ジャズ。始まりは、性行為やセックスにつながるすべての事柄を指すアメリカの黒人の俗語だったジャズが、エリートな音楽であるはずがない。ジャズは都市に生きるものたちの若く力強い息吹きで溢れた人間的で俗っぽいものだった。ところが誰のせいなのか、いつの間にかなんだか鼻につくほどのエリート音楽に成り下がってしまっている。特にニッポンではまずバークリー卒業のジャズミュージシャンとくる。なにか取り違えているんじゃないの? そんな"どジャズ"に関わろうとは端から思っていないが、我々のいう"ジャズ的なるもの"とは、クラブジャズの先端での新たな概念作用をほどこした現在進行形のジャズである。
さて、この21世紀にも通じる本格的なハードバップのレコードを探しているなら、まずブルーノート・レコードから始めるのが妥当だろう。それもピアノトリオのようなものではなく、少なくともホーンが2管、3管編成の、トランペット、アルトサックス、テナーサックスや、バリトンサックスなどで構成されたレコードを探されるといいだろう。そしてハードバップでも、もう少しファンキーなものなら、そこにオルガンやギターがはいったものを選ばれるといいだろう。だけど、こうしたアルバムを買ったからといって、レコード1枚に収められた曲すべてが現在でも聴くに耐えうるものだと思ったら大きな間違いをおかすことになる。1枚のアルバムのなかでも、この時代に通用する感覚を持つハードバップと呼べる曲はせいぜい1曲か2曲だということ。だから1枚のレコードのなかに、HARD BOPと呼べる曲がすべて収録されているわけではない。ボクのDJイングしている"HARD SWING BOP"というイヴェント・コンセプトは、ブルーノートなら、300枚超のアルバムのなかから高速ハードバップだけを、4時間のなかでかけられるだろう50ほどの曲を予めチョイスして、そこから生まれるグルーヴを維持しながら延々とDJイングしていくのだが、そうすると、レコードに収録された本来のハードバップが、想定外の新しい世界=グルーヴをみせてくれる。これが本来のDJテクニックなんだ。単に古いブルーノートの名盤を買って、それを部屋でかけたからといって、"HARD SWING BOP"が聴けるというものではない。エディトリアルしコンパイルするDJの存在がそこで必要なんだ。
例えば、LEE MORGAN"THE GIGOLO"(BLP4212)では、Bの1曲目の"THE GIGOLO"、Aの2曲目"TRAPPED"、3曲目"SPEED BALL"などを、そしてテンションを上げる時にはART BLAKEY"MOANIN'"(BLP4003)の有名なMOANIN'や"BLUES MARCH"のような曲は避けBの1曲目の"THE DRUM THUNDER(MINIATURE)SUITE"のブレイキーの壮絶でエキサイティングなドラムソロを使うといったように、ただ単にレコードをかけているように思っているけど、DJって結構大変なんだよ。こうしたクラブジャズ的な動きから、ジャズに興味を持ったとしても、ブルーノートやジャズの歴史をひも解いても、なんにもならない。特にニッポンの場合は文学的に解釈したジャズの文献しかなく、植草甚一以外はつまらない間違ったロクな評論しか残していない。ついでだから、あと2枚を紹介すると、HANK MOBLEY"HI VOLTAGE"(BST84273)では、Aの"TWO AND ONE"、Bの"ADVANCE NOTICE"をハード・スウィング・バップ用に、現在のnu jazzでのニコラ・コンテなどのラテンに繋ぐ曲としてBの2曲目"BOSSA DE LUXE"を選曲し、JACKIE McLEAN"NEW SOIL"では、Aの2曲目"MINOR APPREHENSION"、Bの3曲目"DAVIS CUP"をハード・スウィング・バップ用に、といったように選曲して、曲順などを考えながらエディトリアルしていく。CDRのような録音器機を持っているなら、自分でこうして好きな曲をコンパイルしミキシングしていくと楽しいだろう。もう一度言うけどブルーノートのレコードを買っても、AB面すべてを聴く必要はないし、そんな時代ではないんだ。
Comment (5)
BLOG最高におもしろいです。つまるところ、nu thingで、聞くしかないですね。
投稿者: r | 2007年04月01日 01:42
日時: 2007年04月01日 01:42
文章がまさにジャズな、そして人生がジャズであった久保田二郎は、どうでしょう?
投稿者: r | 2007年04月01日 22:06
日時: 2007年04月01日 22:06
久保田二郎氏の名前はスウィングジャーナルなどで、よくお見かけして知っていますが、文章はよく読んだことがないので、はっきりしたことは言えませんが、ジャズに関わっている人なら、まずオシャレであること、そして風流や粋のセンスが理解できること、モダニストであること、都市に住んでいることなどを満たしているなら、OKでしょう。キミのrという匿名性は気に入らないけど、BLOGを楽しんでくれてありがとう。ジャズや人生をシリアスに考えないで、楽観主義で生きてね。でも物事の筋だけはきっちり通してくれよ。
投稿者: AGI Yuzuru | 2007年04月02日 01:18
日時: 2007年04月02日 01:18
rことryojiです。誤解をまねく拙い文章で、すいませんでした。
随分昔に久保田二郎「極楽島ただいま満員」という本を読んだことを思い出し、文脈無視で上記のコメントを書き込んでしまいました。私にとっては、大切な本です。
氏は、「ヘレン・メリルを恋人にし、フュージョンジャズ・ドラムの先駆者であり、ギャンブルで全財産を使い切り、巷の無頼となったが、ペン一本で復活し、何よりも植草甚一にジャズを教え、ラリるというスラングを生み出し」(「地球の星屑」)そうです。
「鼻につくほどのエリート音楽」に拒否感を抱いてた私ですが、AGI氏のブログを読ませていただいて、「JAZZ」という言葉が魅力的に輝いてきました。
体系的にJAZZを聞いた事は今までありませんでしたし、またacid jazz時代からの現在までのclub jazzに裏切られてきた身としては、このblogは、宝にありついた気分です。
一度nu thingを体験しに伺います。
駄文お許しください。
投稿者: ryoji | 2007年04月02日 23:10
日時: 2007年04月02日 23:10
2007.4.3 の Hard Swing Bop は今迄とくらべても、特に良かったです。選曲を1960年から65年頃に凝縮したせいか、もう疾走感がたまらなかったです。感動をブログに書きました。トラックバックを付けてます。よろしくお願いします。
投稿者: 杉谷正明 | 2007年04月04日 01:35
日時: 2007年04月04日 01:35