブジャズ系音楽のひとつの傾向。ブルーノートでのアフログルーヴも、ハードバップと同じようにコンパイルすれば充分現在でも使える記号だ。
「BOOGALOO POW POW/DANCEFLOOR RENDEZ-VOUS IN YOUNG NUYORICA」(HJRLP27)
60年代中期、ニューヨークのダンスホールでは、このアルバムの1曲目に収録されているWILLIE ROSARIOのカリプソ・ブルースなどが流れていたんだな。ブガルーも多くのジャズミュージシャンがとりあげているスタイルだが、この2枚組アルバムにはファンキー、ラテン、サルサ、カリプソなど多種多様な60年代ダンスミュージックが収録されている。ジャズと同じように映画のワンシーンに使われてもいいほどエキゾチックでスリリングな音楽かも。このレーベル以外では、ニューヨークのFANIA RECORDSからリリースされていたWILLIE COLON"EL MALO"(SLP337)などもクラブミュージック、ダンスカルチャーの原点を知る上ではとても重要なアルバムだ。

「LONDON IS THE PLACE FOR ME 2/CALYPSO & KWELA,HIGHLIFE & JAZZ FROM YOUNG BLACK LONDON」(HJRLP16)
このシリーズは現在まで4枚発売されているのだが、そのなかでもこのアルバムは"ジャズ的なる"空気に溢れていて最も気に入っている。アフリカン・ミュージックについては、詳しくないのだが、このアルバムに添付されたノートにカリプソ、クウェラ、ハイライフといったアフリカン・ミュージックについて言及されていて興味深い。それに加え当時のブリクストンのカリブ移民社会のセピア写真やメロディスクのレーベル写真が使われ、レトロモダンな雰囲気を増長させていてオシャレだ。60年代のロンドンのブラック・コミュニティーにもこの頃は夢があったんだな。
「LONDON IS THE PLACE FOR ME 4/AFRICAN DREAMS AND THE PICCADILLY HIGH LIFE」(HJRLP25)
2002年の旅で見たロンドンの地下鉄のターミナルには、以前よりも黒人の姿を多くみかけた、また黒人だけではなくインド、中東、東アジアなどなど人種が混合していて、まるで別の国にきたかのような印象があった。ピカデリー・ハイ・ライフとは勝ち組のこと? ロンドンの街は、おそらく近い内に他民族に乗っ取られるだろうか。これはこのシリーズの最新盤で2006年に発表されたもの。60年代のトリニッドから西アフリカのミュージシャンによるメント、カリプソ、マンボ、アフリカン・ジャズなどが収録された2枚組コンピレーション。
クラブカルチャーの実体、原点は今日紹介したもののなかに隠されている。

2007年04月08日

What is reality of situation?

STONES THROW/YESTERDAYS NEW QUINTET+MADLIB
時代は急速に"ジャズ的なるもの"に無限に接近していく

YESTERDAYS NEW QUINTET/UNA ESTA EP(STONES THROW STH2040-1)
YESTERDAYS NEW QUINTET/ANGLES WITH OUT EDGES(STONES THROW STH2042)
YESTERDAYS NEW QUINTET/BOMB SHELTER EP(STONES THROW STH 7014)
YESTERDAYS NEW QUINTET BREAKESTRA MR DIBBS/WELDON(STONES THROW STH2055)

ところで80年代中期に最終的にノイズやスカム/スラッジという出口なしの袋小路に入り自滅してしまったロック、あるいは"ロック的なるもの"の先端は現在どこにあるのだろう。短絡的に言えばそれはヒップホップやアブストラクト、音響系と呼ばれる音楽のなかにあり、クラブミュージックと言えども80年代の終わりから90年代中期までの多くが"ロック的なるもの"を引きずりながら変遷していた。そうしたいきさつは長くなるのでいずれ徐々に別の機会で書くが、まずSTONE THROW/FAT BEATレーベルでのMAD LIB周辺での動向を押さえておくことをお薦めする。
BREAK-BOY(BBOY)がこうした音楽を聴きブレークダンスを踊っているのを想像できないが、ロックによって思考回路が湾曲しているフリークス頭には、"狂気解放"なる意味を持つ名前を名乗っているマッドリブの音楽が肌に合うだろう。彼はQUASIMOTO、MADVILLIANなどなど、そのつどサウンド・プロダクション名を変えているが、個人的には2001年に西海岸ロサンジェルスのSTONES THROW/FATBEATSからリリースされた
"YESTERDAY NEW QUINTET"名義で発表された12インチ"Presenting the Uniquely Exciting Jazz Soud of YESTERDAYS NEW QUINTET/Uno Esta"(STH2040-1)、7インチ"BombShelter EP"(STH7014)、ダブルアルバム"Angles Without Edges"(STH2042)などの数枚の作品や、

MADLIB/SHADES OF BLUE(BLUE NOTE 7 243-8-77987-1)
MADLIB/SHADES OF BLUE.MADLIB INVADES BLUE NOTE(BLUE NOTE 7 243 5 36447 1)

2003年にBLUENOTEからMADLIB名義で発表した12インチシングル"TRACKS FROM SHADES OF BLUE-MADLIB INVADES BLUE NOTE/Please Set Me at Ease*Hip Hop MIx"(BTE77987)、ダブルアルバム"SHADESOF BLUE/MADLIB"(BLUE NOTE7 243 5 36447 1)での音楽を最も支持している。彼の音楽にみられる美しいストリングスのフレーズ、打ち込みによるミニマルでダウンなツーステップ、ヒップホップ・ビートの音のカットアップ、サンプリングによるサウンドコラージュは、イギリスではモワックス・レーベルなどで90年代中期にすでに実験済みで彼が始めたわけではなく決して新しいものではない。それでは、こうした音楽がロックの現在形だとボクが言いきることの証明できる作品を最後に紹介しよう。前述したSTONES THROW/FATBEATSから2006年に発表されたALOE BLACCの"Shine Through"(STH2138)という作品からは、ロックと相似形のバロキシズムやリリシズムが聴こえてくる。

ALOE BLACC/SHINE THROUGH(STONES THROW STH2138)

いまでもロックこそ音楽だとキミが言うなら、アブストラクト・ヒップ・ホップ、ジャジー・ヒップ・ホップ、あるいはラップトップ・ミュージックでのシュールな音響系などを聴いていて当然なんだ。これらの音楽こそロック・ミュージックがこの20年という時間の経緯のなかで進化(?)し、変容した現在のリアルなスタイルなのだ。しかし、こうした音楽の、その彼方からすら"ジャズ的なるもの"が遠くから聴こえてくる。時代は急速に"ジャズ的なるもの"に、無限に接近していく。

起きたら携帯に留守電が入っていた。去年まで東芝EMIの宣伝部にいたS氏からの"あの野中規雄氏(現ソニー・ミュージックダイレクト代表取締役)が会長に就任した"という1本のメッセージだった。先日偶然梅田のターミナルでS氏とバッタり遭遇し、お茶したときに70年代後半から80年代初期までのレコード業界や音楽業界の華やかさ、楽しさについて触れ、みんなが自由奔放でバカなこともしていたが世間はそれを許してくれたほど時代そのものに包容/許容力があったことなど懐かしみ、当時EPIC SONYの洋楽担当ディレクターだった彼のことにまで話題が及んだものだから近況をいれておいてくれたのだろう。振り返れば、当時ロックミュージックに関わっていた人たちは、業界人をはじめいまでは考えられないほど有能な逸材が多く存在していた。彼以外にも評論家としてのボクの資質を誰よりも認めてくれ色々後ろ立てしてくれた現在のユニバーサル・ミュージック取締役会長の石坂敬一氏などなど。勝ち組街道をまっしぐらに歩むほどのエリートたちさえもロックという音楽をバックで支えていたのだ。彼らのようなジャパニーズ・ドリームを絵に描いたような成功ものがたりは、特別な例だろうけれど、それでもボクが編集発行していた雑誌"ロックマガジン"でさえも、京大医学部や、神戸大学、上智大学などのいまでは超エリートとよばれる10人ほどの学生達が常時スタッフとして翻訳や編集作業を手伝ってくれていた。あれから20数年が経ち、彼らはロックや音楽を生活の糧としてはいないが、精神科医、翻訳者、大学の助教授などなど、多くの人が社会的成功をおさめ、その地位を確立し活動している。しかしいま音楽に携わる若い人たちは、はたしてどうなんだろう。そんな逸材がこの世界にかかわっているのだろうか。ノンとまでは言わないが恐らく少数だろう。もはや頭のいいできる若者は、例え音楽を溺愛していようが、ITなどの一流企業に就職し、まず経済的豊かさを確保し、愛する人と幸せな家族を築き、波風のない穏やかな人生を歩むことを選択するだろう。それが、正解だと、ボクも思う。

2007年04月12日

Is it finished?

ブルーノート・レコードの楽しみ方は、その音楽だけではなく他にもある。それは、ウェストコースト系のレコードのジャケット・フォトやスティーブ・マックイーンを撮り続けていたウィリアム・クラクストン(WILLIAM CLAXTON)の写真そのものがジャズであるように、BLUE NOTEでのREID MILESのデザインやFRANCIS WOLFFの写真もジャズそのものであるということだ。つまらないジャズを聴くくらいなら彼の写真を眺めているほうが、よほどリアルにジャズが聴こえてくる。ボクは、雑誌の編集、レイアウトという仕事を通じて、まずアレクセイ・ブロドヴィッチのファッション写真、グラフィック・デザインに興味を持ち、彼の創造の要になっているインスピレーション、強いエゴ、誰よりもはやく他のひとがやらないことをやるという姿勢や、アート・ディレクションにみられる合理主義、機能主義、構成主義的世界に最も影響を受けた。そういえばブロドヴィッチのデザインからもジャズが聴こえてくる。ボクはきっと音楽のなかに、そうした普遍的な美、モダニズムを求め続けてきたのかも知れない。音楽創造(作曲)はソニック・デザインだと言い続けているのも、そうしたボクの考え方に起因しているのだが。だからフリージャズやスピリチュアルジャズなどにある情緒的なものには、嫌いではないがどうもそれほど興味が持てないでいるんだと思う。なにごともスタイルから入ればいいんだといまでも思っているしね。もういちどくり返すけれど、BLUE NOTEレコードでのジャズは、その音楽以上にジャケット・デザインや写真にみられる無駄のないアーキテクトニックな構成美とモダニズムに興味を刺激される。ブルーノートにあるバウハウス的モダニズムは、もちろん創設者であるアルフレッド・ライオンや、フランク・ウルフがドイツ出身であるというところが大きいだろう。ここに紹介しているレコードは、すべてがREID MILESのphoto & Designだが、CDでは楽しめないジャケ買いという楽しみ方がアナログ・レコードにはまだ残されている。

ANDREW HILL/SMOKESTACK(BLUE NOTE 84160)
新主流派と呼ばれるジャズだが現代音楽、フリーに接近したサウンドスケープがみえる。R.DAVIS、E.KHANによるツィン・ベースによるピアニスト、アンドリュー・ヒルの63年に発売されたアルバム。REID MILESの写真/デザインによるジャケットは、アブストラクトなスクラプチュア・フィギュアの後ろにたたずむヒルのモノクロ写真が使われている。それが60年代にさしかかった頃のジャズの抽象化をよりリアルに象徴している。
BOBBY HUTCHERSON/HAPPENINGS(BLUE NOTE 84231)
これも66年発表の新主流派のジャズ。まるでモード雑誌のなかの1ページを切り取ったかのようなREID MILESの写真が知的でオシャレでクール。それがボビー・ハッチャーソンのヴァイブの音色の透明感と緊張感をよりきわだたせている。このカッコよさが本来のジャズなんだ。ジャケットにこの写真が使われたことの彼らのジャズへの思いとその意味は重い。

LOU DONALDSON/GOOD GRACIOUS!(BLUE NOTE 84125)
63年作のブルージーなソウルジャズ、オルガンジャズ。とは言ってもアップテンポのハードバップ風の曲もある。RONNIE BRATHWAITEの写真、REID MILESのデザインによるモノクロのジャケット。すれ違いざまに女性のヒップを追うドナルドソンの視線が、このアルバムでのファンキーさを象徴している。

BIG JOHN PATTON/GOT A GOOD THINGS GOIN'(BLUE NOTE 84229)
66年作。写真/デザインともにREID MILES。GOGOダンスを踊る黒人ダンサーの写真をコマ割りにし、そのエモーショナルな動きを強調させている。BIG JOHN PATTONのオルガンはジミー・スミスよりもテクニックはないが、どこかに垢ぬけたモダンさがあってブガルー、GOGOのようなダンスで踊っていたこの時代の雰囲気を最も的確に表していてボクは好きだ。
BIG JOHN PATTON/LET 'EM ROLL(BLUE NOTE84239)
好きついでにパットンの65年作のアルバムをもう1枚。REID MILESの写真のモデルが着ているワンピースのジオメトリックなテキスタイルは、当時サイケデリックな感覚としてよく流行っていた。ビッグ・ジョン・パットンの明るくてスウィンギーなオルガンジャズは、聴くというよりダンスミュージックとして発売されたものだ。

THE HORACE SILVER QUINTET/THE CAPE VERDEAN BLUES(BLUE NOTE 84220)
65年作。ホレス・シルバーのここらあたりの音楽はラテンやアフロなどのアーシーな匂いも感じられ現在のクラブジャズに最も近いものだ。トランペット、トロンボーン、テナーサックスの3管編成も時代にあっている。ここでのREID MILESのアーシーでトロピカル風の写真もまた新しい記号として充分生きているしね。クラブシーンからこのアルバムで聴かれるジャズを演奏するミュージシャンがそろそろ現れてもいい頃なのにね。
BENNIE GREEN/WALKIN' & TALKIN'(BLUE NOTE 84010)
ジャケットにはFRANCIS WOLFFの写真とREID MILESのデザインが使われているトロンボーン奏者ベニー・グリーンの59年の作品。60年代に入るとブルーノートでのレコードは、まるで恋愛映画のワンシーンのような男女がからむカラー写真が多く使われるようになったが、それはなによりもジャズにドラマチックな物語性(POP性)を持たせようとする彼らの戦略だったのだろうか。

ここで紹介したレコードはいまではすべてが稀少価値というプレミアムがついて、高いものでは1枚が10000yenを下らないし、安いものでも5000yenはするだろう。人間って不思議なもので、高い代価という金銭を支払うことによってでしか、その音楽に近付けないし感情移入しないし、音楽を楽しむことができないものなんだ。

2007年04月18日

Fill every beat with something

メールやネットサーフィン用に10年以上も使っていたiMACが突然壊れたので(編集作業やレイアウトなどはいまでもG3を使っているが)、昨夜iMACの最新ヴァージョンのメモリーを最大限に増設したものを購入した。使い始めてまだ数時間しか経っていないが、すべてがオフィス用のWINDOWSに対応した環境下にあるのか、多くの動画はSTUFFIT EXPANDERなどの解凍ソフトやリアルプレイヤーを使ってもみれないし(まだちゃんとしたセットアップができていないからだろうと思うが)、デスクトップの下にレイアウトされたアイコンもダサイし、初期からのマックユーザーとしてはちょっと期待はずれの感は否めない。まあOSXじゃなきゃこれからは対応できないかと思って買ったのだが、なんのことはない、デスクワークは古いマックのほうがまだまだ使い勝手がいいかも。でも読み込みスピードの速さとフォントや画像などの美しさはみごとだと思う。まあ明日からこの新しいオモチャで色々遊んでゆっくりチェックしてみるよ。

WESTCOAST JAZZ-1.CONTEMPORARY RECORDS
50年代に隆盛を極めたウェストコースト・ジャズは、41年に結成されたスタンケントン楽団の意志を継ぐ個性派とオーソドックス派のグループに大別され、それはジェリー・マリガン、ブルーベック、チコ・ハミルトンの3グループと、ハワード・ラムゼイ、ショーティ・ロジャースの2派によって花ひらいたものだと言われている。西海岸のジャズにブルーノートなどのハードバップにみられるエモーショナルな部分は少ないが、白人中心、知性的、アレンジ尊重という形式主義に走ったそうした側面にボクは現在の北欧を核に表出してきたFinn Jazzやnu jazzに共通点をみてしまう。コンテンポラリー・レコードは51年にレスター・ケーニッヒによってロサンジェルスに設立されクールジャズやウェストコースト・ジャズを生んだ。勝手な解釈で間違っているかも知れないが、ヨーロッパのジャズや昨今のnu jazzの原点や共通点がここにあるとボクは思っている。

●MEL HENKE/DIG(CONTEMPORARY RECORDS C5001)
MEL HENKE(piano) BILL NEWMAN(guitar) BOB REED(bass) LOU SINGER(drums)
●MEL HENKE/NOW SPIN THIS!(CONTEMPORARY RECORDS C5003)
MEL HENKE(piano) BILL NEWMAN(guitar) BOB REED(bass) SHELLY MANNE/SAMMY WEISS(drums)
コンテンポラリー・レコードから55年にリリースされたMEL HENKE(piano)のこの2枚のアルバムはジャケットのクールさとモダンさにまず興味を持った。ここでの音楽はジャズではあるが現代音楽でもあると言えよう。彼の音楽を聴いて驚いたのは、センチメンタル・ジャニーなどの有名な曲も完璧なまでにオリジナルを破壊し、遊びながらアレンジし直し独特のクールなMEL HENKE世界を再構築している。50年代にも彼のような既製概念を破壊し常識を逸脱するジャズミュージシャンが存在していたんだな。これこそNEW CONCEPTION OF JAZZだ。97年にUS のSCAMPレーベルから"LA DOICE HENKE"を発表し、いまなおキャンピーな演奏ぶりをみせている。

●HAWARD RUMSEY'S LIGHTHOUSE ALL-STARS VOL.5/IN THE SOLO SPOTLIGHT(CONTEMPORARY RECORDS C 2515)
HOWARD RUMSEY・BUD SHANK・BOB COOPER・STAN LEVEY・CLAUDE WILLIAMSON・STU WILLIAMSON・BOB ENEVOLDSEN
ハワード・ラムゼイがハーモサ・ビーチにライトハウスという後にはジャズクラブになるコーヒーショップをオープンしさせたのが49年というから、この10インチ盤も54、55年頃発表されたものだろう。ジャケット写真は海岸の岩のうえに休む一羽の白いカモメ。それこそ西海岸の海からふくクールで爽やかな風に似たスィングジャズだ。ウェストコーストの見本のようなジャズである。
●THE ARRIVAL OF VICTOR FELDMAN(CONTEMPORARY RECORDS S7549)
VICTOR FELDMA(vibraharp/piano) SCOTT LA FARO(bass) STAN LEVEY(drums)
58年作。ヴァイブのクールで透明感ある音色は21世紀のこの時代のジャズにマッチしていて、恐らく再評価されるのも近いだろう。英国生まれのヴィクター・フェルドマン、このアルバムは今のところウェストコースト系ジャズではマイ・ベストに入っている作品。サイドBの"BEBOP"での超ハイスピードな曲展開はHARD SWING BOPでなんども使ったほど快適で気持ちいい。フィンランドのRICKY TICKから発売されたアルバム"ON THE SPOT"とこのアルバムがなぜかボクのなかでは共鳴している。

●HOWARD McGhee/MAGGIE'S BACK IN TOWN(CONTEMPORARY RECORDS S7596)
HOWARD McGHEE(trumpet) PHINEAS NEWBORN,JR(piano) LEROY VINNEGAR(bass) SHELLY MANNE(drums)
BEBOPジャズ・トランペッター。このアルバム発表以前の彼はジャケットにみられるような健康的な西海岸の太陽を浴びるヒューマニズム溢れたイメージはなく、チョイ悪男のダンディズムのイメージが強かった。ちょっとスカシたトランペッットが渋い!そしてうまい!いまのところHARD SWING BOPでは高速でテンションの高いハードバップをチョイスしているが、可能ならばソロソロこのあたりの渋めのハードバップでDJイングしてみたいと思う。でもまだ無理だろうね。
●SOMETHING ELSE!/THE MUSIC OF ORNETTE COLEMAN(CONTEMPORARY RECORDS S7551)
ORNETTE COLEMAN(alto sax) DON CHERRY(trumpet) WALTER NORRIS(piano) DON PAYNE(bass) BILLY HIGGINS(drums)
ハードバップとフリージャズのはざまにある58年に発売されたこのレコードに収録されたようなジャズが個人的にはベストだ。オーネット・コールマンとドンチェリーと言ったらフリージャズだと単純に判断してはいけない。ハードバップも聴き進んでいくと色んなものがみえてくる。コンテンポラリー・レコードも聴きだしてまだ間がなく、それほどの枚数は聴いていないけれどここらあたりも深そうだ。

西海岸といえば20代の後半にサンフランシスコに1年近く滞在していたことがある。東芝の歌手を造反し辞めてから、これからどう生きようかと迷っていた頃だ。その頃のサンフランシスコはヘイトアシュベリーのアフター・ザ・ゴールド・ラッシュ、ヒッピームーブメントの廃虚といった感のある過渡の時代であったが、マクロバイオティック・フードやアーシーな世界観におおいに影響され帰国してからも埼玉の入間の米軍ハウスに住んだり色々あった。(SFでの話の続きはまたの機会に)人工派のボクにもそんな時期もあったんだ。ウェストコースト・ジャズのレーベルは今回のCONTEMPORARY以外にもWORLD PACIFICやJAZZ WEST COAST、PACIFIC JAZZなどもあるが、それも近い内に・・・。

2007年04月23日

RICKY TICK Records + FINN JAZZ

nu jazz 1
去年あたりから個人的にはnu jazzが昇華したものとしてHARD BOPへエッジなヴィジョンを移行させようと考えているのだが、ブログを読んでくださっている方から、nu jazzに関してもっと詳しく教えてくださいなどのメールを頂くので、少し丁寧にnu jazzなる音楽をカテゴライズさせておこうと思う。nu jazzがフューチャー・ジャズやハウス/テクノ/ファンク/アブストラクトなどのクラブ・ミュージック・テイストをジャズに融合したいわゆる打ち込みによるもの(ジャザノヴァや4ヒーローズなどの音楽に象徴的な)もそう呼ばれているが、ノルウェイのJazzlandレーベルが96年にリリースしたBUGGE WESSELTOFT「NEWCONCEPTION OF JAZZ」から2003年のフィンランドのRICKY-TICKレーベルがファイヴ・コーナーズ・クインテットの「TRADING EIGHTS/BLUEPRINT」を発表するにいたる過程で、nu jazzの概念が根本的に変容したように思える。


それはDJカルチャーからジャズを、本来のジャズミュージシャンが奪い返した意味が最も大きいのだが、今後nu jazzは主にスカンジナヴィアン・ジャズ、あるいはFinn Jazz周辺で起こっている『ジャズの新たな概念作用』(クラブジャズをイニシエーションしたジャズ)が施されたジャズに対して形容したほうが賢明だと思う。ということはnu jazzの起源は94年にSAHKOレーベルから「SAHKOMIES」(PUU-1)や97年にWARPから10インチ「OUTTA SPACE」(10WAP87)をリリースしていたフィンランドのアーティストJIMI TENOR(つい先日発売されたダブルアルバムJIMI TENOR & KABU KABU「JOYSTONE」(SAHKO/PUU-34LP)はアフリカン・テイストのポリリズムを持つスピリチュアルなジャズが展開されていて、その中の6曲をFCQのTIMO LASSYがバリトン、フルート、バッキング・ヴォーカルで、JUKKA ESKOLAがトランペット、バッキング・ヴォーカルで参加している)と、シカゴのGUIDANCE レーベルから99年に「TAKE IT BACK」(GDR056))、「COLORS OF MIND」(GDR061)、2000年に「CHANGE」(GDR067)、「MAKOOMA BREAKS」(GDR082)などの12インチシングルと2002年に3枚組アルバム「NUSPIRIT HELSINKI:/NUSPIRIT HELSINKI」(GDRL607)をリリースしていたニュースピリット・ヘルシンキということになる。

1.RICKY-TICK RECORDS
nu jazzはそうした視点で解釈したほうが理解しやすいし間違ったレコードを買うこともなくなるだろう。そのnu jazzの核となるFINN JAZZだが、フィンランドのヘルシンキの中心街から南西のプナヴオリ地域にある5叉路のひとつプルシミエヘン通りには、フィンランドで有名なジャズクラブUMOやマニア向けのもレコードショップもありジャズストリートとも言えるフィンジャズの拠点である。その5叉路(上の写真参照)にちなんで名づけられたのがファイヴ・コーナーズ・クインテットである。RICKY-TICKレーベルはオーナーのアンチ・エーリカイネンとプロデューサー、トーマス・カリオのシンクタンクよってFCQのアルバムタイトルでもある"過ぎ去りし日のジャズを追いかけて"というコンセプトのもとに設立された。このレーベルのアルバムデザインや音楽に共通して流れているモダニズムは、イギリスのモッズカルチャーやノーザンソウルに影響されたエーリカイネンの美意識、音楽観のあらわれたものだと言えよう。

THE FIVE CORNERS QUINTET
●THE FIVE CORNERS QUINTET(featuring eero koivistoinen)/TRADING EIGHTS+BLUEPRINT(RT001)
フィンランドのLove Recordsから76年に「The Front Is Breaking」でデヴューし「For Children」や「Altered Thing」など多くの作品を発表しているテナーサックス奏者イーロ・コイヴィストイネンをフィーチャリングしたFCQのデヴュー10インチシングル。2003年作。シニシズムで支配されたこの21世紀世界の美しいソウルフルなダンスフロア・ジャズと形容されたこの作品は、陳腐な4つ打ちハウスが定番だったダンスミュージックの概念やグルーヴさえも一掃し、次世代のためのダンスミュージック、nu jazz/Finn Jazzの始まりを意味する重要な作品。
●THE FIVE CORNERS QUINTET/THE DEVIL KICKS+THREE CORNERS(RT002)
2004年発表のセカンド10インチシングル。フィーチャリングはFinn Jazzの重鎮ヴァイブ奏者SEVERI PYYSALO。この「THE DEVIL KICKS」のテナー、トランペットの2管によるテーマは口ずさめるほど印象に強く残る。ラテン、ドラムンボッサ調のリズム、パーカッション、そのあいだを縫ってヴァイブのクールで透明感あるサウンドが疾走する。FCQの未来を決定づけた名曲。

●THE FIVE CORNERS QUINTET/DIFFERENT CORNERS Remixed by NICOLA CONTE/SUMO-ON-WHEELS/DHARMAONE(RT003)
2004年発表の12インチシングル。「THREE CORNERS」のニコラ・コンテ"Sahib's Samba Version"。04年3月にBariでレコーディングされ、このヴァージョンはFCQのメンバーの名前はひとりもクレジットされていなく事実上ニコラ・コンテ独自のリワークだ。
●THE FIVE CORNERS QUINTET/CORNERSTONES EP-BEFORE WE SAY GOODBY-BLUES CYCLES featuring MARK MURPHY/OKOU(RT006)
ブガルーとラテンファンクの融合といった感のあるアレンジをみせるAサイド「Straight Up」と、ヴォーカルにマーク・マーフィーとOKOUをフィーチャーしたBサイド。2005年作10インチシングル。このジャケットで使われている54年に建設されたFinnish National TheatreのPIETINEによる写真は、アーキテクチュアで構造的なかれらの音楽を象徴している。

●THE FIVE CORNERS QUINTET/CHASIN' THE JAZZ GONE BY(RT007)
2005年発表の2枚組ファーストアルバム。ボクにとってはこうした音楽は90年代中期に北欧やスカンジナヴィアン、フィンランドでのモダン・デザインに興味を持ち始めた頃からのひとつの流れの一端としてとらえている。2002年にTASCHENから刊行されたCharlotte & Peter Fiellの「SCANDINAVIAN DESIGN」という分厚い洋書にはモダンな家具や生活日常品が集約されていて、そのなかのイーッタラやマリメッコなどはもはや日本人なら誰もが知っているように、FCQもこのカタログ本に掲載されてもいいのにと思っているくらいだ。フィンランドのデザインの特徴としてよく言われるスタイリッシュで"伝統とモダニズムの共存"という言葉もFCQの音楽にあてはまる。アンチ・エーリカイネンとトーマス・カリオの巧妙な戦略はクラブシーンでのDJたちやクラバーに支持され成功したが、忘れてならないのは、FCQのメンバーすべてが流動的なジャズミュージシャンによって構成されていて、そもそもセッショナルな体質をもっているということを。
●THE FIVE CORNERS QUINTET/JAMMING(WITH MR.HOAGLAND)+THIS COULD BE THE START OF SOMETHING Featuring Mark Murphy/remixed by Nicola Conte 6 Povo(RT010)
2006年リリースの12インチシングル。ニコラ・コンテによるサイドA「Jamming」はマーク・マーフィーのポエトリー・リーディングがクールでよりクラブジャズを意識したミニマルなドラムンボッサ・リミックス。ポボによるサイドB「This....」はジャジー・ヒップホップ・リミックス。

JUKKA ESKOLA
●JUKKA ESKOLA/BUTTERCUP+1944(RT005)
FCQのフロントマン、ユッカ・エスコラの2004年8月にヘルシンキで録音されたファースト・12インチシングル。ユッカのトランペットの本質はその甘いマスクからも推測できるが、 去年のJaz' room nu thingsでのTATSUMI TETSUYAとのセッションを聴いても、チェット・ベイカーにも似たユニセックス的ロマンチシズムの甘い響きだろうと思っている。T.Makynen作曲のBサイド「1974」もnu jazzの名曲として残るだろう。
●JUKKA ESKOLA/TIMBER UP+KULO(FREE AGENT RECORDS FARVS001)
2005年12月にフィンランドのフリー・エージェント・レコードから発売されたセカンド・12インチシングル。

●JUKKA ESKOLA/JUKKA ESKOLA(FREE AGENT RECORDS FAR001)
2005年5月発売のファーストCDアルバム。プロデュースはユッカとFCQのドラムス、TEPPO MAKYNENが手掛けている。フレディ・ハバードに影響を受けたというユッカのファンキーでスピリチュアルなトランペットの神髄がここでは聴ける。が、ボクはやはりシングルカットされた「1974」や「BUTTERCUP」などのアップテンポなハードバップが好きだ。

TIMO LASSY

●TIMO LASSY /AFRICAN RUMBLE+HIGH AT NOON(RT008)
FCQのメンバーであるテナーサックス奏者ティモ・ラッシーのファースト12インチシングル。もうすぐ彼のファーストアルバム「THE SOUL AND JAZZ OF TIMO LASSY」がリリースされるが、このシングルではアフログルーヴと太いベースラインのうえにティモ・ラッシーのスピリチュアルなサックスがうねる。テナーだけではなくバリトン、フルートも操る彼本来の音楽はスピリチュアル・ジャズを目指していると言えよう。

60's NORDIC JAZZ SCENE
●ON THE SPOT/A PEEK AT THE 1960's NORDIC JAZZ SCENE(RT011)
60年代のノルディック(北欧)・ジャズシーンのピークの頃の音源をアンチ・エーリカイネンがコンパイルした2枚組アルバム。DEXTER GORDONとSLIDE HAMPTON SEXTETのコペンハーゲンのメトロノーム・スタジオで69年に録音されたセッション・アルバム「A Day in Copenhagen」からの「A Day in Vienna」などなど、このアルバムを手にし収録されているスタイリッシュなハードバップの数々を聴いて、nu jazzが昇華しHARD BOPへスライドするのはもう間近だと確信したのを覚えている。おそらくジャケットに使われている写真は、バルト海の最奥部に位置する紺青色のフィンランド湾だろう。そこに浮かぶ白いヨットと抜けるような青い空こそノルディック・ジャズのサウンドスケープで、ここにもウェストコースト・ジャズとの相似点を見る。今日のBlogのトップに使ったモノクロ写真はこの見開きアルバム・ジャケット内側に配されたものだが、これを見ても60年代のジャズクラブがどれだけスノッブな人間が集まる場だったかわかるだろう。

DALINDEO
●DALINDEO/POSEIDON+SOLIFER-LENTO(RT004)
FCQのハードバップをよりイタリアのスケマのフリーダム・ジャズダンスやニコラ・コンテのラテンテイストのジャズ世界に接近させたグルーヴが聴こえる。2004年に発表されたダリンデオのファースト12インチシングル。
●DALINDEO/GO AHEAD,FLOAT+VOODOO(RT009)
2006年に発表されたセカンド12インチシングル。初期ダブルベースを担当していたメンバーのTIMO TUPPURAINENの名前がここにはなく、新たにPEKKA LEHTIが正式メンバーとして名を連ねている。スキャットとパーカッション・グルーヴが疾走するラテンテイストのジャズダンス。

●DALINDEO/OPEN SCENE(RT013)
2007年に発表されたばかりのダリンデオのファースト・アルバム。ギター、フルート、トランペット、ベース、パーカッション、ドラムスというセクステット編成からしても伺い知れるが、ちょっぴりブラジリアン+クラシカル・フレイヴァーなサウンドを奏でている。それに加え日本人ヴォーカリストMichikoが3曲フィーチャーされクープやユキミ・ナガノに似た嘆美な世界をも描いている。

TEDDY ROK/THE STANCE BROTHERS/TEPPO MAKYNEN

●Teddy Rok Introduces THE STANCE BROTHERS/Steve McQueen+Jay's Lament(RT012)
what musicから「Universal Four」をリリースしているTEDDY ROCとは、勿論FCQのリーダーでありドラムスのTEPPO MAKYNENのことである。多才な彼の側面を推し量ることのできるTEDDY ROKことTEPPO MAKYNENの新しいプロダクション=ザ・スタンス・ブラザースの7インチシングルがこの作品。90年代のモ’ワックスでのマニー・マークを彷彿とさせるアブストラクトかつモンド、ブルージーな音楽を披露している。

今回紹介したRICKY-TICKレーベルの音楽には現在のクラブジャズにおける先端でのリアルな運動の何パターンかの鋳型がみてとれる。さてキミはnu jazz? ハードバップ? ラテンテイスト・ジャズ? スピリチュアル・ジャズ? それともアブストラクト・ジャズ? どジャズ?

2007年04月25日

Work at a different speed

nu jazz 2
SCHEMA RECORDS

SCHEMA SEXTET
●SCHEMA SEXTET/LOTAR+BEFOR TEN O'CLOCK Tribute Basso-Valdambrini(SCEP320)
●SCHEMA SEXTET/LOOK OUT Tribute to Basso-Valdambrini(SCLP320)
イタリアでのnu jazzの始まりは2000年に発表された50〜60年代にかけて双頭クインテットを率いていたジアンニ・バッソ(ts)とオスカル・ヴァルダンブリーニ(tp)に捧げられトリビュートした12インチシングルSCHEMA SEXTETの「Loter/Befor Ten O'clock」だ。BASSO-VALDAMBRINIは当時のイタリアではスター扱いされるほど人気があり「WALKING IN THE NIGHT」(BVCJ-37516)、「THE BEST MODERN JAZZ IN ITALY 1962」(BVCJ-37517)など多くのアルバムを発表していた。その50-60年代にリリースされたアルバムのなかからnu jazz的解釈し直し11曲をコンパイルしリメイクしたのがSCHEMA SEXTETのダブルアルバム「LOOK OUT」である。この日本ではスケマ周辺の情報ではニコラ・コンテだけが取り上げられSCHEMA SEXTETは無視されがちだが、60年代に頂点を極めたヨーロッパ/ジャズの黄金期の一端を担っていたイタリアのジャズの根本をきっちりと押さえておこう。

BASSO-VALDAMBRINI
●QUINTETTO BASSO-VALDAMBRINI/WALKING IN THE NIGHT(BVCJ37516)
●SESTETTO BASSO-VALDAMBRINI/THE BEST MODERN JAZZ IN ITALY 1962(BVCJ37517)
日本で95年発売されたアルバム「The Best Modern Jazz...」のライナーノーツで後藤誠氏は、当時のイタリアのジャズミュージシャンたちは、クラシックの要素を持ちながらウェストコースト・ジャズに大きな関心を示していて、ビバップよりもチェット・ベイカー、ジェリー・マリガンらの洗練されたスタイルに音楽的共通点を見いだし、バッソ=バルダンブリーニの双頭グループもスタン・ゲッツ、チェット・ベイカー風のスタイルからスタートし、その後ハードバップ、ファンキージャズの要素を自分たちの音楽に取り入れていったと書かれている。

●BASSO-VALDAMBRINI QUINTET(DJV2000027)
●BASSO-VALDAMBRINI QUINTET Plus DINO PIANA(DJV2000029)
●THE BASSO-VALDAMBRINI OCTET/NEW SOUND FROM ITALY(DJV2000030)
イタリアでもnu jazzの波を受け彼らの音楽が再評価されはじめているのか、つい最近DEJAVU RECORDSからヨーロピアン・ジャズ再発シリーズと銘打って400枚限定で59年発売のMUSIC原盤「BASSO-VALDAMBRINI QUINTET」(DJV 2000027)、このアルバムのB面ラストに収録された曲「CHET TO CHET」は勿論トランペット奏者ヴァルダンブリーニがチェット・ベイカーに捧げた曲である。そして60年に発表された「BASSO-VALDAMBRINI QUINTET Plus DINO PIANA」(DVJ 2000029)、59年にjollyから発表された「BASSO-VALDANBRINI OCTET/NEW SOUND FROM ITALY」(DVJ 2000030)の3枚のアルバムが同時に発売されている。400枚しかプレスされていないこうしたレコードを買っているのは、恐らく日本のDJやジャズファンだろう。これほどイギリス、ヨーロッパや北欧でのnu jazzや音楽業界にとって、日本ほどおいしいマーケットはないだろう。それは80年代のパンク、ニューウェイヴ、ロックの時代でもそうだった。

NICOLA CONTE
SCHEMA SEXTETのアルバムが発表された2000年を境に、それまではブレークン'ボッサというコンセプトでクラブジャズを展開していたスケマもその後nu jazzを意識した展開を始めている。SCHEMAレコード傘下のアーティストのMicatone、Les Gammas、Espen Horne、The Dining Rooms、Freeform Arkestraなどの作品をニコラ・コンテが2002年にリワークした「JET SOUNDS REVISITED vol.1」は、オリジナルに新たな解釈(new interpretations)をもたらしたニコラ自身の作品として評価されたと同時に、nu jazzが次世代のための新しいダンスミュージックとして大きくクラブシーンに受け入れられる結果になった。去年大阪のブルーノートでニコラ・コンテのステージを見たが、ライヴステージでのギタープレイはPAなどの不備もあったが、お世辞にもいいとは言えなかった。彼はジャズ・ミュージシャンよりも作曲家、DJ的才能に秀でていてプロデューサーやアレンジャー、コンパイリストとしての素養を持ったアーティストかも知れない。
●NICOLA CONTE/JET SOUNDS REVISITED VOL.1(SCEP350)
この2枚組10インチシングルではニコラ・コンテは3曲を書き直している。ジェット・サウンドというからには彼もまたモッズ・カルチャーに影響されたひとりなのだろう。
●NICOLA CONTE/KIND OF SUNSHINE+IMPULSO(BLUE NOTE/SCHEMA SCEP382)
2004年作10インチシングル。LUCIA MINETTIをヴォーカルにフィーチャーした曲
KING OD SUNSHINEでトランペットにクレジットされているSCHEMA SEXTETのメンバーでもあるFABRIZIO BOSSOは「Trumpet Legacy」(SoundhillsSSCD8132)、「Rome After Midnight」(SoundhillsSSCD8129)、「Fast Flight」(RedRR123287-2)など既に10枚ほどの作品を発表しているイタリアのジャズシーンで最も注目を浴びている若手ハードバッパーである。彼の名前は心に刻んでおこう。

CD、BALANCO/BOSSA & BALANCO(Schema/Rip Curl Recordings RCIP0007)の97年頃からすでにスケマとも関わりをみせている。FABRIZIO BOSSOがポスト・ユッカとして頭角を現わしてくるのはもう時間の問題だろう。

●NICOLA CONTE/OTHER DIRECTION VOL.1(BLUE NOTE/SCHEMA SCLP386/1)
●NICOLA CONTE/OTHER DIRECTION VOL.2(BLUE NOTE/SCHEMA SCLP386/2)
ニコラ・コンテのボッサ調の甘い曲も嫌いではないが、ブルーノート/スケマからリリースされたこのアルバムでの「OTHER DIRECTIONS」や「IMPULSO」「THE DHARMA BUMS」「KIND OF SUNSHINE」というハードバップの数々もnu jazzの名曲として残るだろう。FCQやニコラ・コンテの凄いところは、今後続々表出してくるだろう次世代のハードバッパーに繋がる道を最初に切り拓いたアーティストであることと、やってくるだろう時代を先読みし誰もやらないことを誰よりも最初にやったことだ。いつの時代にも存在するそうしたミュージシャンの鋭い感覚はやはり予言者にも似て新しい未来のヴィジョンを我々にみせてくれる。

●NICOLA CONTE+GERARDO FRISINA/NEFERITITI*GICA'S DANCE(SCEP364)
フリーダム・ジャズ・ダンス・プロジェクトとして最初にリリースされた作品。サイドAはニコラ・コンテのシネジャズ風ボッサの未発表曲「Nefertiti」。サイドBはGerardo Frisinaのアフロ・ハードバップとでも形容したいフリーダム・ジャズダンス・チューン。今回は省略するがGerardo Frisinaはスケマから05年にダブルアルバム「THE LATIN KICK」(SCLP395)や、06年に「TOKYO'S DREAM」(SCEP420)、04年に「Blends SABU MARTINEZ & SAHIB SHIHAB」(SCEP381)などの12インチシングルを発表している。

FREEDOM JAZZ DANCE
●FREEDOM JAZZ DANCE BOOK II(SCLP402)
●FREEDOM JAZZ DANCE BOOK III(SCLP416)
2005-06年にかけて発表されたフリーダム・ジャズ・ダンス・プロジェクトとしての2枚組コンパイル・アルバム。ここにはリッキーチックのユッカ・エスコラやダリンデオ、ティモ・ラッシー、それにケニー・クラーク+フランシス・ボーランド・セクステットなど19曲が収録されている。2004年を境にスケマのブレークン’ボッサからフリーダム・ジャズ・ダンスへのレーベルコンセプト変容の全貌がここにみてとれる。nu jazzからハードバップへ、それはクラブジャズと本来のジャズシーンとのバリアさえも無くなくなろうとしているこのフリーダムな時代の、世界のいたるところで起こっている生命潮流のなせる自然な流れで、もう誰も止めることはできないのだ。

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